著者
川島 眞 原田 昭太郎 Philippe Andres 宮地 良樹
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.504-512, 2007

尋常性ざ瘡は慢性疾患であるため,短期的な治療効果を維持するとともに,患者の期待に応える効果を得るためには長期間の治療を要する場合が多い。本試験は,日本人の尋常性ざ瘡患者に対し,アダパレンゲル0.1%を1日1回,最長12ヵ月間投与した場合の安全性及び有効性の評価を目的として実施した。446例の男女の被験者が組み入れられ,404例(91%)が6ヵ月間以上の投与を受け,357例(80%)が12ヵ月間の試験期間を完了した。尋常性ざ瘡患者に対する,最長12ヵ月間のアダパレン治療は高い安全性及び忍容性を示した。有害事象のほとんどが試験開始後2週間以内に生じた軽度又は中等度の一過性のものであった。9例(2.0%),13件の重篤な有害事象が発現したものの,いずれも被験薬との因果関係はなしと評価された。8例(1.8%)に試験中止につながる有害事象が発現し,被験薬との因果関係ありと評価された。総皮疹数,炎症性皮疹数及び非炎症性皮疹数の減少率(中央値)により評価されたアダパレンゲル0.1%の治療効果は,いずれの皮疹数についても試験開始3ヵ月後以降も認められ,その後6ヵ月後,さらに12ヵ月後まで継続した。このことから,アダパレンによる尋常性ざ瘡の治療期間として推奨される3ヵ月間の治療後にも継続投与することの臨床的意義が示唆された。また,被験者は試験終了時に実施した調査において,治療に対する高い満足度を示した。この満足度は,12ヵ月の試験中,経時的に増加した。以上より,日本人の尋常性ざ瘡患者にアダパレンを12ヵ月にわたり長期に使用することは,安全かつ有効な治療であることが支持された。
著者
渡辺 晋一 西本 勝太郎 浅沼 廣幸 楠 俊雄 東 禹彦 古賀 哲也 原田 昭太郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.14, pp.2101-2112, 2001-12-20
参考文献数
17
被引用文献数
29

わが国における足疾患,特に足・爪白癬の頻度を知る目的で,1999年および2000年の5月第3週に受診した皮膚科外来患者を対象に,足疾患に関する無作為調査を行った.その結果,2年間で計21,820例が集積され,足にトラブルを持つ患者は,14,087例(64.6%)であった.このうち8,737例(40.0%)は足の真菌症で,ついで「うおのめ・たこ」2,826例(13.0%),「いぼ・ほくろ」1,259例(5.8%)の順であった.この成績は同様に行われたヨーロッパの調査結果とほぼ同じで,足の真菌症が多いことがわかった.そこで,2000年度の調査においては,受診理由を「真菌症の疑い」と「真菌症以外」に分けて別個に集計したところ,前者では3,231/3,420例(94.5%)に,後者では1,723/8,804例(19.6%)に真菌感染症を見いだした.この真菌感染症に関与する要因をさぐる目的で,得られた背景因子を多重ロジスティック回帰分析により解析したところ,「加齢」,「男性」,「高コレステロール血症」,「ゴルフ」,「同居家族に真菌症あり」などに有意に高いオッズ比が認められた.治療に関しては,外用剤による治療が主であり,爪白癬においても2/3が外用剤のみの治療であった.また美容上の問題点ばかりでなく,歩行困難などの支障を訴える患者も少なくなかった.今回の調査では,皮膚科外来患者のみを対象としたが,40%におよぶ足・爪白癬患者が存在することが明らかとなった.またその病変の多くが,患者自身が気付いていないか,あるいは気付いていても不充分な治療しか受けていない実態も明らかとなった.また白癬の感染リスク因子についても考察をおこなったが,今後感染予防を考える上で興味のある結果が得られた.これらの患者のQOLを高めるためにも,また家庭内感染を防ぐためにも,足・爪白癬患者を積極的に治療すべきだと考えられた.