- 著者
-
庄司 学
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1998
平成11年度には,免震橋の1/10模型を7体製作し,正負交番載荷実験およびハイブリッド地震応答実験によって免震支承〜RC橋脚系の耐震性能について検討した.免震橋では,免震支承のせん断変形に伴うエネルギー吸収性能によって,橋脚に作用する地震力を低減するものである.しかし,免震支承の大変形に伴い,免震支承に作用する水平力が橋脚の降伏耐力を越えると,橋脚の軸方向鉄筋が降伏し,橋脚は塑性化し始め,免震支承から橋脚に塑性化が移行する.このような免震支承から橋脚への塑性化の移行メカニズムを解析的にシュミレートすることは難しいため,ここでは,橋脚の降伏耐力を3通りに変化させ,降伏耐力が低く塑性化しやすい橋脚模型と降伏耐力が高く塑性化しにくい橋脚模型を製作し,これらにHDR型免震支承およびNR型免震支承を設置して,実験的な検討を行った.得られた知見は以下の通りである.1)降伏耐力の低い橋脚にHDR型免震支承を設置した供試体に対して正負交番載荷実験を行った.これより,免震支承の塑性化が進み,免震支承の変形がせん断ひずみ50%程度まで進むと,橋脚の軸方向鉄筋が降伏し始め,橋脚基部の損傷が進展し始めることが示された.一旦,橋脚が塑性化し始めると,橋脚の塑性化は免震支承の塑性化を卓越するレベルまで急激に進み,構造系として大変危険な状態になる.2)1)と同じ供試体に対して,入力地震動として神戸海洋気象台で観測された加速度記録を25%(神戸25%)と50%にしたもの(神戸50%)をそれぞれ作用させ,ハイブリッド地震応答実験を行った.これより,神戸25%を入力した場合には橋脚は塑性化せず,橋脚は,免震支承の1/4程度しか変形しないが,神戸50%を入力し,地震荷重が大きくなり,一旦,橋脚が塑性化し始めると,橋脚の変形は免震支承の変形の1/2程度まで大きくなり,橋脚の塑性化が急激に進むことが示された.