著者
大日 輝記 古賀 哲也 城戸 真希子 師井 洋一 占部 和敬 古江 増隆 名和 行文
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.452-455, 2002-08-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1

31歳,男性。タイへ渡航し現地リゾートの海岸を訪れた後,右足底に爬行様線状疹を認め,次第に移動した。病理組織にて肥厚した表皮内に小水疱を認め,水疱内,表皮および真皮上層血管周囲に高度の好酸球浸潤および中程度のリンパ球浸潤を認めた。一方,虫体は認めなかった。各種寄生虫の免疫血清学的検査はいずれも陰性であったが,渡航歴,経過および臨床所見からイヌ鉤虫による皮膚幼虫移行症と診断した。近年,海外リゾート地での感染例が相次いで報告されており,同地渡航者における本症の診断に注意が必要である。
著者
中山 樹一郎 古賀 哲也 占部 篤道 堀 嘉昭 桐生 美麿 野間 健 渕 曠二 安田 勝 八島 豊 吉利 優子 徳永 三千子 川野 正子 仁位 泰樹
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1055-1064, 1994
被引用文献数
2

アトピー性皮膚炎患者69例に対し, ヒスタグロビン<SUP>®</SUP>(Histaglobin<SUP>®</SUP>: 以下HG)適量療法〔初回1 vialで4回投与後, 効果不十分例(軽度改善以下の症例)に対し, 2 vialに増量し4∼6回の投与を行う方法〕を実施し, その治療効果の検討を行うとともに, 同期間中のアレルギーパラメーター(血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿ロイコトリエンB4(LTB4)値, 血清eosinophilic cationic protein(ECP)値)の変動を検討した。HG 1 vial投与における1st stage終了時の全般改善度は, 「中等度改善以上」42例, 60.9%であった。また, 1st stageでの効果不十分例, 即ち「軽度改善以下」の症例22例(脱落症例は除く)に対し, 2 vial投与を行った2nd stage終了時での全般改善度は, 「中等度改善以上」18例, 81.8%で, 2 vialに投与量を増量することにより改善度の上昇が認められた。試験期間中の副作用は1例も認めず, 概括安全度についても全例問題はなかった。1st stage終了時の有用度は, 「有用以上」で62.3%, 2nd stage終了時では72.7%と高い有用率が認められた。試験期間中, 測定しえた全症例のアレルギーパラメーターの推移では, 血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿LTB4値には, HG投与前後に全体としては有意の変動は認められなかった。血清ECP値に1st stage終了時, 有意(P<0.05)の上昇が認められた。血清ECP値は好酸球数, 重症度に相関するようにみられたが, HGの臨床効果とは関係なかった。また, 試験開始時の血漿LTB4値が100pg/ml以上であった18例においては, 1st stage終了時きわめて有意(P<0.01)な低下が認められた。
著者
本房 昭三 古賀 哲也 山野 龍文 占部 治邦
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.152-158, 1985-09-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

スポロトリコーシスと黒色真菌感染症の治療現況を報告するとともに, これらの疾患にたいする抗真菌剤の適応について述べた. スポロトリコーシスの治療としてはヨウ化カリウム (KI) の投与あるいは温熱療法が一般的であり, また使用さるべき治療法である. Flucytosine (5-FC) とケトコナゾールは数例において有効であったと報告されており, KIあるいは温熱療法が奏効しない場合には有用であるかも知れない. 黒色真菌感染症の治療としては, 病変が皮膚に限局され, かつ広範囲でない場合には外科的切除が first choice である. 現時点で黒色真菌感染症にもっとも有効な薬剤は5-FCであり, リンパ節転移などの内臓病変を有する場合, 広範囲の病変を有する場合には5-FC, あるいは5-FCとアムホテリシンB点滴静注の併用が推奨される.KIの作用機序についても検討を行なったが, KI投与後血中にヨウ素 (I2) を検出することは出来なかった. しかしヨウ化物イオン (I-) は30~60ppmの濃度に達した. In vitro の実験ではKI(1×10-4M)+H2O2(5×10-5M)+peroxidase, KI+H2O2+Fe++の条件下で Sporothrix schenckii の酵母形は5分後に完全に殺菌された. KI+I2(5×10-6M) の条件下でも5分後にはほぼ完全な殺菌効果がみられた. KI+H2O2 の条件下では120分後に完全な殺菌効果が認められた.また3×10-4MのKIと5×10-5MのH2O2の存在下では2×10-6M程度のI2が産生された. これらの結果から, peroxidase-iodide-H2O2 system, iron-H2O2-iodide system に加えてKIから酸化されて生じたI2が直接殺菌作用を示すためにスポロトリコーシスにおいてKIが特異的に奏効するのではないかと考えた.
著者
古賀 哲也
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.151-154, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
14
被引用文献数
5 5

