著者
石崎 武志 宮下 晃一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.1607-1612, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
17

ALI/ARDSの急性期救命率が改善されてきたことで,ALI/ARDS長期生存例が増えてきた.その結果生還者に様々な後遺症が見られ,QOL (quality of life) が著しく損なわれることが判明してきた.おもな後遺症としては,呼吸機能障害,神経筋障害(critical illness polyneuropathy),認知機能障害,精神障害(外傷後ストレス症候群)等が知られ,これらが総合して健康関連QOLの低下を招く.
著者
森川 美羽 石崎 武志 高野 智早 渡辺 享平 田畑 麻里 佐藤 義高 西本 武史 小坂 浩隆 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.541-544, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18

【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
著者
小峰 幸夫 林 美木子 木川 りか 原田 正彦 三浦 定俊 川野邊 渉 石崎 武志
雑誌
保存科学 = Science for conservation
巻号頁・発行日
no.50, pp.133-140, 2011-03-31

Extensive survey of beetles with sticky insect traps (about 27,000 traps) in about seventy historic buildings in Nikko World Heritage site was performed from the end of April to August 2010. Several species of Anobiid were found on the sticky traps: Priobium cylindricum, Trichodesma japonicum, Sculptotheca hilleri, Hadrobregmus pertinax, and Oligomerus japonicus. Some of them had caused severe infestation at certain buildings. There is little information about the anobiid species, but from the sporadic patterns of numbers of anobiids on sticky traps in many buildings over fairly vast areas, it is supposed that these anobiids may inhabit the natural places (forests) around the historic buildings. Nicobium hirtum is a well known anobiid which infests wooden objects and buildings in Japan. But surprisingly, we did not observe the species in the surveys in the Nikko area. Adult insects were most significantly caught on sticky traps from May to July. Since there is little information about these kinds of anobiids, this trapping survey provided important information about the characteristics of the insects and ideas for appropriate countermeasures to protect the buildings from the insects.
著者
石崎 武志 服部 絢一 松田 保 宮保 進 越野 健 藤村 政樹 岡藤 和博 南 真司 金森 一紀 佐賀 務 舟田 久
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.86-97, 1985

肺真菌感染症を合併した21例の血液疾患を臨床床状, 胸部X線写真, 免疫血清学の観点から検討した. 起炎真菌はアスペルギルス17例, ムコール1例, 不明3例であった. 経気管支肺生検法で2例, 臨床経過で6例 (剖検所見で確認) を生前診断し抗真菌療法を行った. 抗真菌療法中に血液学的改善の得られた6例は治癒し, 改善の得られなかった2例は死亡した. 臨床症状として, 全例に通常の抗生剤不応性の熱発, 咳 (15例), 喀痰 (10例), 血痰 (10例), 胸痛 (9例), ラ音 (16例) 呼吸困難 (9例) を認めた. 胸部X線写真上, 肺炎様陰影 (12例), パッチイな浸潤影 (3例), びまん性微細網状小結節状影 (3例) シスト様影 (1例) を認め, air crescent sign を5例, 胸膜肥厚を9例に認めた.全例流血中アスペルギルスフミガーツス抗原・抗体とも陰性であった. 全体として, 注意深い臨床症状の観察, 胸部X線写真と経気管支肺生検法などによって早期に真菌性肺炎を診断し, 的確な抗真菌療法を開始することが, この致死的感染症治癒への一歩となる.
著者
石崎 武志
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.217-222, 2008-12-29 (Released:2016-12-28)
参考文献数
11

高齢者拘束性肺疾患では,種々の並存疾患や吸気制限のため最適の薬物療法の維持や呼吸リハビリテーションおよびHOT療法の継続が困難の場合がある.家族の理解と社会の支援も求められるが,医療従事者としては上記治療法と生活指導を通して,高齢者拘束性肺疾患患者がかかえる諸問題に真摯に対応し,ADLとQOLを維持改善することを目的としたい.
著者
日高 健一郎 石崎 武志 井上 浩一 川西 宏幸 高根 沢均 田村 幸雄 原 隆 堀 賀貴 水嶋 英治 吉田 昭仁
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-04-01

