著者
勝島 隆史 安達 聖 南光 一樹 竹内 由香里
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.101-114, 2023-03-15 (Released:2023-04-09)
参考文献数
26

強風を伴った湿雪の樹木への着雪により,樹木に作用する荷重が増加することで,幹折れや根返りなどの樹木の破壊が生じる.このような樹木の破壊を予測するためには,着雪と風により樹木に生じる荷重を考慮した構造解析が用いられる.しかし,樹木に生じる風荷重の測定例は少なく,風荷重の推定に必要な樹木の抗力係数への着雪の影響は不明である.本研究では,国内の主要な林業種であるスギにおける,抗力係数に及ぼす着雪の影響を明らかにするために,風洞実験を実施した.風洞装置内に実物のスギの枝葉を材料に用いたスギの枝葉のモデルを設置し,送風しながら湿雪を供給することにより人為的に着雪を生じさせた.そして,風速や着雪量などの実験条件に対する,スギ枝葉の抗力係数の変化を測定した.その結果,枝葉への着雪は,(1)着雪の発達により風向に対する垂直面への投影面積である垂直投影面積を増加させる効果,(2)流体抵抗を減じる効果,(3)風の作用により枝葉が湾曲することで生じる垂直投影面積の減少を阻害する効果をもたらすことが示唆された.これらの効果により,着雪前の無風時の受風面積を用いて求めたスギ枝葉の抗力係数は,着雪量により変化した.
著者
中井 専人 山下 克也 本吉 弘岐 熊倉 俊郎 村上 茂樹 勝島 隆史
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.45-56, 2022 (Released:2022-02-23)
参考文献数
34
被引用文献数
2

Xバンド水平偏波レーダー反射因子(Zh)と降雪強度水当量(R)の関係式を6種類の固形降水粒子種(クラス)について示す。これらの関係式は、日本の新潟県における同時観測によって得られたZh、R、及び降水粒子種を比較することによって求められた。式の形はZh = B R1.67を仮定し、Bを観測により決定される係数とした。Rの値と降水粒子種は、それぞれ、風よけネット内に設置された高分解能降水強度計と光学式ディスドロメーターを用いて求められた。平均Zhは地上観測点風上側に位置する約100 km2の解析領域について求められた。3冬季にわたる48事例について、卓越する降水粒子種、代表的な粒径と落下速度、Zh、R、Bの平均値が得られた。濃密雲粒付雪片のBの平均値は雲粒付雪片の値より小さかった。最も大きなBの値は雲粒無し樹枝状結晶の雪片(unrimed-Dクラス)の事例について、最も小さいBの値は雲粒無し低温型結晶の雪片(unrimed-Cクラス)が降っていた事例について得られた。霰事例のBの平均値は、雲粒付及び濃密雲粒付雪片の値に対して大まかに2倍程度であり、unrimed-Dクラスの値よりも小さかった。Xバンドにおいては、雪片の単位降水強度あたりの後方散乱が霰よりも強いか弱いかは、ライミングの程度と構成雪結晶の種類に依存していた。
著者
上石 勲 山口 悟 佐藤 篤司 兒玉 裕二 尾関 俊浩 阿部 幹雄 樋口 和生 安間 莊 竹内 由香里 町田 敬 諸橋 良 後藤 聡 輿水 達司 内山 高 川田 邦夫 飯田 肇 和泉 薫 花岡 正明 岩崎 和彦 中野 剛士 福田 光男 池田 慎二 会田 健太郎 勝島 隆史
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.507-512, 2007-07-15
参考文献数
1

2007年2月~4月にかけて4件の大きな雪崩事故が発生した.2007年2月14日には八甲田山系前岳で表層雪崩によってツアースキーヤーの2名が死亡,8名が負傷した.3月18日には,北海道積丹岳で,スノーモービルで走行中の人など16人が雪崩に巻き込まれ,4人が死亡,1人が重傷を負った.また,3月25日には,富士山富士宮口五合目付近でスラッシュ雪崩が発生し,建物と道路施設に被害を与えた.さらに4月18日には富山県立山雷鳥沢で山スキーヤーとスノーボーダーが表層雪崩に巻き込まれ,1名死亡,2名が負傷する事故が発生した.これらの雪崩事故調査から山岳地域では暖冬でも雪崩の危険性は低くないことが確認された.