著者
大東 健太郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.268-274, 2010 (Released:2011-04-22)
参考文献数
7
被引用文献数
13 9
著者
藤本 泰文 久保田 龍二 進東 健太郎 高橋 清孝
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.213-219, 2012 (Released:2013-04-24)
参考文献数
27
被引用文献数
7 3

オオクチバスとブルーギルは,日本各地に移殖された外来魚で,ため池はその主要な生息場所となっている.本研究では,オオクチバスおよびブルーギルのため池からの用排水路を通じた移出状況を調査した.私たちは宮城県北部に位置する照越ため池の用水路と排水路に,ため池から流出した魚類を捕獲するトラップを設置した.4 月下旬から 7 月下旬の調査期間中,これらの外来魚は用水路と排水路の両方から何回も流出しており,その流出のタイミングは,それぞれの水路の通水期間に限られていた.体長 125 mm の成魚のブルーギルも流出していた.ため池の魚類生息数を池干しによって調査した結果,ため池に生息する外来魚のうち,オオクチバスは 4. 0%,ブルーギルは 7. 1%が流出していたことが示された.外来魚の流出は繰り返し生じ,生息個体数の数%が流出していたことから,外来魚の流出は稀な現象ではなく一般的な現象である可能性が高い.この結果は,ため池が下流域への外来魚供給源となっていることを示す.周辺地域への被害拡大を防ぐためにも,ため池の外来魚の駆除は重要だと言える.
著者
木内 大佑 久永 貴之 萩原 信悟 阿部 克哉 長田 明 東 健二郎 杉原 有希 沼田 綾 久原 幸 森田 達也 小川 朝生 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.169-175, 2019 (Released:2019-07-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

研究目的は緩和ケア病棟入院中の難治性せん妄患者に対する,クロルプロマジン持続皮下注射による有効性を観察することである.2013年7月〜2014年5月において2施設の緩和ケア病棟で,せん妄に対し規定量以上の抗精神病薬治療が行われているにもかかわらずDelirium Rating Scale Revised-98(DRS-R-98)≥13で,クロルプロマジン持続皮下注射で治療したすべての患者を対象とした.評価は治療開始前と48時間後と7日後に行い,DRS-R-98<12となる,もしくはDRS-R-98が低下しかつCommunication Capacity Scale(CCS)≤2であるものを有効例とした.評価対象84名中60名(71.4% 95%CI:61-80%)が有効例であった.CCSの平均値は治療前後で1.48から1.03に改善した(p<0.001).持続皮下注射の安全性についてはCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)注射部位反応でGr2以上は1名(1.2% 95%CI:0-7%)であった.難治性せん妄患者に対するクロルプロマジン持続皮下注射は,コミュニケーション能力を保ったまま,せん妄重症度を増悪させない可能性がある.
著者
伊東 健一 伴 祐樹 割澤 伸一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.277-287, 2021-12-24 (Released:2021-12-24)
参考文献数
28

Wind displays are devices that enhance the presence of virtual reality (VR) by simulating realistic sensation of wind. However, certain wind displays require many wind sources because they reproduce fully physical wind directions. Methods to manipulate perceived directions of wind by cross-modal effects and realize wind displays with fewer wind sources have been proposed so far. We hypothesized that the visuoaudio-haptic cross-modal effect can enhance the effect of the manipulation. Thus we quantitatively investigated the effect of the congruent visual and audio information on the perceived wind directions. We present virtual images of flowing particles and threedimensional sounds of the wind as information to indicate “virtual” wind directions. The user study has shown that presenting both visual and audio information is significantly effective than presenting the audio or visual information alone. The median of absolute errors between the perceived wind directions and the virtual wind directions were 34.8° at most with the visual and audio information and the physical wind from front or behind.
著者
東 健一
出版者
University of Tokyo(東京大学)
巻号頁・発行日
2015

審査委員会委員 : (主査)東京大学教授 小山 博史, 東京大学教授 康永 秀生, 東京大学准教授 石川 ひろの, 東京大学教授 松山 裕, 東京大学教授 岡 明
著者
伊東 健 蝦名 真行
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.423-429, 2012-06-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

