著者
加倉井 真樹 加納 塁 原田 和俊 出光 俊郎
出版者
一般社団法人 日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:24345229)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.59-65, 2022 (Released:2022-08-31)
参考文献数
16

テルビナフィン耐性白癬菌がインドで増加しており,日本にも持ち込まれている.また,日本固有の菌と考えられるテルビナフィン耐性白癬菌による爪白癬や足白癬,体部白癬も報告されている.今回,テルビナフィン耐性白癬菌による広範囲体部白癬の親子例を経験した.19歳女性,体幹四肢に紅斑多発.ビホナゾールクリーム外用で軽快した.2年後,腰臀部下肢に紅斑が再発した.2年前と今回の両菌とも真菌培養と分子生物学的検査でインド由来のTrichophyton interdigitaleと診断した.テルビナフィン内服は無効であり,2年前と今回の両菌ともテルビナフィンが阻害するsqualene epoxidaseの遺伝子変異を有していた.この間,47歳父親が広範囲の体部白癬に罹患した.テルビナフィン内服は無効で,broth microdilution法による薬剤感受性試験で,テルビナフィン耐性白癬菌と判明.テルビナフィンが阻害する特有の遺伝子の変異を有していた.日本でもテルビナフィン耐性白癬菌が蔓延していく可能性があり,治療にあたり注意が必要である.
著者
中村 考伸 出光 俊郎 塚原 理恵子 小山 尚俊 中村 哲史 飯田 絵理 正木 真澄 梅本 尚可 加倉井 真樹 山田 朋子 堂本 隆志 中川 秀己 伊東 慶悟
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.350-354, 2013

33歳,女性。10年前から左足底に褐色斑があり,受診した。初診時,左足底に径7×5 mm大の黒褐色斑があり,辺縁不整で色調に濃淡がみられた。ダーモスコピーではparallel furrow patternとirregular fibrillar patternを示した。臨床的にはmelanoma <i>in situ</i>を疑う所見であったが,ダーモスコピーでは良性病変を示唆する結果であり,切除生検を施行した。病理組織では表皮内にメラノサイトが孤立性,あるいは胞巣を形成し,一部は付属器浸潤もみられるなどmelanoma <i>in situ</i>の可能性が否定できず,切除瘢痕辺縁から5 mm離して,再切除を施行した。<br> 病理組織像を再検討したところ,Saidaの提唱したpseudomelanomaに一致する良性の色素性母斑の可能性が高いと診断した。類似の診断名としてはmelanocytic acral nevus with intraepidermal ascent of cells(MANIAC)などが報告されている。足の色素性病変におけるダーモスコピー上の良性所見と組織学的にメラノーマに類似する所見の解離についてはさらに周知しておく必要がある。
著者
加倉井 真樹
出版者
自治医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1 皮膚における神経ペプチドの局在について免疫組織化学的に検討した。アトピー性皮膚炎と乾癬患者の病変部皮膚と健常者について比較した。神経ペプチドはVasoactive intestinal peptide(VIP),サブスタンスP(SP),calcitonin gene related peptide(CGRP)について検討した。抗VIP抗体では、アトピー性皮膚炎および乾癬患者の病変部皮膚において表皮細胞間に蛍光が認められ、健常者との差が見られた。CGRP抗体では、アトピー性皮膚炎、乾癬患者の病変部皮膚の表皮内や、真皮乳頭層に神経線維様の蛍光が認められ、健常者との間に差が認められた。SP抗体では、健常人との差は認められなかった。2 有棘細胞癌株(DJM-1),ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF),ヒト皮膚角化細胞(NHEK)のtotal RNAを抽出し,RT-PCR法により,VIP,VIP receptor 1(VIP1R),VIP receptor 2(VIP2R)の発現をmRNAレベルで検討した。DJM-1において、VIP1R-およびVIP2R-mRNAは認められたが、VIP-mRNAは認められなかった。NHEKでは、VIP1R-mRNAのみ認められた。NHDFにおいては、いずれも認められなかった。3 培養表皮細胞におけるのVIP1Rの発現に対するサイトカインの作用をRT-PCR法により検討した。DJM-1を培養し、培養液中にIL-4,TNF-α,INF-γを添加した。サイトカイン添加培養1,3,6,12,24時間培養後,DJM-1中VIP1RのmRNAの発現を半定量し、比較したが、サイトカイン添加前後において有為な差は認められなかった。今回の検討では、VIPやCGRPがアトピー性皮膚炎や乾癬において何らかの役割を果たしている可能性が示唆されたが、マスト細胞やリンパ球など真皮に存在する細胞から放出されるサイトカインが、表皮細胞のVIP receptorの発現の制御に関わっているかどうかについては明らかにされなかった。