著者
唐帆 健浩 安達 仁 大前 由紀雄 北川 洋子 田部 哲也 北原 哲
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1Supplement1, pp.S44-S47, 2006-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
7

嚥下反射の惹起性が低下していろ脳血管障害患者5例を対象に、口腔から挿入したチューブを舌根部に固定して、常温水・冷却水・冷却炭酸水を用いて、中咽頭への注水刺激での惹起注水量を検討し、さらに冷却炭酸水注水による嚥下訓練の可能性について検討した。口腔内にカテーテルを、口唇から約10cm挿入し、用手的にほぼ一定速度で舌根部に各種液体を注入した。注水する液体として、(1) 常温水 (21-23℃)、(2) 冷却水 (12-14℃)、(3) 冷却炭酸水 (12-14℃) を用いた。3回の嚥下にて惹起注水量を検討した。健常人の場合と同様に、嚥下障害症例においても惹起注水量は、常温水よりも冷却水さらに冷却炭酸水で有意に減少していた。これは、冷却炭酸水の冷刺激と、発泡性の物理的刺激が作用したためである可能性が考えられる。冷却炭酸水を用いると、1ml以下の、比較的少量の注水にて嚥下反射を惹起させ得うため、嚥下反射の惹起性が低下した患者に対する嚥下訓練への応用が可能であると思われる。
著者
大前 由紀雄 安達 仁 磯田 幸秀 前川 仁 北川 洋子 唐帆 健浩 田部 哲也 北原 哲
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.109, no.7, pp.594-599, 2006-07-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
12 13

気管切開は,呼吸や下気道の管理を容易にすることはあっても嚥下機能にとっては負の要因となる.著者らは,気管切開に伴う呼気流の変化が喉頭腔に流入する食塊や分泌物の処理能力の低下に繋がり,経口摂食への導入を困難にする一因になると考えてきた.このため,気管切開症例にはスピーチバルブの装着を進め経口摂食への導入を試みてきた.今回は,喉頭腔への分泌物の貯留状態を喉頭クリアランスと定義しスピーチバルブ装着に伴う嚥下機能の変化を検討した.対象は,嚥下訓練の過程でスピーチバルブを装着した16症例で,スピーチバルブの装着前後の嚥下機能と経口摂食確立の成否との関連を検討した.初診時の喉頭クリアランスは全例で低下し,14例に喉頭流入を認めた.スピーチバルブ装着後は,喉頭クリアランスと喉頭流入の改善を有意に認めたが,咽頭期の嚥下出力自体には有意な変化を認めなかった.一方,経口摂食の成否は,喉頭挙上障害および喉頭流入•誤嚥の有無が有意に相関した.気管切開孔の造設による呼気流の変化は喉頭クリアランスの低下や喉頭流入の原因となり経口摂食導入への大きな阻害因子となる.こうした病態では,可能な限り呼気を喉頭腔に導き喉頭クリアランスの改善を目指すことが経口摂食導入に向けて大きな一助になる.
著者
大前 由紀雄 小倉 雅実 唐帆 健浩 村瀬 優子 北原 哲 井上 鐵三
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.301-304, 1998-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8
被引用文献数
3

嚥下運動において舌前半部は硬口蓋と接触し舌運動の基点 (アンカー) を形成することで口腔内の食塊を後方に移送している. 今回はこのアンカー機能の嚥下第2期におよぼす影響を検討した. 対象は健常者8名で, 正常嚥下時, アンカー機能補強時, アンカー機能抑制時における嚥下動態を咽頭食道造影検査と嚥下圧検査で観察した. アンカー機能を補強した嚥下では, 咽頭後壁収縮波高の短縮と舌根部最大嚥下圧値の上昇が観察された. 一方, アンカー機能を抑制した嚥下では, 咽頭後壁収縮波高の延長と舌根部最大嚥下圧値の低下が観察された. したがって, 舌前半部によるアンカー機能は, 舌根部の後方運動にも影響することが示唆された.
著者
唐帆 健浩
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.396-409, 1999-06-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
40
被引用文献数
10 10

The purpose of this study was to determine the effect of the “chin-down” maneuver on the swallowing function. Ten normal volunteers were examined with videofluorography and manometry in both the neutral and the “chin-down” positions. The effect of this maneuver on the pharyngeal dimensions, hyoid motion, bolus flow, and manometric pressures at the base of tongue (BOT) was evaluated using 5ml of barium.The “chin-down” maneuver significantly decreased the distance between the epiglottic tip and the posterior pharyngeal wall (PPW); the distance between the epiglottis and the arytenoid; the vallecular angle; the duration of the upper esophageal sphincter (UES) opening; and the duration of the anterior hyoid movement. The “chin-down” maneuver increased the epiglotto-tracheal angle; the duration of laryngeal closure; the duration of the BOT-PPW contact; the duration of the hyoid rest period in a maximal excursion; the maximum diameter between the anterior and the posterior wall of the UES; the peak pressure at the BOT; the duration of the pressure wave at the BOT; and the area under the curve of contraction at the BOT.These results show that the “chin-down” maneuver advances airway protection, UES opening and the propelling force at the BOT during swallowing in normal volunteers. This maneuver may have a therapeutic value for treatment of dysphagic patients.
著者
唐帆 健浩 兵頭 義浩 松村 優子 北川 洋子 田部 哲也 北原 哲
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.454-458, 2003-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