抗酸化剤応答配列は親電子性物質による生体防御タンパク質の誘導を担う遺伝子制御配列である.転写因子Nrf2がこの配列に結合して親電子性物質応答を仲介することが発見されてからおよそ15年が経過するが,今やNrf2は細胞の酸化ストレス応答を担う主要な転写因子として認識されるに至り,これを標的にした治療薬開発も臨床試験の段階にまできている.ここでは,最近のトピックスも含めNrf2/Keap1応答経路について概説する.
著者
濵砂 良一 川井 修一 安藤 由起子 伊東 健治 倉島 雅子 西村 敬史 山口 隆正 吉村 誠 小林 とも子 村谷 哲郎 松本 哲朗
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-7, 2011-01-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
14
被引用文献数
3 1

Real-time PCR 法を用いてChlamydia trachomatis(クラミジア)およびNeisseria gonorrhoeae(淋菌)を検出するAbbott RealTime CT/NG assay(realtime 法:アボットジャパン)の有用性を,女性子宮頸管スワブ検体,女性初尿検体,男性初尿検体を用いて検討した.対象は北九州市内の産科・婦人科施設,泌尿器科施設,皮膚泌尿器科施設を受診し,子宮頸管炎または尿道炎が疑われた患者,女性88 名,男性100 名である.これらの検体をBD プローブテックET CT/GC(プローブテック:日本べクトン・ディッキンソン)と比較した.クラミジアに対する全検体の陽性一致率は97.1%(66/68),陰性一致率は99.0%(206/208),淋菌に対する全検体の陽性一致率は100%(33/33),陰性一致率は100%(243/243)であった.女性の子宮頸管スワブでは3 検体の不一致例が,男性初尿では1 検体の不一致例があった.女性初尿においては2 検査間の不一致例はなかったが,子宮頸管スワブと初尿との間にrealtime 法で3 症例,プローブテックで4 症例の不一致があった.realtime 法とプローブテックの不一致例のうち3 検体でアプティマCombo 2 クラミジア/ゴノレア(富士レビオ)による再検査を行い,すべて陽性であった.女性では子宮頸管スワブ,初尿のいずれかのうち2 つ以上の検査で陽性の場合,男性では初尿で2 つ以上の検査で陽性の場合,「真のクラミジア陽性」症例と仮定すると,realtime 法における子宮頸管スワブ,女性初尿,男性初尿の感度はそれぞれ94.4%,77.8%,97.4%であった.これに対しプローブテックではそれぞれ88.8%,77.8%,100%であった.淋菌に対する感度はいずれの検査でも100%であり,realtime 法は女性の子宮頸管スワブ,男性の初尿を用いると,淋菌,クラミジアに対してプローブテックと同等かそれ以上の有用性を示した.
著者
和 吾郎 藤田 真二 東 健作 平賀 洋之
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.13-26, 2013-07-10 (Released:2015-02-25)
参考文献数
35
被引用文献数
1

2004年8月と2005年9月に物部川上流域で発生した大規模山腹崩壊に伴う濁質の流出特性の変化を明らかにするため,2001~2011年における下流部の濁質負荷量,濁度と流量との関係(C-Q関係),アユ河川定着期(6~9月)の濁水(濁度10度以上)の発生日数の経年変化を調べた。山腹崩壊が発生した2004年以降,物部川の濁質負荷量,出水時の濁度上昇率(C-Q式の傾き),濁度10度以上の日数は山腹崩壊前(2001~2003年)に比べて増加し,その状況は2007年まで認められた。近年の濁質流出の動向について,2010年と2011年の濁質負荷量は,これら2ヶ年より降水量が少なかった2006年の50%以下まで減少した。一方,2009年以降,濁度10度以上の日数は再び増加傾向を示し,2011年では2006年の70日間に次ぐ54日間を記録した。以上のように,物部川の濁質の流出特性は大規模山腹崩壊を契機として高濃度濁水の発生及び濁水長期化が認められる状況に変化した。近年では高濃度濁水の発生は抑制されつつも,アユへの影響が懸念される水準の濁水は依然として高頻度で発生し,濁水長期化が継続している。
著者
東 健
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.600-606, 2013 (Released:2014-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1
著者
畠山 昌則 谷口 維紹 瀬谷 司 大島 正伸 松岡 雅雄 下遠野 邦忠 東 健 秋吉 一成
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

