著者
山口 弘雅 吉田 治典
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.105, pp.1-11, 2005
参考文献数
23
被引用文献数
5

京都議定書の発効を受け,国際公約達成に向けた温室効果ガス削減の具体策が重要視される中,空調分野におけるCO_2削減策の一つとして蓄熱式空調システムの利用が注目されている.しかし,特に水蓄熱式空調システムは制御が複雑で,運転計画の自動化も容易ではなく,実際の効率が設計通りではない場合も少なくないと言われている.本研究では,熱負荷予測がなされることを前提として,蓄熱式空調システムの運転をシミュレートするためのモデルを作成し,全蓄熱システムの最適運転法を構築し,それを用いて,最適化の目的関数の違いが蓄熱システム運転に与える影響,熱負荷の予測誤差がシステムの挙動に与える影響等を分析した.
著者
鈴木 玉美 梅宮 典子 吉田 治典
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.556, pp.91-98, 2002-06-30 (Released:2017-02-04)
参考文献数
17
被引用文献数
5 6

Structure of the causes of window opening and closing behaviour from summer to autumn were analyzed for students in university rooms by means of rating scale method and factor analysis. 1)The primary cause of opening lies in ventilation, the secondary in warm discomfort, and the third in air contaminance. 2)The primary cause correlates with psychological reasons such as desire for outdoors. 3)The primary cause of keeping windows closed is to use air-conditioners and to avoid the invasion of rain, wind, insects and birds. 4)Noise is a cause of keeping closed only for the group of frequently open(IO), while lack of custom of opening is only for the group of not frequently open(NO). 5)The primary cause of closing is to use air-conditioners. 6)Windows are closed on the basis of behaviours such as going home or leaving. 7)Cold discomfort is a cause of closing for NO.
著者
佐藤 愛 吉田 治典
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.68, no.572, pp.1-7, 2003-10-30 (Released:2017-01-27)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

In this research, the outdoor thermal environment around residential buildings with and without greens were measured in winter and summer, and the following results were obtained. 1) In summer and winter, outdoor air temperature is 1.5K lower in the green space than in the no green space. 2) In summer, ground surface temperature is 8.3K lower in the green space than in the no green space. 3) In summer, moisture ratio is 1.1g/kg' lower in the green space than in the no green space. The results show that greens are effective to moderate air temperature, ground surface temperature and humidity. Heat mitigation effect of trees extends to out of tree shade. According to this measurement, the optimal green plantation is about 4.5m in height and 4m away from the building.
著者
吉田 治典 上谷 芳明 梅宮 典子 王 福林
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

都市のヒートアイランドなどに代表される熱的環境悪化の改善と都市の省エネルギーを、都市街区と建築をリンクした熱環境評価をベースにして研究し、次の5つのサブテーマに分けてまとめた。1.都市街区の熱的環境分析と環境改善種々の街区構成や地表面状態の異なる都市上空で顕熱・潜熱流を計測し、その特性を分析するとともに、街区の3次元CFDシミュレーションを建物や道路の表面温度と緑化の蒸散モデルを与えることにより行って熱環境の改善や開発の指針を示した。2.都市と建築のインターフェイス空間としての街路における熱的快適性評価自然の影響を受けて形成される内外空間の体感評価を、申告調査と物理的温熱環境要素の測定結果の両方を基にして行った。また、町家の多様な住まい方や工夫を,環境の物理測定、主観申告調査、行動様式調査などの総合的な視点から調査分析し、住み手が主観的に快適な環境と感じるのはどういう環境かを明らかにした。3.樹木からの蒸散量推定のためのモデル化樹木の蒸散現象を気孔コンダクタンスによってモデル化し、そのパラメーターを推定する手法と実在の樹木の葉面積を算定する手法を確立して、街区の熱環境予測に利用できる樹木の蒸散量を見出す手法を開発した。4.全天空輝度分布の推定法と応用天空放射分布をモデル化し熱負荷への影響を一様分布の場合と比較し、その差を分析した。また、人工衛星で得られるリモートセンシングデータを用いて特定の室の照度をシミュレーションで推定し照明設備を制御する手法を確立した。5.都市への熱負荷を減少するための季間蓄熱システム季間蓄熱システムを備えたビルの蓄熱エネルギー最適制御法を開発し、このシステムの性能をシミュレーションで再現して検証を行った。また、このモデルを用い最適な運転制御方法を開発し、それを実システムで確認した。以上の成果を、33編の査読付き論文と、99編の口頭発表論文に報告した。
著者
吉田 治典 後藤 祥仁
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.73, pp.95-104, 1999-04-25
被引用文献数
6

近年,蓄熱式空調システムの導入が,電力負荷の平準化につながり発電所の総合効率を上昇させ,省エネルギーの効果があると同時に,地球温暖化問題で懸案となっているCO_2の削減にも重要な役割を果たすといわれている.しかし,蓄熱式空調システムは制御が難しく,計画どおりの運用がなされていない事例が多いようである.このシステムの最適運転には建物に発生する次の日の負荷を予測し,その情報を基に適切な温度レベルで適正量を蓄熱する必要があり,熱負荷予測技術が不可欠となる.本研究では,既報で示した熱負荷予測の手法を実建物に適用して検証し,熱負荷予測法における精度向上のため種々の改良を行った過程を報告する.しかしその結果,若干の改善は見られたものの,大幅な改善は見られず,既報の手法の妥当性が裏付けられた.
著者
吉田 治典 RIJAL Hom Bahadur
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

ネパール・ヒマラヤ地域における伝統的住宅の冬の熱的主観申告調査と温熱環境調査を行い,居住者の熱的満足度と中立温度について以下のことを明らかにした。1)温冷感,快適感と適温感の快適範囲の出現頻度が高く,居住者は温熱環境への満足度は高いといえる。2)Griffiths法で求めた中立温度は,住宅A,B,Cを合わせると10.7℃であり,居住者の着衣量の調節や冬の適応によって,中立温度は一般的に言われている快適範囲より低い。3)住宅Cの中立温度は12.9℃であり,住宅Aより4.5K,住宅Bより2.3K高く,居住者がある程度適応範囲を持っていることから,中立温度の大小は暴露気温の大小によって決定され,同一地域内で中立温度の差がある。また,ネパールの亜熱帯地域における伝統的住宅の夏の温熱環境と居住者の温熱感覚に着目し,パッシブクーリングの観点から分析した。その結果,居住者は室内だけではなく室外や半戸外を適切に利用するパッシブな生活様式をもつこと,気候に則した広い土間床,土や煉瓦の壁,巨大壷などのパッシブ的要素を持つ住宅が形成されていること,近代的な建築材料の利用が必ずしも温熱環境の改善にはつながらないこと,室内で裸火のイロリを利用するためエネルギー効率が良くないこと,などを見出した。得られた成果は以下の通りである。1)居住者の滞在場所に関する調査から,居住者が内部,半外部,前庭を時間的に移動して居住温熱環境を緩和している実態が示された。2)昼間の土間の表面温度は外気温より土壁造で7.4K,煉瓦造で5.9K低い。土間,土壁,煉瓦壁,壷などには夏に涼しく保つのに有効的である。3)開放型イロリで多量の薪を燃焼している台所の昼間の室温が37.7℃であり,台所の過熱を処理する必要がある。4)屋根裏表面温度は昼間に草葺きで37.9℃,粘土瓦葺きで39.4℃,セメント瓦葺きで42.2℃であり,草葺き屋根の断熱性がもっとも高い。