著者
藤村 政樹 野村 将春 坂本 さゆり 上尾 友美恵 柴田 和彦 小川 晴彦 西 耕一 松田 保
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-112, 1990-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14

若年健康女性にみられる深吸気の Vmax 増加効果と basal bronchomotor tone の関係にっいて, partial and maximum expiratory flow-volume curve を用いて検討した. 深吸気の Vmax 増加効果は, ipratropium bromide によるPEF25の増加率 (r=-0.81, p<0.0002) および salbutamol によるPEF25の増加率 (r=-0.62, p<0.01) と有意の相関を示した. 深吸気の Vmax 増加効果の日差変動は, PEF25の日差変動と有意 (r=0.68,p<0.005) に相関したが, MEF25の日差変動とは相関しなかった. 以上より, 若年健康女性における深吸気の Vmax 増加効果は, 迷走神経緊張による basal bronchomotor tone が亢進しているためにみられる現象と考えた.
著者
藤村 政樹 野村 将春 坂本 さゆり 上尾 友美恵 柴田 和彦 小川 晴彦 西 耕一 松田 保
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-112, 1990

若年健康女性にみられる深吸気の Vmax 増加効果と basal bronchomotor tone の関係にっいて, partial and maximum expiratory flow-volume curve を用いて検討した. 深吸気の Vmax 増加効果は, ipratropium bromide によるPEF<sub>25</sub>の増加率 (r=-0.81, p<0.0002) および salbutamol によるPEF<sub>25</sub>の増加率 (r=-0.62, p<0.01) と有意の相関を示した. 深吸気の Vmax 増加効果の日差変動は, PEF<sub>25</sub>の日差変動と有意 (r=0.68,p<0.005) に相関したが, MEF<sub>25</sub>の日差変動とは相関しなかった. 以上より, 若年健康女性における深吸気の Vmax 増加効果は, 迷走神経緊張による basal bronchomotor tone が亢進しているためにみられる現象と考えた.
著者
藤村 政樹
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.365-375, 1983
被引用文献数
8

気管支喘息の治療に広く用いられているステロイドは, アラキドン酸からslow-reacting substance of anaphylaxis (SRS-A) への合成過程を阻害することがin vitroの研究で示されている.著者はモルモットを用いてleukotriene C_4 (LTC_4)および抗原吸入時のSRS-Aによる気道反応に対するステロイドの抑制作用を, 肺粘性抵抗(RL)と動肺コンプライアンス(Cdyn)を客観的指標として検討した.dexamethasone phosphate (20mg/kg)を18-22時間前に腹腔内に投与すると, 抗原吸入時のSRS-Aによる気道反応は抑制されたが, LTC_4による気道反応は抑制されなかった.この抑制作用は, RLよりもCdynにおいて著明だった.以上の所見より, ステロイドはとくに末梢側気道でのSRS-Aの合成, 遊出過程を抑制することが示唆された.
著者
西 耕一 水口 雅之 橘 秀樹 大家 他喜雄 藤村 政樹 松田 保
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.350-354, 1996

トロンボキサン合成酵素阻害薬が著効を示したと考えられる慢性持続性咳嗽患者を経験したので報告する. 症例は25歳の女性で, 8週間以上継続する乾性咳嗽を主訴として受診した. 乾性咳嗽のエピソードは今回が2回目であり, 前回は気管支拡張薬が無効であり, 塩基性抗アレルギー薬 (塩酸アゼラスチン)が有効であった. しかし, 今回の咳嗽は, 塩基性抗アレルギー薬や吸入ステロイド薬は十分効果的ではなく, トロンボキサン合成酵素阻害薬 (塩酸オザグレル) が著効を示した. さらに, カプサイシンに対する咳の感受性も同薬物の投与にて改善した. トロンボキサンA<sub>2</sub>, 咳嗽, およびカプサイシンに対する咳感受性の3者の関係に関する報告は今までのところ少なく, 詳細は不明であるが, 本症例のようにトロンボキサン合成酵素阻害薬が効果的な咳嗽患者が存在することは, 臨床的に重要な知見と考えられたため報告した.
著者
倉島 一喜 小川 晴彦 大家 多喜雄 藤村 政樹 松田 保 小林 勉
出版者
Japanese Society of Allergology
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.160-163, 1991-02-28 (Released:2017-02-10)

喘息発作では粘液分泌の亢進, 粘液線毛輸送系の障害が認められ, 粘液栓の形成や末梢気道の閉塞をきたすと考えられる. サーファクタントは粘稠なゲル層をゾル層と開離させるほか, 末梢気道の開存性に重要な役割を果たしていると考えられる. 今回我々は喘息患者の発作時にサーファクタント吸入療法を行い, その効果について検討した. 方法は喘息発作にて来院した患者11名を無作為に次の2群に分けて治療した. 対照群5名では生食1mlをジェットネブライザーにて吸入し, サーファクタント治療群6名ではサーファクタント TA 10mg(1ml生食に懸濁)を同様の方法で吸入した. 両群とも投与前後で呼吸機能, ガス分析の測定を行い薬剤の効果を検討した. その結果, 喘息発作時, 生食吸入群では, FVC, FEV_<10>, MMF, PaO_2に有意な変化はみられなかった. サーファクタント治療群では吸入後FVC, FEV_<10>, MMF, PaO_2はそれぞれ11.7%, 27.3%, 33.2%, 13.4%上昇した. またPaCO_2には有意な変化は認められなかった. 以上より喘息発作時においてはサーファクタント吸入療法の有用性が示唆された.
著者
野村 将春 藤村 政樹 松田 保 北川 正信
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.72-76, 1997-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
16

