著者
中山 樹一郎 堀 嘉昭 占部 篤道
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.121-126, 1994-02-01 (Released:2011-07-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

高脂血症を伴う尋常性乾癬患者20例(3例は血清脂質レベルは正常範囲であったが何らかの血清アポタンパクの異常を認めたもの)に抗高脂血症剤のベザフィブラート(一般名bezafibrate, 商品名ベザトール®SR錠)の内服治療とステロイド外用療法の併用療法を施行しその乾癬皮疹および血清脂質の改善効果について検討し, 以下の結果を得た。1)乾癬の潮紅, 鱗屑, 浸潤·肥厚のいずれも統計学的に有意な改善がみられた。中等度改善以上の改善率は50%(20例中10例)であった。2)血清脂質値では, 治療後に総コレステロール, トリグリセライドが有意に低下し, またVLDL-コレステロールが有意に低下した。アポタンパクはA-IIが有意に上昇し, B, C-III, Eが有意に低下した。他に総脂質, エステルコレステロール, 遊離コレステロール, リン脂質が有意に低下した。血清脂質の中等度以上の改善率は60%であった。3)皮膚症状改善度と血清脂質改善度を総合的に考慮した全般改善度は中等度以上の改善率で50%であった。4)血清脂質の各パラメーターの変動と皮膚症状改善度との相関性では総コレステロールと皮膚症状の改善度に有意の相関が認められた。5)副作用は2例にみられ, その内訳は軽度の動悸と嘔気であった。薬剤との因果関係は断定できなかった。6)全般改善度および概括安全度を総合的に判断した有用度では, 有用以上が50%であった。以上の結果より高脂血症を伴う乾癬患者の外来での治療にはステロイド外用剤とベザフィブラートの内服療法の併用療法は試みるべき有用性の高い治療法と考えられた。
著者
中山 樹一郎 古賀 哲也 占部 篤道 堀 嘉昭 桐生 美麿 野間 健 渕 曠二 安田 勝 八島 豊 吉利 優子 徳永 三千子 川野 正子 仁位 泰樹
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1055-1064, 1994
被引用文献数
2

アトピー性皮膚炎患者69例に対し, ヒスタグロビン<SUP>®</SUP>(Histaglobin<SUP>®</SUP>: 以下HG)適量療法〔初回1 vialで4回投与後, 効果不十分例(軽度改善以下の症例)に対し, 2 vialに増量し4∼6回の投与を行う方法〕を実施し, その治療効果の検討を行うとともに, 同期間中のアレルギーパラメーター(血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿ロイコトリエンB4(LTB4)値, 血清eosinophilic cationic protein(ECP)値)の変動を検討した。HG 1 vial投与における1st stage終了時の全般改善度は, 「中等度改善以上」42例, 60.9%であった。また, 1st stageでの効果不十分例, 即ち「軽度改善以下」の症例22例(脱落症例は除く)に対し, 2 vial投与を行った2nd stage終了時での全般改善度は, 「中等度改善以上」18例, 81.8%で, 2 vialに投与量を増量することにより改善度の上昇が認められた。試験期間中の副作用は1例も認めず, 概括安全度についても全例問題はなかった。1st stage終了時の有用度は, 「有用以上」で62.3%, 2nd stage終了時では72.7%と高い有用率が認められた。試験期間中, 測定しえた全症例のアレルギーパラメーターの推移では, 血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿LTB4値には, HG投与前後に全体としては有意の変動は認められなかった。血清ECP値に1st stage終了時, 有意(P<0.05)の上昇が認められた。血清ECP値は好酸球数, 重症度に相関するようにみられたが, HGの臨床効果とは関係なかった。また, 試験開始時の血漿LTB4値が100pg/ml以上であった18例においては, 1st stage終了時きわめて有意(P<0.01)な低下が認められた。
著者
中山 樹一郎 堀 嘉昭
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.447-454, 1996

