著者
荒幡 昌久 栗山 政人 米山 宏 南 真司
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.63-70, 2011 (Released:2011-03-03)
参考文献数
27

目的:高齢者嚥下性肺炎は予後不良の疾患であり,在院日数を延長させる.本症は感染症としての肺炎治療のみでは十分でなく,咳反射や脳循環を改善する薬物治療,看護や介護,リハビリテーション,栄養管理が必要とされる.今回我々は,高齢者嚥下性肺炎に対し,多職種に対する教育および多職種によるチェックシートとカンファレンスを用いた包括的で個別的な介入を行い,その予後を改善できるか検討した.方法:2008年1月15日から4月15日に発症した75歳以上の嚥下性肺炎を対象に,診断直後からプロジェクトチームが介入し,チェックシートやカンファレンスで病態を整理し,多職種間で問題点を共有しながら個別化された対策を行った.肺炎転帰,在院日数,肺炎治癒後の予後について,2007年の同期間と比較し介入の効果を判定した.結果:試験期間中に45回の肺炎があり,41回(34例)を分析対象とした(介入群;87.5±5.7歳,男性15例,女性19例).前年の同期間に51回(46例)の分析対象となる嚥下性肺炎があった(対照群;87.5±6.4歳,男性24例,女性22例).介入群で7例,対照群で5例の再発があり,介入群では再介入により評価と対策を改めた.再発を含めた肺炎転帰では,介入群で死亡率の低下傾向を認めた(4.9% vs. 17.6%,P=0.061)が,在院日数には有意差はなかった(47.2±35.0日vs. 55.6±52.1日,P=0.454).肺炎治療後1年(再発例では最後の治療終了から1年)での無再発生存率は介入群で高かった(48.5% vs. 24.3%,P=0.040).結論:高齢者嚥下性肺炎に対する包括的介入は,肺炎治癒率や在院日数よりも,長期的予後である1年後無再発生存率を改善させた.
著者
石崎 武志 服部 絢一 松田 保 宮保 進 越野 健 藤村 政樹 岡藤 和博 南 真司 金森 一紀 佐賀 務 舟田 久
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.86-97, 1985

肺真菌感染症を合併した21例の血液疾患を臨床床状, 胸部X線写真, 免疫血清学の観点から検討した. 起炎真菌はアスペルギルス17例, ムコール1例, 不明3例であった. 経気管支肺生検法で2例, 臨床経過で6例 (剖検所見で確認) を生前診断し抗真菌療法を行った. 抗真菌療法中に血液学的改善の得られた6例は治癒し, 改善の得られなかった2例は死亡した. 臨床症状として, 全例に通常の抗生剤不応性の熱発, 咳 (15例), 喀痰 (10例), 血痰 (10例), 胸痛 (9例), ラ音 (16例) 呼吸困難 (9例) を認めた. 胸部X線写真上, 肺炎様陰影 (12例), パッチイな浸潤影 (3例), びまん性微細網状小結節状影 (3例) シスト様影 (1例) を認め, air crescent sign を5例, 胸膜肥厚を9例に認めた.全例流血中アスペルギルスフミガーツス抗原・抗体とも陰性であった. 全体として, 注意深い臨床症状の観察, 胸部X線写真と経気管支肺生検法などによって早期に真菌性肺炎を診断し, 的確な抗真菌療法を開始することが, この致死的感染症治癒への一歩となる.