著者
中川 由紀 野崎 大司 小笠 大起 知名 俊幸 河野 春奈 清水 史孝 磯谷 周二 永田 政義 武藤 智 堀江 重郎
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Supplement, pp.s116, 2021 (Released:2022-05-12)

はじめに: 近年糖尿病性腎症の腎不全の増加に伴い、腎移植を希望する患者も男性が多く占め、夫婦間腎移植も増加している。必然的にドナーの女性の占める割合も多くなる。腎移植における性差によっての予後の違いやリスク因子に性差の関連性について検討したので報告する。対象:2010年1月から2019年12月までに日本で行われた14604症例の生体腎移植にてついて解析した。結果: 血清Cr, eGFRは女性ドナーの方が良かった。男性ドナーは女性ドナーに比べ、Body mass index とBody Surface Area は優位に大きいが、喫煙者が多くなる、高血圧、糖尿病の割合が多く、ハリスククドナーが多かった。ドナーの性別によってのレシピエントの生存率、生着率ともに、男性ドナーの方が女性に比べ優位に予後が良かった。日本の生体腎移植の中で1年後のCrを確認できた7577症例の1年後eGFRが 30mi/min以下のCKDリスク因子について検討した。ドナー年齢、レシピエント年齢、ドナーのBody Surface Area 、ドナーの糖尿病の既往、ドナーの高血圧の既往、Baseline eGFR が有意なリスク因子であった。性差は有意なリスク因子とはならなかった。結語:本邦ではドナーの女性の占める割合が6割以上であった。男性ドナーの方がバックグラウンドは腎機能の予後不良リスク因子を多く占めていたが、移植腎生着率は良好である。移植腎の予後に、体格差が関与している可能性が高い。
著者
堀江 重郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.914-921, 2013 (Released:2014-04-10)
参考文献数
56

男性更年期障害の低テストステロンによる症候であるLOH(late onset hypogonadism syndrome)症候群は2型糖尿病に高頻度に見られる.テストステロンは糖代謝,脂質代謝に関与し,またテストステロン低値は,糖尿病,メタボリック症候群のリスク因子である.テストステロン補充療法は筋肉量を増やし,また耐糖能を改善する.LOH症候群は,男性糖尿病患者の生活の質や健康増進を高める上で重要な疾患である.
著者
熊本 友香 久末 伸一 安田 弥子 井手 久満 知名 俊幸 井上 正浩 斉藤 恵介 磯谷 周治 山口 雷蔵 武藤 智 堀江 重郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.160-165, 2013 (Released:2013-11-18)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

今回,我々は加齢男性性腺機能低下症候群患者(late onset hypogonadism : LOH)に対する補中益気湯の有効性について検討した。帝京大学付属病院泌尿器科メンズヘルス外来を受診し,Aging Male Symptoms(AMS)scale が27点以上で,テストステロン補充療法を施行していない47例に補中益気湯エキス7.5g/日を8週間投与した。投与前および投与8週間後のAMS と各種ホルモン値,各種サイトカインについて検討した。47例中31例で評価が可能であり,補中益気湯8週間の投与によって遊離テストステロンは有意な上昇を示し,ACTH とコルチゾールは有意に低下した。補中益気湯投与後の自覚症状は各種質問紙で変化なかった。本検討により補中益気湯はLOH 症候群患者のホルモン値に影響を与えることが証明された。今後,長期間投与による症状変化の検討を要するものと考えられた。
著者
堀江 重郎
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

Pkd^<-/->マウスにおいて、腎嚢胞形成に関する遺伝子群を包括的に解析する目的で腎嚢胞形成前の胎生14.5日における、野生型およびPkd^<-/->マウスの胎児腎からmRNAを抽出し、約3,000の遺伝子を含むDNAチップで発現遺伝子を検討した。野生型及びPkd^<-/->マウスの胎児腎で3倍以上mRNAの発現が異なった遺伝子は23みられた。Pkd^<-/->マウスで増加していた遺伝子にはPOLD1(DNA polymerase delta catalytic subunit-1)が認められた。Pkd^<-/->マウスで減少していた遺伝子では、apoptosis driving genesとしてのcaspase 1、7、11およびIL-1β、Trancscription factorsであるGATA2、Lbx 1、cell cycle related genesであるjun D1が認められた。以上の結果から腎嚢胞形成には、適切なアポトーシス装置が作動していないこと、細胞周期回転の亢進が関与していることが示唆された。
著者
岡田 弘 上山 裕 武藤 智 堀江 重郎 守殿 貞夫 荒川 創一 藤澤 正人
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1-(1)in vitroで培養した場合の、尿中細菌数定量測定装置を用いた。樹立細菌株の菌数の変化の定量測定には、12時間以上培養を行うことが理想である。1-(2)in vitroで培養した場合の、尿中細菌数定量測定装置を用いた、樹立細菌株の菌数の変化の定量測定は、最短4時間でも、細菌数の変化(10^4/mlから10^5/ml)は検出可能である。以上の結果から、尿中細菌数定量測定装置を用いた尿中細菌の薬剤感受性試験を行う場合の、培養時間は4時間とすることに決定した。この時間設定は、中央検査施設を保有する中等以上の規模の病院で、外来患者が午前中に尿検体を提出し、薬剤感受性試験を行い。この結果を元に治療薬を決定し治療開始するために、待つことのできる妥当な時間設定であると考えられた。2-(1)樹立細菌株の、尿中細菌数定量測定装置を用いた抗菌剤感受性試験結果と従来法(微量液体希釈法)による感受性結果を比較した結果、一致率は約90%と良好であった。2-(2)尿路感染症患者(急性単純性膀胱炎)から分離された細菌を検体として、抗菌剤感受性試験を、尿中細菌数定量測定装置を用いた結果と従来法(微量液体希釈法)を用いた結果を比較検討すると、両者の一致率は約85%であり、良好であった。以上の結果から、尿中細菌数定量測定装置を用いた迅速(4時間)な抗菌剤感受性試験は、臨床応用可能と考えられた。Evidence Based Chemotherapy実現へ向けて、今後は複数菌感染症や増殖時間の遅い菌種の取り扱いに関する検討が必要であると考えられた。