新学術領域研究「発がんスパイラル」は、単一の微生物感染による発がんを中心に、がんの発症・進展に関わる微生物側因子の役割を明らかにするとともに、発がん微生物感染が局所に誘起する炎症・免疫応答が発がんを加速する機構の本態を解明し、革新的ながん予防・がん治療法開発への道を拓くべく平成22年度に開始された。本取り纏めでは、新学術領域研究「発がんスパイラル」の研究成果を以下のように取りまとめた。1.領域研究報告書の作成研究代表者ならびに連携研究者による会合を2回行い、過去4回にわたり発刊したNews Letterの集大成として、5年間の成果をまとめた領域研究報告書を発行した。報告書では、発がん微生物が保有するがんタンパク質の作用機構、微生物がんタンパク質と宿主生体応答系の相互作用ネットワーク、「発がんスパイラル」場形成を担う免疫系細胞の同定とゲノム不安定性を増強するエフェクター分子の作用機構、自然免疫系細胞のがん細胞認識とがん細胞破壊を促進する分子群の同定、など本領域研究から得られた多くの新たながん生物学的知見を記述するとともに、新規ナノゲルやDNAワクチンの開発を通して拓かれつつある「向がん」から「制がん」への宿主応答ベクトル変換を誘導する次世代のがん予防・治療法開発へのプロセスを記載した。インパクトの高い国際一流誌に報告された研究成果も報告書内に別刷として収集した。2.領域公式ウェブサイトの運営:ウェブサイトを通じ、社会・国民に向けた積極的な情報公開を維持した。これまでに公開してきた情報に加え、新たに「研究成果」として過去5年間に進めてきた基礎研究の成果の社会への還元状況を発信した。さらに領域公式ウェブサイトから、各研究者個別のウェブサイトへ相互リンクを図り、利用者はリンク先からさらに詳細な情報を得ることが出来るように工夫した。
著者
末久 弘 松田 英祐 坂尾 伸彦 宮本 章仁 藤澤 憲司 松野 剛 坂東 健次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.2214-2219, 2017 (Released:2018-04-30)
参考文献数
12

症例は55歳,女性.38度台の発熱,両側手・膝・足関節の疼痛・腫脹を主訴に当院を受診した.胸部CTにて左肺上葉に長径3.5cm大の充実性不整形腫瘤あり,PET検査では強いFDG集積(SUVmax=36.7)を認めた.肺門・縦隔リンパ節転移や遠隔転移を疑う所見は無く,少量の左胸水を伴っていた.四肢X線では,大腿骨や脛骨骨膜部に二重線を認め,大腿骨MRIでも骨幹部の骨膜下に高信号を呈していた.理学所見では,ばち指・趾も認めた.以上より,肺性肥大性骨関節症を合併した肺癌cT2aN0M0 stage IBを疑い,審査胸腔鏡後に開胸で左肺上葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した.術後経過は良好,関節痛は術後1日目から消失した.病理検査の結果,多形癌,pT2aN0M0,stage IBだった.肺性肥大性骨関節症は進行肺癌を合併することが多いが,肺病変の治療により関節炎の症状が劇的に改善することが期待できる.
著者
吉谷 優子 伊東 健太郎 石﨑 智子
出版者
日本赤十字北海道看護大学
雑誌
日本赤十字北海道看護大学紀要 = Journal of Japanese Red Cross Hokkaido College of Nursing
巻号頁・発行日
vol.17, pp.25-33, 2017-03

2011年6月、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下、「障害者虐待防止法」)が成立した。しかし残念ながら、障害者虐待防止法施行後も、障害者虐待事件の報道は絶えない。 そこで、日本の障害者虐待に関する文献を概観し、障害者虐待研究の実態を把握することで今後の課題を明らかにすることを目的に、研究を行った。 科学技術文献情報データベースJDreamⅢクイックサーチ機能を用いて、科学技術文献と医学薬学文献を、「障害者」と「虐待」で検索したところ、1975年から1988年までは文献がなく、最古のものは1989年の文献であった。2012年の障害者虐待防止法施行頃から2015年に絞って同様に検索したところ254文献であった。そのうち、被虐待者、虐待のリスクの高い人として児童に関心を寄せたものが204文献、高齢者に関心を寄せたものが17文献、障害者に関心を寄せたものが50文献、対象の記載や限定のないものが3文献であった。2012年からの4年間で、「障害者」と「虐待」のキーワードで254文献検索されたが、うち50文献のみが障害者虐待に関心を寄せたものであった。この50文献のうち、原著論文は10文献であった。そのうち5文献は、障害の種類や施設の種類等を絞らずに、社会全体で障害者虐待を防止し、早期発見したいとの観点から書かれていた。 虐待がまだ多い現状に鑑み、今後も障害者虐待に関する研究を行う必要があると考えられた。
著者
羽太 園 野畑 理佳 東 健太郎 戸田 淑子 安達 祥子
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.13, pp.55-70, 2017-03-01