中近東と北アフリカにおいて、ユスティニアヌス1世期(6世紀)の主要な教会堂建築を対象として基礎研究、考古学調査、工学、保存科学、遺産公開の5領域で研究を行う。リビアのトクラ遺跡では「西教会堂」の発掘で、アプシスが出土、ヨルダンのジェラシュ遺跡では「三連教会堂」の詳細実測を終え、アトリウムの一部発掘を実施し、先行建築を確認した。対象国の政情不安と騒乱で一部研究が未完となったが、研究期間後半ではハギア・ソフィア大聖堂(トルコ、イスタンブール)を主対象として、上部構造の形状と微動を計測し、劣化の主因となる壁体への水分浸透を解析した。構造と保存科学の視点から、同大聖堂の保存と公開への基本指針を得た。
著者
三浦 定俊 石崎 武志 肥塚 隆保 川野邊 渉 佐野 千絵
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

はじめに高松塚古墳、キトラ古墳におけるこれまでの環境測定データを整理してまとめた。特に高松塚古墳については、発掘後、約30年間の温度データを下に、石室内の温度が80年代以降の外気温上昇の影響を受けて上がってきたことを明らかにした。また高松塚古墳の墳丘部の土質や水分分布を調査し、墳丘部の土の間隙の約半分は空気で占められる不飽和状態になっていることがわかった。あわせて墳丘土の水分特性を調べたところ、これと平衡となる相対湿度は100%となることがわかり、これまでの石室内での相対湿度の測定結果が裏付けられた。古墳石室内の生物的環境については、高松塚古墳・キトラ古墳の壁面を覆っているゲル状の汚れはカビ、バクテリア、酵母からなるいわゆるバイオフィルムであることを明らかにした。また石室内外から試料を採取し、菌類や酵母、バクテリアについて遺伝子配列解析による分子レベルの系統解析を行った。その結果、両古墳で類似のものもあるが、特にバクテリアについては優占種が異なっていることがわかった。古墳保存施設をどのように管理すべきか検討するために、キトラ古墳の施設を例に施設管理の手法とその効果についての検証を進めた。その結果、施設内大気中浮遊菌の量の推移と種類の相同性から、室内大気の動きを把握する手法を確立した。
著者
福田 正己 高橋 修平 曽根 敏雄 石崎 武志 成田 英器 高橋 伸幸
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

1.地下氷の存在が確認されている置戸町鹿の子ダムサイト斜面で、凍土の水平的な分布を確認するために、電気比抵抗探査を実施した。その結果、表層部で高い比抵抗値を示しており、同時に行った1m深さの地中温度の水平分布で示された低温地域と一致した。 2.かつて地下氷の存在が確認されていた地点に10m深さの検層孔を設け、3年間にわたって50cm毎の垂直地中温度分布の経時変化をモニタ-した。その結果、1988ー1989年までは表層から1m〜5mまでは、年間を通じて凍結状態にあり永久凍土の存在が確認できた。しかし、1989年の冬季が暖冬であり、引き続く1990年夏が暑かったため、1990年夏季に一旦凍土層が消滅した。 その後、冬季の寒気によって再び凍土層が再生しつつある。 3.低山地に形成分布している置戸町の永久凍土と比較するため、大雪山の永久凍土の分布と構造を明らかにするための現地調査を実施した。まず電気抵抗探査により、大雪山平ガ岳村付近のパルサ分布地域で、永久凍土の水平及び垂直探査を行った。同一地点で、凍土のボ-リング探査を行い、凍土の垂直分布が電気探査結果と一致するのを確認した。さらに、得られた凍土コア-サンプルを用いて、花粉分析とAMS^<14>C年代測定を行い、古環境の復元を行った。 4.花粉分析の結果、3mー5m深さでは、コナラ層とハンノキ層の花粉の出現頻度が高く、かつての温暖期に対応するものと推定される。1mー3mでは貧〜無花粉層となり、寒冷期に対応する。1m以浅では、エゾマツとアカエゾマツが多くなり、次第に温暖化してきたことを示唆してる。80cm深さから得られた腐食物の^<14>C年代は7060±200BPYとなった。これは後氷期の温暖期に一致しており、花粉結果に対応付けることができた。