著者
坂本 篤史
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.584-596, 2007-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
63
被引用文献数
6 5

本研究は, 現職教師の学習, 特に授業力量の形成要因に関し, 主に2000年以降の米国での研究と日本での研究を用いて検討し, 今後の展望を示した。現職教師の学習を1) 授業経験からの学習, 2) 学習を支える学校内の文脈, 3) 長期的な成長過程, という3つの観点から包括的に捉えた。そして, 教師を“反省的実践家”と見なす視点から、現職教師の学習の中核を授業経験の“省察 (reflection)”に据えた。授業経験からの学習として教職課程の学生や新任教師の研究から, 省察と授業観の関係や, 省察と知識形成の関係が指摘された。学校内の文脈としては教師共同体や授業研究に関する研究から, 教師同士の葛藤を通じた相互作用や, 校内研修としての授業研究を通じた学習や同僚性の形成が示唆された。長期的な成長過程としては, 教師の発達研究や熟達化研究から, 授業実践の個性化が生じること,“適応的熟達者 (adaptive expert)”として発達を遂げることを示した。今後の課題として, 現職教師の個人的な授業観の形成過程に関する研究, 教師同士が学び合う関係の形成に関する実証的研究方法の開発, 日本での教師の学習研究の促進が挙げられた。
著者
坂本 篤史
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.584-596, 2007-12-30
被引用文献数
2

本研究は,現職教師の学習,特に授業力量の形成要因に関し,主に2000年以降の米国での研究と日本での研究を用いて検討し,今後の展望を示した。現職教師の学習を1)授業経験からの学習,2)学習を支える学校内の文脈,3)長期的な成長過程,という3つの観点から包括的に捉えた。そして,教師を"反省的実践家"と見なす視点から、現職教師の学習の中核を授業経験の"省察(reflection)"に据えた。授業経験からの学習として教職課程の学生や新任教師の研究から,省察と授業観の関係や,省察と知識形成の関係が指摘された。学校内の文脈としては教師共同体や授業研究に関する研究から,教師同士の葛藤を通じた相互作用や,校内研修としての授業研究を通じた学習や同僚性の形成が示唆された。長期的な成長過程としては,教師の発達研究や熟達化研究から,授業実践の個性化が生じること,"適応的熟達者(adaptive expert)"として発達を遂げることを示した。今後の課題として,現職教師の個人的な授業観の形成過程に関する研究,教師同士が学び合う関係の形成に関する実証的研究方法の開発,日本での教師の学習研究の促進が挙げられた。
著者
三島知剛 一柳智紀 坂本篤史
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.535-545, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
11

本研究の目的は,教育実習において実習生の指導を担当する教員が,教育実習指導を通した自身の学びや教師としてのその後の力量形成につながるかどうかについての認識を検討することであった.その際,小学校及び中学校教員の認識の違いについても着目した.教育実習指導を経験したことがある小中学校の教師を対象とした質問紙調査(有効回答133名)の結果,(1)全体的に学びや力量形成に対する得点が高く,校種間では小学校教員の方が学びや力量形成を高く認識していること,(2)実習指導における指導形態と学びや力量形成の関連が多く見られ,特に実習生と協働して実習を進めるという指導形態が学びや力量形成と関連していたこと,(3)校種別では,実習指導における指導形態と学びの関連については中学校教員の方が多く,実習指導における指導形態と力量形成の関連については小学校教員の方が多いこと,等が示された.