国際交流基金関西国際センターで実施している外交官・公務員日本語研修では、これまで主教材として『みんなの日本語』を使用していたが、コース目標とカリキュラムのずれ、レベル差の拡大による学習ストレス、日本文化社会理解のシラバスの偏りなどの問題から、平成27年度より『まるごと日本のことばと文化』(以下『まるごと』)を使用することとした。主教材変更に際しては、本研修参加者の多様な背景や学習能力などをふまえ、①職業的な知識や経験の利用、②レベル差への対応、③文法を重視する学習者への対応、の3点に留意してコースデザインを行った。研修の結果、成績下~中位レベルの口頭運用能力の向上、ストレスの軽減、コミュニケーションへの積極性などの変化が明らかになったが、上位レベルのカリキュラムには課題が残った。
著者
東 健一郎 波多野 光紀 平岡 興三 鈴木 英太郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.349-357, 1974

1970年から1972年までの3年間におれおれの教室で, 外科的治療を要する乳児化膿性髄膜炎の症例9例を治療した. その内訳は, 水頭症7例, 脳膿瘍1例, 硬膜下膿瘍1例であつた.<BR>水頭症に対しては, 髄液が無菌となつてからすくなくとも2カ月間観察した後に, 脳室腹腔シャントを施行した. このような注意深い治療にも拘らず, 大部分の患者で, シャントバルブの閉塞や感染のために, 頻回のシャント再建が必要であつた. 髄液の長期間にわたる蛋白および細胞数の増加は, シャントバルブの疏通性を妨げる原因となるものである. われわれは, このような障害を克服するために, 皮下に留置したOmmaya貯水槽による頻回の髄液排除, あるいは脳室洗浄による髄液の稀釈を行なつて, よい成績を得た. 脳膿瘍の患者は, 後に発生した水頭症の手術後死亡したが, 硬膜下膿瘍の患者は膿瘍腔のドレナージによつて完全に治癒した.<BR>われわれの経験では, このような化膿性髄膜炎の合併症の外科的治療は, 術前に神経学的脱落症状がなければ良い結果を得ることができる. したがって, 外科的治療は不可逆性の脳損傷がおこる前に, 出来る限り早く行なわなければならない.
著者
藤本 泰文 川岸 基能 進東 健太郎
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-25, 2008 (Released:2017-11-10)
参考文献数
37
被引用文献数
9

伊豆沼・内沼と集水域内の流入河川や池で魚類相を調査した.合計12科36種の魚類の生息を確認した.集水域の魚類相は,東日本固有種であるゼニタナゴ,タナゴ,シナイモツゴやギバチなどを含む,純淡水魚類を中心に構成されていた.開放水域である伊豆沼・内沼と流入河川では,かつて高密度に生息していた在来の小型魚種の生息数は僅かであった.一方,外来魚であるオオクチバスは数多く生息し,その影響が示唆された.池ではオオクチバスの生息の有無によって,魚類相に大きな違いがみられた.在来魚の生息種数は,オオクチバスが生息していない池で多かった.これらの池では,ここ十数年の間に伊豆沼・内沼から姿を消した数種の在来種を再確認した.開放水域である伊豆沼や河川の魚類相は,オオクチバスの侵入による影響が著しく,閉鎖水域である池では,在来魚が保存されているケースがあることが示された.本研究の結果は,集水域を単位とした魚類調査が,在来魚の再確認や防除が望ましい外来魚の分布の把握を通じ,その集水域での魚類相の復元に寄与する可能性を示した.
著者
東 健作
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.401-410, 2010-09-20 (Released:2012-10-05)
参考文献数
43
被引用文献数
1

四万十川流域における,⌈上流⌋,⌈中流⌋,⌈下流⌋の3市場での約30年間にわたるアユの入荷量(1977-2009年)を解析することによって,当河川におけるアユ入荷量の動向と近年の特徴を明らかにした。アユの入荷量変動は流域全体で概ね同調しており,特に2003年以降の不漁が顕著であった。その一方,⌈中流⌋で年毎の変動が大きく,⌈下流⌋で入荷量の減少度合が大きいといった市場間の違いもみられ,遡上量と産卵親魚の双方が減少したことによって資源が縮小している現状が示唆された。当資料の解析から,10月の漁獲と同月の少雨が翌年の入荷量に対して負の相関を示すことが分かった。それゆえ,アユ資源の持続的利用のためには,降雨条件を考慮に入れながら産卵初期の親魚を保護することが重要であることを指摘した。