嚥下障害患者に対して、内視鏡を用いた嚥下機能検査と咽頭食道造影検査を実施し、誤嚥の検出精度に関して両者を比較し、内視鏡検査の信頼性を検討した。対象は、誤嚥を疑われて当科を受診した86例である。患者の原疾患は、脳血管障害30例、ALS7例、脳腫瘍術後7例などである。誤嚥に関して内視鏡検査と造影検査は高い連関性を示した。内視鏡検査にて誤嚥を認めたのは86例中40例であり、このうち造影検査でも誤嚥を認めたのは32例であった。造影検査での誤嚥検出を基準とすると、誤嚥に関する内視鏡検査の鋭敏度は74%、特異度は81%であった。両検査は、嚥下機能検査として相補するものであり、特に内視鏡検査は誤嚥のスクリーニングに有用と考える。
著者
唐帆 健浩
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.12-18, 2019-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
20

超高齢社会を迎えた本邦では, 摂食嚥下障害のある高齢者の増加が予想される。 嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を用いない簡易検査である, 摂食嚥下機能スクリーニング法のニーズが高まっている。 現在, 国内外で行われている摂食嚥下機能スクリーニング法に関して, 文献調査を行った。 欧米では, The Mann assessment of swallowing ability (MASA) や Gugging swallowing screen (GUSS) を用いた報告が散見される。 在宅医療が推進されている現在, 摂食嚥下機能を簡易に評価して適合した食形態を提案できるような, 日本人向けの摂食嚥下機能スクリーニング方法の開発が望まれる。
著者
唐帆 健浩
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S99-S106, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1
著者
唐帆 健浩
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.782-787, 2014-06-20 (Released:2014-07-12)
参考文献数
18

「飲み込む際にむせる」 「飲み込みにくい」 という嚥下障害を疑うような症状の患者は, 耳鼻咽喉科を受診することが多い. 日本耳鼻咽喉科学会が編集した 「嚥下障害診療ガイドライン」 には, 耳鼻咽喉科一般外来で行う嚥下障害の診療指針が示されており, 診療所などの耳鼻咽喉科一般外来を担当する医師が自ら, 基本的な診察と嚥下内視鏡検査を経て, 嚥下障害患者への対応を決めることを推奨している. すなわち, 自身で嚥下指導・訓練を行うか, より専門的な医療機関へ紹介するかを判断することになる. 一般外来で施行が可能な嚥下指導や嚥下訓練にはかなりの制限があるが, 対象を絞ることで対応は可能となる. 一連の診察および検査を行った結果, 嚥下内視鏡検査で何らかの異常を認めるが明らかな誤嚥がなく, 精神・身体機能は嚥下指導を行う上で十分に維持されている患者, 例えば, 液体嚥下の際に, 軽度の喉頭流入を認めるだけの, 認知症のない高齢者などが対象となる. 加齢により, 嚥下動態にはさまざまな変化がみられ, これらが相互に作用して, 代償ができなくなる高齢者は少なくない. 嚥下指導とは, 食事に適した食事環境, 姿勢・頭位や食形態の工夫など一般的な誤嚥予防や対応策を説明することである. 嚥下訓練とは, 嚥下動態を考慮して機能の改善を図り, 安全な経口摂取を目指す訓練である. 嚥下指導や訓練は, 条件を満たせば診療報酬を算定することが可能である. 医師の指導のもとに看護師や准看護師が, 口腔ケアや嚥下指導を行う場合にも摂食機能療法として算定できる. 一般外来で嚥下障害のトリアージを行い, 自身で嚥下指導と訓練を行うには, 知識と技量がある程度必要である. 経験が不十分であれば, 日耳鼻嚥下障害講習会等にて, 嚥下機能評価や嚥下訓練の手技を学ぶことが望ましい. 耳鼻咽喉科一般外来で, 嚥下障害診療が広く行われるようになることを期待したい.
著者
千葉 由美 山田 律子 市村 久美子 戸原 玄 石田 瞭 平野 浩彦 植田 耕一郎 唐帆 健浩 徳永 友里 植松 宏 森田 定雄
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

摂食・嚥下障害は高齢者をはじめ脳血管疾患、変性疾患、がんなどの発症および治療に伴い発生する症状である。2次合併症の誤嚥性肺炎は、全肺炎の半数以上を占め、死因となる。本プロジェクトでは、評価法や管理システムにおける課題を見出し、改善点を示すことを目的に進めてきた。これまで複数病院における誤嚥性肺炎の発生率を見るとともに、病院管理の在り方について管理者と病棟で実態調査などを行った。現在、最終分析を進めている。