著者
守本 倫子 川城 信子 土橋 信明
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.208-213, 2003-06-10
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

小児の声門部異物1例および声門下異物2例を経験したので,文献的考察を含め報告する。1例目は9カ月男児,プラスチック片の声門部異物で,発症当日に摘出された。2例目は1歳1カ月の女児で突然の咳嗽のため他院で仮性クループとして治療を施されたが,発症翌日喘鳴が増悪してきたため当科受診した。エビの尻尾が声門下に嵌頓しているのを認めたため摘出した。3例目は2歳8カ月の女児,ピスタチオナッツの殼による声門下異物を認め摘出したが,喘鳴が続くため喘息の診断のもと7カ月間治療を行った。その後の再精査の結果,殼の一部が残存していたことが判明し,摘出したところ喘鳴は消失した。小児では十分な問診が行えず,診察の協力も得られないため,喉頭異物の発見が遅れることがある。したがって小児の喘鳴,嗄声,咳嗽では異物の可能性を念頭に置き,喉頭ファイバーと頸部単純X線写真による異物の検索は必須である。また,異物摘出後も喘鳴が持続する場合は異物残存の可能性を考慮し,再検索する必要がある。
著者
川城 信子 土橋 信明 荒木 昭夫 古賀 慶次郎 河野 寿夫 伊藤 裕司
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.1056-1061, 1994 (Released:2008-03-19)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

NICU退院時のABRが正常であり,その後難聴と判明した症例10症例について検討した.退院時のABRが正常であったので難聴に気付いた時期が遅れた.難聴は生後10カ月から3歳3カ月で判明した.難聴の程度は90dB以上の高度難聴が6例,低音部の聴力が残存し,高音漸傾型の高度難聴が3例,60dBの高音漸傾型で中等度難聴が1例であった.全例が周産期に重症の呼吸婚環障害があり,全例が挿管し人工呼吸の呼吸管理を行っていた.原因疾患としてPPHNの状態が10例中8例に認められた.これはPPHN25例中の8例,32%に難聴が発生したことになる.人工呼吸管理症例166例中12例,7.2%に難聴の発生があった.ECMOを使用した症例が6例あり,ECMO使用例8例の75%に難聴が発生したことになる.難聴の原因として人工呼吸管理方法に問題があるのかもしれない.また,アミノグリコシド系の薬剤,フロセマイド利尿剤も全例に使用されており,これらの薬剤の使用も否定できない.ABRが正常であっても安心してはならず,重症の呼吸困難症例では聴力についての観察が必要であり,6カ月および1歳前後にはABRによる聴力のスクリーニングが必要であることが判明した.
著者
小川 郁 神崎 仁 小川 茂雄 土橋 信明 井上 泰宏 山本 美奈子 池田 俊也
出版者
日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.1-8, 1991
被引用文献数
7

For the purpose of clarifying the clinical features of perilymphatic fistula, we investigated the clinical symptoms, tests results and therapeutic results in 24 recent patients with perilymphatic fistula. The inducing factors of perilymphatic fistula, such as blowing the nose, landing in an airplane or diving were found in about half of the patients, while, the other patients had no inducing factors. Hearing loss was the most common symptom, which occurred suddenly in most patients. There was no characteristic tinnitus of the perilymphatic fistula. Pop sound and tinnitus expressed as a stream were observed in only 10% of the patients. Audiogram showed profound deafness in many patients and the configuration of audiogram varied from patient to patient. Positional nystagmus was observed in 33.3% of the patients. Fistula sign was also observed in 50% of the patients. Perilymphatic fistula was commonly found in the round window. Hearing was improved in 5 patients (20.8%) postoperatively. Tinnitus was improved in 7 out of 22 patients (31.8%), and blocked sensation in the ear was improved in 5 out of 14 patients (35.7%). Vertigo or disequilibrium was diminished in 18 out of 21 patients (85.8%). From these results, we contemplated the diagnostic and therapeutic problems in perilymphatic fistula.
著者
川城 信子 土橋 信明 荒木 昭夫 古賀 慶次郎 河野 寿夫 伊藤 裕司
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.1056-1061, 1994
被引用文献数
14 1

NICU退院時のABRが正常であり,その後難聴と判明した症例10症例について検討した.退院時のABRが正常であったので難聴に気付いた時期が遅れた.難聴は生後10カ月から3歳3カ月で判明した.難聴の程度は90dB以上の高度難聴が6例,低音部の聴力が残存し,高音漸傾型の高度難聴が3例,60dBの高音漸傾型で中等度難聴が1例であった.<br>全例が周産期に重症の呼吸婚環障害があり,全例が挿管し人工呼吸の呼吸管理を行っていた.原因疾患としてPPHNの状態が10例中8例に認められた.これはPPHN25例中の8例,32%に難聴が発生したことになる.人工呼吸管理症例166例中12例,7.2%に難聴の発生があった.ECMOを使用した症例が6例あり,ECMO使用例8例の75%に難聴が発生したことになる.難聴の原因として人工呼吸管理方法に問題があるのかもしれない.また,アミノグリコシド系の薬剤,フロセマイド利尿剤も全例に使用されており,これらの薬剤の使用も否定できない.ABRが正常であっても安心してはならず,重症の呼吸困難症例では聴力についての観察が必要であり,6カ月および1歳前後にはABRによる聴力のスクリーニングが必要であることが判明した.