著者
北小屋 裕 近藤 久禎 横堀 將司 中田 敬司
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.702-706, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
9

老人保健施設で発生した心肺停止症例に対して,臨場した医師の具体的指示を受け,救急救命士が特定行為を実施した事案を経験した。この事案に対し,救急現場に医師が臨場している場合には医師が救命行為を実施するべきであり,たとえその医師から特定行為の具体的指示を受けたとしても救急救命士は特定行為を実施するべきではないとの指摘を地域メディカルコントロール協議会より受けた。救急救命士が特定行為を行いうる指示要件や場所的要件,医師が臨場した場合の救急救命士の特定行為について,救急救命士法の解釈を中心に考察した結果,医師臨場下で特定行為を実施することは法的には問題ないが,医師の身分確認やメディカルコントロール協議会との整合性などいろいろな問題点をクリアする必要性が明らかとなった。
著者
一柳 保 田邉 晴山 喜熨斗 智也 北小屋 裕 大迫 幹生 加百 正人 大木 哲郎 岡本 征仁 津田 雅庸 野口 宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.613-620, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
13

近年,大小さまざまなマラソン・ロードレースが毎週のように行われ,大会規模相応の救護・医療体制の確保が求められるが,主催者が参考にすべき指針がなかった。このため主催者が参考とすることができ,救護・医療体制を網羅し得る指針を医師・消防機関と協調し作成することとした。方法は,国内外のマニュアルなどを参考にしながら,これまでに救護・医療体制構築に加わった経験者への意見聴取,複数のマラソン・ロードレース大会の視察で得られた知見,文献検索の結果などを取りまとめ,救護スタッフの人数,資器材と救護所の数や規格を具体的に記述した指針案を作成した。マラソン・ロードレースにおける救護・医療体制の適切な確保には,主催者のみならず,消防や医療機関に対しても対応可能な指針の認知が欠かせない。さらに,救護・医療体制をスコア化する評価指標なども含め,統一した指針を使用することで,全国の大会を一定の物差しで横断的に評価することが可能になる。
著者
木村 昌紀 塩谷 尚正 北小屋 裕 Masanori KIMURA Takamasa SHIOTANI Yutaka KITAGOYA
出版者
神戸女学院大学研究所
雑誌
神戸女学院大学論集 = Kobe College studies (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.29-44, 2021-12

119番通報の件数が膨大な数に上る中、市民が適切に通報できないことが救急現場の負担や救急隊や消防隊の到着遅延の原因となっている。本研究は、円滑な通報の実現を目指して、119番通報における市民の心理的要因を探索的に検討する。20代から60代までの各世代の男女約100名ずつからなる、全国1063名を対象にインターネット調査を実施した。119番通報の際、市民の感情的動揺が激しいほど通信指令員とのコミュニケーションは阻害される一方で、通報に対する正確な知識が多いほど円滑なコミュニケーションは促進されていた。特に、初めての通報で知識の効果は顕著だった。市民が119番通報の正確な知識を身につけることは、たとえ感情的に動揺していても、通信指令員との円滑なコミュニケーションにつながる。様々な機会や方法を通じて、市民に119番通報に関する情報を周知していくことが求められる。