著者
和田 敏裕
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.159-175, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
94
被引用文献数
2

This review is an exposition of published reports describing radioactive contamination of marine and freshwater fish, collectively revealing radiocesium contamination mechanisms. Radiocesium concentrations in marine fish caught in the waters off Fukushima have decreased drastically during the decade following the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant (FDNPP) accident, mainly because of the area’s open and diffusive marine environments leading to lower radiocesium concentrations in seawater, sediments, and prey items, and because of the low physiological capability of retaining radiocesium in fish. Nevertheless, careful attention must be devoted to marine fish in the FDNPP port because some fish samples collected from the port have exceeded the Japanese regulatory limit of 100 Bq/kg-wet. Long-term monitoring of marine fish and surrounding environments is necessary because coastal waters around FDNPP have not reached an equilibrium state. Radiocesium contamination of freshwater fish has continued in rivers and lakes within areas with high degrees of deposition, although overall contamination levels have decreased considerably. Radiocesium contamination will be particularly persistent in lakes and ponds where dissolved radiocesium leaching from sediments can become a continuing source of contamination for biological magnification through the food web. In riverine environments, continuing supplies of contaminated prey items (e.g., insects) from riparian environments can be expected to engender persistent radiocesium contamination of freshwater fish (e.g., salmonid fish in forest rivers).
著者
信濃 卓郎 和田 敏裕
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.31-42, 2020-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

東京電力福島第一原発事故に由来する福島県を中心とした農地,陸水域及び海域の放射性セシウム汚染から8年が経過し,これまでの取組と現状,今後の対策についてまとめた。農業現場では放射性セシウムの移行抑制対策として長期的な土壌のカリウムの適切な管理が求められる。水産現場では,海面・内水面漁業ともに放射能汚染に起因する様々な課題を抱えており,今後,中長期的視点に基づく漁業活動の再生や復興支援が重要となる。
著者
鷹﨑 和義 和田 敏裕 森下 大悟 佐藤 利幸 佐久間 徹 鈴木 俊二 川田 暁
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.41-51, 2018 (Released:2019-03-20)
参考文献数
30

2015年5月~2016年11月に,福島県内の阿武隈川水系の13定点においてさし網や延縄などを用いた調査を行い,716個体(体長9.9~65.0 cm)のチャネルキャットフィッシュが採集された。本種は阿武隈川の本流で採集され,特に発電用ダム(信夫ダム,蓬莱ダム)の貯水域やその下流域で多く採集された。信夫ダムでは,2008年に比べて CPUE が著しく増加していることや,GSI の高い成熟個体や未成熟の小型個体が多く採集されたことから,近年,ダム周辺の水域を中心に,再生産により本種の個体数が急激に増大している可能性が考えられた。雌の GSI の季節変化より,本水系における産卵期は5~6月ごろと推定された。信夫ダムにおいて,さし網および延縄により採集された魚類のうち,本種が占める割合は非常に高く(各64.2%および100%),本水系における適切な駆除手法の確立が急務であると考えられた。
著者
田島 木綿子 和田 敏裕
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2008年から2016年にかけて科博が収集した約1600個体のうち、約150個体を本研究用解析として選別し福島大学にて、当該筋肉サンプルの放射性セシウムと骨内放射性ストロンチウムSr90の蓄積量解析をゲルマニウム半導体検出器を用いて実施した。その場合、コントロールとして九州地区の漂着鯨類を用いた。その結果、風評被害もあるので詳細はまだ控えるが、原発事故直後に茨城県および千葉県で発見された数個体の漂着個体(鯨種も数種)の筋肉から高濃度のセシウムCr-134とCr-137が検出された。この成果は慎重に扱いつつ、解析サンプルを増やし、成果の信憑性を検証する。やはり九州地区の個体からは基準値以下の結果しか得られていない。さらに、実質的な病理学的変化はこれらの個体からはまだ得られていないが、脳を含めた各臓器の所見を引き続き比較・検討する。高濃度セシウムCr-134とCr-137が検出された鯨種の食性結果も別課題で共同研究している北海道大学から得られたため、生物濃縮を検証するための基盤ができた。また、福島原発近くにあたる、茨城県、千葉県、宮城県において、新たな漂着個体を約20件調査することができた。その中には、沿岸性個体と外洋性個体が含まれており、さらには浅瀬で棲息する個体と深海で棲息する個体もいる。海洋の場合は横の広がりだけでなく、縦の広がり(深いー浅い)もこうしたことを考えていく上で重要となる上、継時的変化をみるためには、本年度調査した標本も本研究に追加していく予定とする。さらに、アジア保全医学会(ボルネオ、マレーシア)、日本セトロジー研究会(函館、北海道)、日本野生動物医学会(武蔵野市、東京)、つくみイルカ島シンポジウム(津久見市、大分県)の学会・シンポジウムに参加し、本研究への共同研究の可能性ならびにサンプル提供の依頼を精力的に行った。