Infections with dermatophytes are generally confined to the keratinized stratum corneum. This superficial site of infection may protect the infecting dermatophytes from direct contact with some of the effector cells of the immune system; therefore, the immune system has developed a special subsystem in the skin to eliminate them.The innate immunity and acquired immunity (delayed-type hypersensitivity response) are both required for cutaneous immune surveillance against dermatophytes in the skin.Epidermal keratinocytes not only have an important structural role in forming a physical barrier to dermatophytes but also are important functionally in mediating cutaneous immune reactions. These cells can secrete proinflammatory cytokines, chemokines, and anti-microbial peptides in response to dermatophytes. The T cell-mediated delayed-type hypersensitivity response to dermatophyte antigens may play a central role in both pathogenesis of the typical skin lesions and an acquired, relative resistance that affords partial immunity to the host. However, the exact form of effector T cell immunity and the cellular and molecular mechanisms which eliminate dermatophytes from the skin are poorly understood. The literature on the immunology against dermatophyte infection is reviewed in this paper.
著者
渡辺 晋一 西本 勝太郎 浅沼 廣幸 楠 俊雄 東 禹彦 古賀 哲也 原田 昭太郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.14, pp.2101-2112, 2001-12-20
参考文献数
17
被引用文献数
29

わが国における足疾患,特に足・爪白癬の頻度を知る目的で,1999年および2000年の5月第3週に受診した皮膚科外来患者を対象に,足疾患に関する無作為調査を行った.その結果,2年間で計21,820例が集積され,足にトラブルを持つ患者は,14,087例(64.6%)であった.このうち8,737例(40.0%)は足の真菌症で,ついで「うおのめ・たこ」2,826例(13.0%),「いぼ・ほくろ」1,259例(5.8%)の順であった.この成績は同様に行われたヨーロッパの調査結果とほぼ同じで,足の真菌症が多いことがわかった.そこで,2000年度の調査においては,受診理由を「真菌症の疑い」と「真菌症以外」に分けて別個に集計したところ,前者では3,231/3,420例(94.5%)に,後者では1,723/8,804例(19.6%)に真菌感染症を見いだした.この真菌感染症に関与する要因をさぐる目的で,得られた背景因子を多重ロジスティック回帰分析により解析したところ,「加齢」,「男性」,「高コレステロール血症」,「ゴルフ」,「同居家族に真菌症あり」などに有意に高いオッズ比が認められた.治療に関しては,外用剤による治療が主であり,爪白癬においても2/3が外用剤のみの治療であった.また美容上の問題点ばかりでなく,歩行困難などの支障を訴える患者も少なくなかった.今回の調査では,皮膚科外来患者のみを対象としたが,40%におよぶ足・爪白癬患者が存在することが明らかとなった.またその病変の多くが,患者自身が気付いていないか,あるいは気付いていても不充分な治療しか受けていない実態も明らかとなった.また白癬の感染リスク因子についても考察をおこなったが,今後感染予防を考える上で興味のある結果が得られた.これらの患者のQOLを高めるためにも,また家庭内感染を防ぐためにも,足・爪白癬患者を積極的に治療すべきだと考えられた.