著者
堀田 国元 佐々木 博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.57-62, 2011-01-01 (Released:2012-01-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

栄養価が高くヘルシーな食品として国際的にも受け入れられている納豆(糸引き納豆)は,大昔から明治時代まで,大豆を煮て稲藁苞に入れて保温し,稲藁の付着菌による自然醗酵に依存するという不衛生で不安定な方法でつくられていた.この方法に代わる近代的製造法が確立され,世に普及したのは,明治時代後半に澤村眞博士(東大農芸化学)が納豆は一菌種(Bacillus natto と命名)の働きによってできることを解明したことと,大正時代に半澤洵博士(北大農芸化学科応用菌学講座の開祖)が行なった実学的研究と普及活動によるところが大きい.半澤教授は,納豆菌の純粋培養と衛生的な容器を使用することが納豆を安定してつくるためのキーポイントと見抜き,経木(薄皮)を容器に用いる半澤式改良納豆製造法を確立した.そして,納豆容器改良会を組織し,また雑誌『納豆』を刊行して納豆製造業者を直接・間接に指導し,納豆博士と綽名された.さらに,半澤博士の指導を受けた三浦二郎氏(仙台市)が醗酵温度調節のために通気孔付きの納豆室(文化室と呼ばれた)を考案したことによって,安定した大量納豆製造の道が拓かれた.本稿では,以上の経緯について辿り,近代納豆の実現における応用菌学の貢献をクローズアップする.
著者
土屋 桂 堀田 国元
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学理工学研究報告 (ISSN:09198253)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.21-30, 2004-10-20

The chemical properties of the acidic electrolyzed water were reviewed in their possible role as a bactericidal factor. In connection with this, chemical substance structure, chemical reaction, oxidation-reduction potential (ORP), Nernst's equation, pH, Pourbaix diagram and available chlorine concentration (ACC) necessary for understanding the chemical properties were outlined. Based on the results of the bactericidal tests against Bacillus subtilis, the following concluding remarks on the bactericidal activity of the acidic electrolyzed water were obtained. 1) Bactericidal activity is mainly dependent on available chlorine in the form of HClO and Cl_2. 2) At ordinery pH, H^+ has no direct contribution to the bactericidal activity at ordinary pH except for its effect on the ratio of HClO and ClO^-. 3) ORP has no direct role to the bactericidal activity. 4) Radicals are not contributive as the original basis for the bactericidal effect.
著者
堀田 国元
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.97-105, 2000-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
5 4

0.1%以下の薄い食塩水を陽極と陰極が隔膜で仕切られた電解槽で電気分解すると,陽極側に低pH(2.2~2.7)で有効塩素濃度20~60ppmの電解水を生成する装置が開発されている。強酸性電解水と呼ばれるこの電解水は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や薬剤耐性緑膿菌など耐性菌を含む広範な病原細菌に著効を示す。主たる殺菌基盤は次亜塩素酸で,その殺菌機構にはヒドロキシラジカルが主役的に関与すると考えられている。強酸性電解水は,活性は高いが不安定なために市販されておらず,電解装置を現場に設置してユーザーが必要なときに作製し,新鮮なうちに使用する。すなわち,次亜塩素酸の良さを活かし,欠点を克服した新技術といえる。厚生省が手指や内視鏡の洗浄消毒を認めているほか,環境や血液透析機,さらに褥瘡や創部などの洗浄消毒に使用されている。手荒れが少なく,毒性や濃度も低いので,人にも環境にもやさしいなど利点が多い。タンパク性有機物に弱いが,使用対象を考慮した使い方により洗浄消毒の実効を上げられるので,今後利用が拡大すると思われる。