- 著者
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原口 智和
- 出版者
- 佐賀大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2004
作物生産において水と養分は不可欠な要素であるが,水資源は逼迫し,かつ肥料による水環境の汚染が問題となっている.このような現状に鑑み,灌漑水と肥料の有効利用に資するため,必要最小限の灌漑水と肥料による作物栽培技術を確立すること目的として本研究を行った.作物が必要とする水および養分の量を,1個体あるいは数個体程度の小さなグループ毎に判断し,それらに必要な分のみを与えれば,圃場全体における灌漑水量および施肥量を最小限に抑えることが可能と考える.ここでは,作物生長を妨げない程度(必要最小限)の水分や養分が土壌中に存在しているかどうかを,作物の近赤外線画像から判定することを試みた.実験では,ビニールハウス内において,ワグネルポットにプロッコリおよびキュウリを栽培し,6種のバンドパスフィルター(550,650,680,750,780,800nm)を取り付けたデジタルカメラで葉および個体を撮影してその画像を解析した.土壌水分および養分の異なる条件で栽培した作物体について全体を撮影し,輝度(各波長光線の反射率)の分布と土壌水分・養分欠損との関係を調べた.その結果,葉が全方向に広がっているブロッコリについては,葉による蒸散量(抵抗)の違いは微小であり,また,「近赤外領域(780,800nm)の画像において,土壌水分の欠損によって輝度(対象領域内平均値)が増加する」ことが,個体全体を対象とした解析によって示された.一方,キュウリについては,葉の枚数が少ないため,葉の位置によって蒸散量(抵抗)や光の反射率の差が大きく,個葉を対象とした撮影・解析がふさわしいことが明らかとなった.