症例は75歳男性, 以前より風邪症状があると市販の総合感冒薬 (パブロンS®) を常用していた. 入院6日前より風邪症状を認め, パブロンS®を内服していたが, なくなったので, 新しい総合感冒薬 (パブロンゴールド®)を内服した. その翌日より呼吸困難出現, 近医にて胸部レントゲン写真上, 両側にびまん性陰影を認めたため, 精査目的で当科に紹介された. 胸部CTでは両側に間質性陰影が認められた. 気管支肺胞洗浄液中には好中球, リンパ球などの炎症細胞が認められた. 経気管支肺生検では肥厚した肺胞壁や間質への単核球の浸潤が認められた. 末梢血のリンパ球を用いた薬剤リンパ球刺激試験ではパブロンゴールド®が陽性であった. 以上よりパブロンゴールド®による薬剤性肺炎と診断した. 入院後, ステロイドを投与したところ症状は速やかに改善したが陰影は遷延した.
著者
石崎 武志 服部 絢一 松田 保 宮保 進 越野 健 藤村 政樹 岡藤 和博 南 真司 金森 一紀 佐賀 務 舟田 久
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.86-97, 1985

肺真菌感染症を合併した21例の血液疾患を臨床床状, 胸部X線写真, 免疫血清学の観点から検討した. 起炎真菌はアスペルギルス17例, ムコール1例, 不明3例であった. 経気管支肺生検法で2例, 臨床経過で6例 (剖検所見で確認) を生前診断し抗真菌療法を行った. 抗真菌療法中に血液学的改善の得られた6例は治癒し, 改善の得られなかった2例は死亡した. 臨床症状として, 全例に通常の抗生剤不応性の熱発, 咳 (15例), 喀痰 (10例), 血痰 (10例), 胸痛 (9例), ラ音 (16例) 呼吸困難 (9例) を認めた. 胸部X線写真上, 肺炎様陰影 (12例), パッチイな浸潤影 (3例), びまん性微細網状小結節状影 (3例) シスト様影 (1例) を認め, air crescent sign を5例, 胸膜肥厚を9例に認めた.全例流血中アスペルギルスフミガーツス抗原・抗体とも陰性であった. 全体として, 注意深い臨床症状の観察, 胸部X線写真と経気管支肺生検法などによって早期に真菌性肺炎を診断し, 的確な抗真菌療法を開始することが, この致死的感染症治癒への一歩となる.
著者
金森 一紀 魚谷 浩平 高倉 文嗣 西岡 真二 越野 健 藤村 政樹 中積 泰人 岡藤 和博 松田 保 上尾 友美恵 柴山 正美 川井 清
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.970-976, 1986-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
24

健常者および非発作期の気管支喘息患者を対象に深吸気の影響を検討した. Maximum expiratory flow-volume curve のV25をMEF25, これと同一肺気量における partial expiratory flow-volume curve のVをPEF25とし, Deep Inspimtion (DI) Index=(PEF25-MEF25)/PEF25を求めた. 健常者では若年者の DI Index は負となり深呼吸による気道拡張効果が認められたが, この効果は加齢とともに減弱し, 50歳以上では DI Index は正の値になった. 抗コリン剤吸入後には DI Index は有意に増加して正の値となり年齢差は認められなくなったことから, 若年者では迷走神経の緊張が強く気道の resting tone が収縮性に保たれていることが推測された. 気管支喘息のうち40歳未満で%FEV1.0≧70%の患者では DI Index は負となり, 抗コリン剤吸入後には有意に増加して年の値となったことから, 気管支喘息でも深呼吸の気道拡張効果は存在し迷走神経が関与していると考えられた.
著者
東 朋美 神林 康弘 藤村 政樹 大倉 徳幸 吉崎 智一 中西 清香 西條 清史 早川 和一 小林 史尚 道上 義正 人見 嘉哲 中村 裕之
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.29, no.S1, pp.s212-s217, 2014-02-20 (Released:2014-04-01)
参考文献数
33

