著者
田中 俊多 松岡 里紗 三浦 翔 印藤 直彦 藤田 光一 松井 佐織 阿南 隆洋 渡辺 明彦 菅原 淳 向井 秀一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.2514-2520, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13

症例は70歳代の女性.間質性肺炎で通院加療中に炎症反応亢進を認めたため施行したPET/CTで上行結腸と左腎に集積を認めた.大腸内視鏡検査で,盲腸から上行結腸に直径5-7mm大の黄白色調の扁平隆起性病変の集簇を認めた.また上行結腸に10mm大のⅠsp様の隆起性病変を認めた.生検病理組織学的所見で腎・大腸いずれも,細胞質に顆粒状から類円形のPAS染色陽性像を認め,M-G小体(Michaelis-Gutmann body)と考えマラコプラキアと診断した.マラコプラキアは稀な慢性炎症性疾患で,病理学的に大型のマクロファージの集簇と,その細胞内にカルシウムや鉄の沈着を伴った層状同心円構造を有する封入体(M-G小体)を認めることを特徴とする.膀胱等の尿路系が好発部位であり消化管における報告例は少ない.今回われわれは,腎及び大腸に発生したマラコプラキアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
松井 佐織 廣吉 康秀 阿南 会美 阿南 隆洋 菅原 悦子 渡辺 明彦 菅原 淳 藤田 剛 向井 秀一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.279-285, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
11
被引用文献数
2

Chlamydia trachomatis(以下クラミジア)による直腸炎は,イクラ状・半球状小隆起が典型的内視鏡像とされるが,自験例では典型例が少なく,丈の低い隆起や隆起を伴わない例を認めた.自験例28例のうち初回内視鏡検査時に隆起性病変を認めた18例では丈の高い隆起(典型例)を3例(10.7%)に,丈の低い隆起を15例(53.6%)に認めた.隆起を伴わなかった10例(35.7%)では,びらん・アフタ・発赤などの所見を認めた.クラミジア直腸炎では,半球状小隆起以外の内視鏡所見が認められることも多いと考えられ,症例の集積と検討が必要と思われる.
著者
早雲 孝信 東 健 中島 正継 安田 健治朗 趙 栄済 向井 秀一 水間 美宏 芦原 亨 水野 成人 平野 誠一 池田 悦子 加藤 元一 徳田 一 竹中 温 泉 浩 井川 理 青池 晟 川井 啓市
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1539-1544, 1991 (Released:2007-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ras遺伝子は, そのpoint mutation により活性化される癌遺伝子として知られている. 今回, われわれは oligonucleotide hybridization assay を用いて,大腸癌86例における K-ras codon 12, 13のpoint mutation の有無について検索した. その結果, codon 12に32例, codon 13に1例の33例 (38%) に point mutation を認めた. 変異の比率を腫瘍の存在部位, 組織型, 深達度, リンパ節転移, ステージ分類別に検討したが, 有意な関係は認められなかつた. しかし, 深達度mやsmといつた早期の癌においても高頻度に変異が検出され, ras遺伝子の point mutation が癌の進行過程というよりも発癌の過程に関係していることが推察された.