著者
北野 元生
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.115-131, 2016-03-01

西東三鬼の有名な俳句に「水枕ガバリと寒い海がある」がある。「ガバリ」は声喩語である。従来より、この句における「ガバリ」は水枕や水音など水にかかわる修飾語であると説明されてきた。しかし、「ガバリ」をこのような説明だけに任せておいてよいものかどうか、疑問は残る。そこで、歴史的にガバリという声喩語がいつ頃、どのような状況を説明するために成立したのかを検討することとした。その結果、この語「ガバリ」は中世の戦記物語に起源を有する、本来は水とは関係のない修飾語としての声喩語「カハ」を語根として、それから派生して発生してきたことが分かった。この「カハ」は時代を下るにしたがって、意味の変動を伴ったりあるいは伴わずに、その形態をいろいろ変えてきたようである。現在においても、「ガバリ」という語には、水にかかわりない確かなニュアンスが残存していると考えられるのである。ガバリ声喩語語根カハ歴史的変遷
著者
北野 元生
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 = The Bukkyo University Graduate School review. 佛教大学学術委員会, 文学部編集委員会 編 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.42, pp.169-185, 2014-03

俳人であり歯科医療に携わった歯科医師であった西東三鬼が診療人とくに歯科診療人として詠んだ「診療俳句」を取りあげ、その文学性及び現代性について論考した。三鬼の俳句については、平易な用語を使用しており、その内容も明快であり、一般人にとっても理解しやすいと言えよう。彼の俳句は彼の人柄や彼の来し方を反映して貧しい人や孤児に対して情感を寄せている作品が多い。患者個々人に向けた診療行為を詠んだ俳句作品は極めて小さなものに過ぎないとはいえ、その作品が内在する本来的な人道思想や博愛思想に通ずる救済観と生命観がその句の中で沈静するものでは決してないことを明らかにした。さらに本論文では、「診療俳句」という分野が俳句の一分野であることを指摘した。「診療俳句」の輪郭をつけることの意義は決して小さいものではない。西東三鬼歯科医療診療俳句新興俳句山口誓子
著者
Kitano Motoo Hirano Masao Ishihara Takashi YOSHIDA Aichi HATTORI Shosaku UEDA Naoko CHIJIWA Takahito OHNO Motonori キタノ モトオ ヒラノ マサト イシハラ タカシ ヨシダ アイチ ハットリ ショウサク ウエダ ナオコ チヂワ タカヒト オオノ モトノリ 北野 元生 平野 真人 石原 尚 吉田 愛知 服部 正策 上田 直子 千々岩 崇仁 大野 素徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋研究 (ISSN:09160752)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-18, 2002

Trimeresurus flavoviridis (Tf) serum proteins were fractionated by anmnonium sulfate precipitation to five portions depending on the differences of its saturation percentages, that is, 0-20%, 20-30%, 30-40%, 40-50%, and 50-70%. The effects of these proteins on Tf venom-induced rat skeletal muscle damage were investigated with closer attention to histopathological features of impairment, necrosis, and regeneration ofmuscle fibers. The knowledges which portion of Tf serum proteins is effective for prevention of local lesions caused by Tf venom should shed light on the effective medical treatment after bitten by Tf snake. In consequence, it was found that the necrotic change of the rats inoculated with Tf crude venom together with the serum protein fraction of ammonium sulfate saturation percentage 40-50% was the smallest compared to those of the rats tested with other Tf serum protein fractions.
著者
北野 元生
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.207-222, 2017-03-01

俳人西東三鬼(以下、三鬼)のほぼ五千五百字からなる短編時代推理小説であり、湯治場の盲人の按摩の一人語りから成り立っている「《まげものスリラー》鼠小僧神がくし―按摩徳の市の話―(以下、「神がくし」)」については、鼠小僧の神がくしの顚末とその種明かしに一種の爽快さがある。また同じく推理小説に用いられる手法で一人称の語り手である按摩の德の市が最後になってやっと自分の正体を明かす語り方に、作者である三鬼なりの工夫が凝らされて興味深い。そして、何よりもこの小説が芥川龍之介の短編小説「鼠小僧次郎吉」(以下、「次郎吉」)を下敷きにして書かれた可能性があり、その辺りの検証がなされべきであると考えられる。本論は、「神がくし」と「次郎吉」における、とくに「物語行為」を比較検討して、両者の関連を明らかにすることを目的に論考を行ったものである。西東三鬼芥川龍之介短編時代推理小説鼠小僧信頼できない語り手