The frequency and scale of Asian dust events have increased rapidly in East Asia since 2000. In connection with this, the effects of Asian dust (kosa) on human health, especially on allergic diseases, are major concern in Japan. We herein discuss the effects of kosa on allergic diseases, including asthma, chronic cough and Japanese cedar pollinosis. Epidemiological studies, as well as experimental studies, have demonstrated the association between kosa and the exacerbation of asthma and allergic diseases.The kosa particles increase airway inflammation as one of the major sources of atmospheric particulate matter. Furthermore the kosa particles absorb various atmospheric gases, including air pollution. Such environmental pollution enhances the response to allergens, including Japanese cedar pollen. Recently, some epidemiological studies used the kosa data obtained by the light detection and ranging (LIDAR) system, which distinguish between mineral dust and other spherical particles, by identifying differences in the shape of the particles. Further studies using the LIDAR system will help to identify the kosa aerosol components that have adverse health effects, leading to provide new strategies to prevent environmentally induced allergic diseases.
著者
東 朋美 神林 康弘 藤村 政樹 大倉 徳幸 吉崎 智一 中西 清香 西條 清史 早川 和一 小林 史尚 道上 義正 人見 嘉哲 中村 裕之
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.s212-s217, 2014

The frequency and scale of Asian dust events have increased rapidly in East Asia since 2000. In connection with this, the effects of Asian dust (<i>kosa</i>) on human health, especially on allergic diseases, are major concern in Japan. We herein discuss the effects of <i>kosa</i> on allergic diseases, including asthma, chronic cough and Japanese cedar pollinosis. Epidemiological studies, as well as experimental studies, have demonstrated the association between <i>kosa</i> and the exacerbation of asthma and allergic diseases.The <i>kosa</i> particles increase airway inflammation as one of the major sources of atmospheric particulate matter. Furthermore the <i>kosa</i> particles absorb various atmospheric gases, including air pollution. Such environmental pollution enhances the response to allergens, including Japanese cedar pollen. Recently, some epidemiological studies used the <i>kosa</i> data obtained by the light detection and ranging (LIDAR) system, which distinguish between mineral dust and other spherical particles, by identifying differences in the shape of the particles. Further studies using the LIDAR system will help to identify the <i>kosa</i> aerosol components that have adverse health effects, leading to provide new strategies to prevent environmentally induced allergic diseases.
著者
吉見 雄三 藤村 政樹 安井 正英 笠原 寿郎 中尾 真二
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.502-507, 2004
被引用文献数
1

呼吸器疾患における吸入薬は,近年ドライバウダー吸入(DPI)が普及し,圧作動式定量噴霧吸入(pMDl)に取って変わりつつある.しかし両薬剤には吸入流速による肺沈着率に違いがみられる.今回,安定期喘息患者8名を対象として,サルブタモールをTurbuhalerとpMDIの2つのデバイスを用いて吸入させ,その効果を薬剤吸入後の呼吸機能の改善度を指標として比較検討した.pMDIとDPIの比較では,吸入後の1秒量の経時的変化は両群間に有意差を認めなかった.両デバイスの吸入効果の差を表す指標としてΔAUCとΔmaxFEV_iを定義し,試験前の呼吸機能の指標との相関を検討したところ,1秒量・1秒率の低下している症例はど,pMDIの方がDPIよりも吸入後の呼吸機能の改善度が強い傾向がみられた.この成績は,吸入流速と薬剤沈着率との関係を反映したものと推察された.低呼吸機能患者に対する有用性があるため,今後もpMDI製剤は-部の患者には必要で,また吸気流速測定によるデバイスを使い分け等も考慮すべきであると考えられた.
著者
柴田 和彦 笠原 寿郎 藤村 政樹
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-37, 2000-02-20
被引用文献数
1

肺癌患者に対し, シスプラチンを中心とする化学療法を施行した際, 5HT_3受容体拮抗剤とステロイド剤の併用による標準的な予防的制吐療法を行った場合, 経験的に高頻度に吃逆が観察される.我々は1997年4月から約1年間に全身化学療法を施行した13例の肺癌患者について, 吃逆の発生状況をretrospectiveに検討した.CDDPベースの化学療法は9例に行われ, 前例で5-HT_3受容体拮抗剤とステロイド剤の併用による制吐療法が行われていた.このうち1例を除く8例, 総投与コース数24コース中11コースで吃逆が認められた.吃逆はCDDP投与開始後18〜42時間後(中央値26時間後)に発生し, 1〜37時間(中央値11時間)持続し, 最長でも58時間後には停止した.CDDPを使用しなかった4例では吃逆を認めなかった.CDDPベースの化学療法に標準的制吐療法を行った場合, 高頻度に吃逆を認めることが明らかとなった.
著者
坂東 琢麿 西 耕一 大家 他喜雄 安井 正英 藤村 政樹 松田 保
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.569-574, 1992-09-25

症例は57歳, 男性で, 主訴は胸部異常陰影であった。1990年7月3日, 急性心筋梗塞と診断され, 7月7日当院受診, 胸部X線像にて右上肺野に浸潤影が認められたが, 7月26日には自然消退した。外来にて経過観察中の9月27日に, 左中下肺野に斑状影が出現した。気道症状はなかったが, 軽度の炎症反応があり, 呼吸機能検査で軽度の拘束性障害が認められたため, 間質性肺炎を疑い, 気管支鏡検査を行った。気管支肺胞洗浄中の細胞は増加し, リンパ球が増加していた。病理組織学的には器質化肺炎と診断された。こうした所見は, アレルギー反応によって生ずる間質性肺炎に類似しており, 本症例では血清抗心筋抗体が陽性であることなどから, 心筋梗塞後症候群の一亜型と思われた。