- 著者
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堀 嘉昭
- 出版者
- 公益社団法人 日本皮膚科学会
- 雑誌
- 日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.3, 1965
数十年来母斑細胞母斑(或いは色素細胞母斑)の病理発生に関して数多くの学説が提起されて来たが,病理組織学的研究によれば,誤つた将来性(prospective Po-tenz)を与えられた神経櫛起源性要素から発生し,個々の母斑細胞は,メラノサイトに類似のものもあれば,Schwann細胞に類似のものもあるが,完全にはメラノサイトにもSchwann細胞にもなりきつていないものと考えられる.この説は,海外においても引用もしくは賛成され,またPinkus及び三島は,さらに一歩進めてnevoblastという詞を作つた.すなわち,Pinkus及び三島は,「母斑細胞は一般的にいつて,成熟したメラノサイトの変性したものではないように思われる.母斑細胞は,nevoblastすなわち異常に分化した神経外胚葉性細胞(neuroectodermal stem cell)から胎生期に分離したものである」と述べている.Lund及びKraus(1962)も,腫瘍性の色素細胞すなわち色素細胞母斑及びメラノームの色素細胞は,おそらくメラノサイト,或いは,発生学的にその前段階のものを起源としていると考えられる.すなわち,メラノサイトは神経櫛由来のものであると考えられるから,母斑細胞も同様神経櫛起源であると考えられ,そして,母斑細胞が神経様の組織学的特性を示すのは,一に,皮膚において,色素性と,神経性の特性を持つところの極めて発生学上原始の,或いは,未だ分化前の外胚葉細胞から発展して来たものとして,或いは,二に,色素性と,神経触覚性及び,毛嚢性組織の同時的な器官過形成として説明されようと述べている.本研究では,母斑組織の病理組織標本の所見と,組織培養(または体外培養ともいう)によつて認められた細胞の形態及び態度とを比較検討することにより,その病理発生に関する考察を試みた.