ヒノキチオール配合ハンドクリーム, リキッドソープ, ハンドウォッシュが新たに開発, 製品化された。これらの製品はヒノキチオールにアルミニウムジステアレートあるいは塩化アルミニウムが配合されヒノキチオール·アルミニウム錯体として安定性, 抗菌活性の強化がなされている。抗菌活性の基礎的検討をヒノキチオール50, 500, 1000各ppmで行い, 50ppmヒノキチオール·アルミニウムジステレート配合溶液がMRSA, MSSA, <I>P. aeruginosa</I>, <I>E. coli</I>に最も殺菌効果があることを見い出した。またハンドクリームのクリームベースに0.1%ヒノキチオールと0.5%アルミニウムジステアレートを配合したものはクリームベースあるいはクリームベースに0.1%ヒノキチオールを配合したものより統計学的に有意に高い抗菌活性を有していた。製品化されたハンドクリーム, リキッドソープ, ハンドウォッシュも抗菌活性を明らかに有しとくにリキッドソープ, ハンドウォッシュは極めて高い抗菌活性を示した。以上より細菌感染が重要な役割を演じている皮膚疾患のスキンケアーあるいは皮膚洗浄に本製品が有用であると思われた。
著者
堀 嘉昭
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, 1965

数十年来母斑細胞母斑(或いは色素細胞母斑)の病理発生に関して数多くの学説が提起されて来たが,病理組織学的研究によれば,誤つた将来性(prospective Po-tenz)を与えられた神経櫛起源性要素から発生し,個々の母斑細胞は,メラノサイトに類似のものもあれば,Schwann細胞に類似のものもあるが,完全にはメラノサイトにもSchwann細胞にもなりきつていないものと考えられる.この説は,海外においても引用もしくは賛成され,またPinkus及び三島は,さらに一歩進めてnevoblastという詞を作つた.すなわち,Pinkus及び三島は,「母斑細胞は一般的にいつて,成熟したメラノサイトの変性したものではないように思われる.母斑細胞は,nevoblastすなわち異常に分化した神経外胚葉性細胞(neuroectodermal stem cell)から胎生期に分離したものである」と述べている.Lund及びKraus(1962)も,腫瘍性の色素細胞すなわち色素細胞母斑及びメラノームの色素細胞は,おそらくメラノサイト,或いは,発生学的にその前段階のものを起源としていると考えられる.すなわち,メラノサイトは神経櫛由来のものであると考えられるから,母斑細胞も同様神経櫛起源であると考えられ,そして,母斑細胞が神経様の組織学的特性を示すのは,一に,皮膚において,色素性と,神経性の特性を持つところの極めて発生学上原始の,或いは,未だ分化前の外胚葉細胞から発展して来たものとして,或いは,二に,色素性と,神経触覚性及び,毛嚢性組織の同時的な器官過形成として説明されようと述べている.本研究では,母斑組織の病理組織標本の所見と,組織培養(または体外培養ともいう)によつて認められた細胞の形態及び態度とを比較検討することにより,その病理発生に関する考察を試みた.
著者
松本 忠彦 中山 樹一郎 永江 祥之介 堀 嘉昭
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.815-818, 1991-08-01 (Released:2011-09-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

汎発型皮膚そう痒症27例, 慢性蕁麻疹7例, 計34例に自律神経調整剤のグランダキシン®と抗ヒスタミン剤のメキタジンを併用して治療効果を検討した。総症例34例中著明改善および改善が28例(82%), 疾患別では汎発型皮膚そう痒症27例中著明改善·改善が22例(81%), 慢性蕁麻疹7例中著明改善·改善が6例(86%)であった。また, グランダキシンの使用によりCMIの改善が18例中5例(28%)にみられた。副作用は34例中1例(3%)にみられた。以上のように, そう痒, 紅斑, 膨疹などの皮膚症状を示す疾患にグランダキシンとメキタジンの併用療法は高い有用性が認められた。