著者
近藤 哲夫 中澤 匡男 加藤 良平
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.276-280, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
14

乳頭癌充実型は充実性構造を呈して増殖する乳頭癌の一亜型で,成人発生の甲状腺癌に比べて小児の甲状腺癌でその頻度が高いことが知られている。特にチェルノブイリ原子力発電事故後に周辺地域で増加した小児甲状腺癌ではこの充実亜型の割合が高いことが報告され,放射線被爆との関連がこれまで論議されてきた。また乳頭癌充実型にはret/PTC3変異が高いことも知られており,遺伝子異常の点からも通常型乳頭癌とは異なる特徴を持っている。福島原子力発電事故よって本邦でも小児甲状腺癌への関心が高まっているが,本稿では乳頭癌充実型/充実濾胞型の病理学的特徴,低分化癌との異同,チェルノブイリ原子力発電事故との関連,本邦における乳頭癌充実型,遺伝子背景について概説する。
著者
加藤 良平
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.68-77, 2020 (Released:2020-09-02)
参考文献数
18

近年は遺伝子変異に関する研究が急速に進み,多くの癌で遺伝子変異による診断,治療法の選択,予後の推定などが可能になっています。これまでの研究から,甲状腺癌には「遺伝子型-表現型関連 genotype-phenotype correlation」が存在することが分かってきました。そこで,ドライバー変異から甲状腺癌を大別すると,RET腫瘍,BRAF腫瘍,RAS腫瘍,PAX8/PPARG腫瘍,PAX8/GLIS腫瘍,APC腫瘍に分類され,さらにRET腫瘍は再構成と点突然変異群,RAS腫瘍はNRASとHRAS群に細分類されます。例えば通常型乳頭癌は,RET腫瘍とBRAF腫瘍に入り,濾胞型乳頭癌はRAS腫瘍に分類されます。濾胞癌はRAS腫瘍とPAX8/PPARG腫瘍,硝子化索状腫瘍はPAX8/GLIS腫瘍,篩型乳頭癌はAPC腫瘍,髄様癌はRET腫瘍とRAS腫瘍に分類されることになり,予後不良な低分化癌や未分化癌はBRAF腫瘍,RAS腫瘍に属します。いずれの組織型でも既知の遺伝子異常が100%を占めることは無く,未知な遺伝子異常に関してはさらなる研究が必要です。しかし,この様な分類(考え方)は甲状腺癌への理解を深め,将来の診断治療に有用な基準となるかもしれません。
著者
加藤 良平
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.88-92, 2017 (Released:2017-07-21)
参考文献数
6

近年,白血病やリンパ腫,種々の固形癌の診断や治療の選択に遺伝子検査が用いられるようになってきた。甲状腺腫瘍でも,これまで遺伝子変異に関する研究は数多く行われており,それぞれの組織型と関連が深い遺伝子異常(BRAF変異,RAS変異,RET再構成,PAX8/PPARγ再構成)などや腫瘍のプログレッションに関係する遺伝子異常(TERT変異,p53変異)などが報告されてきた。これらの遺伝子変異は甲状腺癌の形態診断の限界ともいえる判定困難領域(WDT-UMP,FT-UMP,NIFTP)に有用な情報をもたらすものであり,また,腫瘍の悪性度を形態像とは異なる面から推定できる可能性がある。本稿では,甲状腺腫瘍の組織型と遺伝子異常の関係を述べ,遺伝子異常からみた新しい分類を提唱した。さらに従来の形態診断に遺伝子診断を併用する可能性について記した。
著者
加藤 良平 近藤 哲夫 中澤 匡男 大石 直輝
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

20歳以下の若年甲状腺乳頭癌 (P-PTC) 81例と21歳以上の成人甲状腺乳頭癌 (A-PTC) 83例について、臨床病理学的に比較検討するとともに、BRAFV600E突然変異とTERT promoter突然変異を解析した。その結果、P-PTCはA-PTCよりも、腫瘍径が大きく、リンパ節転移率が高いことがわかった。一方、BRAFV600E突然変異率は、P-PTCは37%で、A-PTCの82%よりも低く、TERT promoter突然変異はA-PTCでは13%が陽性を示したが、P-PTCでは全例陰性となった。以上より、若年甲状腺癌はその臨床像とともに遺伝子背景も成人とは異なることが示唆された。
著者
加藤 良平 赤石 純子 杉野 公則 近藤 哲夫 伊藤 公一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.168-174, 2021 (Released:2021-11-27)
参考文献数
15

小児・若年者(20歳以下)を主体に発生する甲状腺癌は,成人以降に発生する通常型甲状腺癌とは異なる組織所見を示すものがあり,それらは臨床経過も特徴的であることが知られている。最も頻度が高いのは通常型の乳頭癌であるが,小児・若年者ではいわゆる“若年型乳頭癌”といえる特徴的組織所見を示す亜型群が発生する。その中には充実亜型,びまん性硬化亜型,篩状・モルレ亜型などが含まれる。乳頭癌以外では,家族性髄様癌や多発性内分泌腫瘍症2型に伴う髄様癌も若年者に多く認められる。一方,小児・若年者では低分化癌や未分化癌は極めて例外的といってよい。若年者甲状腺癌は特徴的な病理組織像と臨床像を示すため,正確な病理診断と治療が肝要である。
著者
端 晶彦 弓納持 勉 村田 晋一 近藤 哲夫 奈良 政敏 中澤 久美子 端 圭子 大森 真紀子 加藤 良平 星 和彦
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.126-133, 2006-03-22 (Released:2011-12-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

目的:分葉状頸管腺過形成(Lobular endocervical glandular hyperplasia; LEGH)と悪性腺腫(Minimaldeviation adenocarcinoma; MDA)の細胞学的・組織学的検討を行い, 術前細胞診の意義を検討した.方法:LEGH11例, MDA2例の13例の術前細胞診標本および摘出病理標本を用いて細胞学的・組織学的に検討した.結果: 細胞質の黄色調粘液は, LEGHとMDAとの鑑別には有用ではないが, 胃型形質発現の病変を検出するのには有用と考える. LEGHの細胞診では細胞集塊は平面的な出現形態を示し, 核の重積性はなく, 核小体は目立たない. MDAでは細胞集塊は立体感があり, 核の重積性, 核小体の大型化が認められる. 核内空胞(核内細胞質封入体: Intranuclear cytoplasmiac inclusion(INCI))の出現はLEGHに特徴的な所見である可能性がある. LEGHに腺癌を合併する症例では, LEGH特有の細胞に混じって腺癌が示唆される細胞が認められる場合がある.結論:細胞診検査はLEGHとMDAの検出に有用であり, また両者の鑑別にもきわめて重要である.
著者
篠原 欣貴 加藤 良平
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.2-11, 2021-01-31 (Released:2021-05-20)
参考文献数
13

【目的】 組織風土の病院に勤務する職員の定着・離職に与える影響を明らかにし,その関係性を説明する理論を構築する。【方法】大分県内の病院職員(医師,看護師,理学療法士,ソーシャル・ワーカーなど)に対して半構造化インタビューを行った。そして,インタビューによって得られたデータからカテゴリー及び下位概念を生成し,各カテゴリー間の関係性について分析を行った。【結果】27名の半構造化インタビュー等をもとに,3つのメインカテゴリー(職員同士の人間関係,仕事のやりがいと教育や生活への支援,尊重の風土)を導き出した。【考察】本研究から,職員同士の人間関係と仕事のやりがいと教育や生活への支援が尊重の風土と結びつくことによって働きやすい環境が整い,その結果,職員の離職率の低下と定着率の高さにつながることが示唆された。