著者
夏目 誠 村田 弘 杉本 寛治 中村 彰夫 松原 和幸 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.266-279, 1988-07-20
被引用文献数
22

私たちは勤労者のストレス度,特に職場生活のそれを数量化するために,下記のストレス調査表を作成した.Holmesが作成したストレス度を測定する,社会的再適応評価尺度の主要項目に,職場生活ストレッサー18項目,および「私の耐えられるストレス度」,「現在の私のストレス度」の2項目を追加した67項目より構成されている.1,630名の勤労者を対象に結婚によるストレス度を50点とし,それを基準に0〜100点の任意数値記入方式により自己評価させた.得られた結果は以下のとおりである.1.各項目について1,630名と性,年齢,職種,職階,勤続年数(以下,各条件とする)別対象者数から得られた点数の平均値を求めた.私たちは,このようにして得た各項目の平均点数をストレス点数と仮称した.65項目のストレス点数を,高い順にランキングした.1位は「配偶者の死」82.7で,「収入の増加」が24.7と最下位であった.27項目が50点以上の得点を示した,次に65項目を,個人,家庭,職場,社会生活ストレッサーの4群に分類した.2.職場適応力をみるために私たちが考案した「私の耐えられるストレス度」は73.7で「現在の私のストレス度」は48.8であった.3.ストレス点数の平均値から,各条件別でt検定により比較検討を行い,差異を求めた.その結果は,30歳代では20歳代に比べ,課長と班長は部長より,点数が高かった.同様に,上記の4群間でそれを求めたところ職場生活ストレッサー群のみ差が認められた.同群において,30,40,50歳代は20歳代よりも,課長と班長は一般職に比し,高得点であった.勤続年数では,21年以上の勤務者は,10年以内の者に比較して点数が高かった.以上の結果や調査表の意義と活用を中心に考案を加えた.
著者
夏目 誠
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.101-108, 2009-02-01
被引用文献数
2

メンタルヘルス不調者が増加しているかどうかについて,1.マクロの視点,2.身近な視点から報告するとともに考察を加えた.結果:1.マクロの視点から1)2004年度の厚生労働省(厚生白書)の患者動向調査によれば,1984〜2002年度までの19年間に「うつ病」は4.5倍と,著明に増えている.次にうつ病と関連が深いとされている自殺者は,この9年間にわたり3万人台と高止まりが続いている.さらには抗うつ薬の販売額は増加している.2)職場の現状では2008年度の社会経済生産性本部の上場企業を中心にした調査によれば,「この3年で心の病が増加した」と答えた上場企業は56.1%にのぼり,年代では30歳代に多いと報告している.2.身近な視点1)筆者が精神科医として相談・診療に関与している企業4社では,いずれもメンタルヘルス不調者が増加している.2)2つの「うつ病やうつ状態をめぐる座談会」の参加者である,2名の精神科医や3名の心療内科医,産業医・心理学者のいずれもメンタルヘルス不調者が増加していると答えていた.以上の2視点からの結果より,増加しているといえる.
著者
夏目 誠 大江 米次郎
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.93-105, 2003-01-31
被引用文献数
2

大阪樟蔭女子大学の学生のストレス度を知るために、447名の学生を対象に、我々が作成した72項目からなる大学生ストレス調査表(ライフイベント法による、大学入試を5点とし、これを基準に0-10点の範囲で、ストレス度を自己評価させた。各項目の平均値を求め、ストレス点数と仮称した)を用いて、調査を行った。 得られた結果と、対照群とした332名の国立大学女子学生と比較検討を行った。 得られた結果は以下の通りである。1.対象者の項目ごとの平均値(ストレス点数と仮称した)を求め、高得点順にランキングをした。第1位は「配偶者の死」で9.3点であり、最下位は「旅行やバケーションをとる」の2.0点であった。基準点である5点以上が56項目と多くに認められた。2.対照群との間に、全体や4群(大学、社会、家族、個人生活群)の間に有意な差を認めなかった。3.項目別で1.0点以上の差違が認められたものについて検討した。1.親や他者の自己評価への過敏性、2.対人関係トラブル、3.経済的なストレス、の3特徴が認められた。 以上の結果について考察を加えた。
著者
久留宮 康浩 寺崎 正起 岡本 恭和 坂本 英至 後藤 康友 浅羽 雄太郎 新宮 優二 夏目 誠治
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.317-322, 2003-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

大腸癌術後の最も危険な合併症の一つである縫合不全について,その病態と治療向上に関連する因子を明らかにする目的で,過去12年間に当院で大腸癌に対し待期および緊急手術を含め切除を行った675例についてretrospectiveに検討した.またイレウスと縫合不全の関連,特に逆行性イレウス管が縫合不全の予防に有用か否かについて検討を加えた.縫合不全は47例(7.0%)にみられた.男性,術前イレウス,下部直腸癌,リンパ節転移陽性は縫合不全の危険因子であった.保存的に治療した34例の縫合不全発症日と経口摂取開始までの日数との間には有意な負の相関があった(p<0.001). 47例中再手術は8例であったが,再手術後の経過は全例良好であった.縫合不全症例47例のうち在院死亡は5例(10.6%)で,縫合不全がない症例(在院死亡, 1.9%)より有意に死亡率が高かった.イレウスで発症した大腸癌に対して逆行性イレウス管を挿入することにより緊急手術を減少させ,かつ縫合不全の発症率も減少させることができた.
著者
夏目 誠
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.101-108, 2009-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

メンタルヘルス不調者が増加しているかどうかについて,1.マクロの視点,2.身近な視点から報告するとともに考察を加えた.結果:1.マクロの視点から1)2004年度の厚生労働省(厚生白書)の患者動向調査によれば,1984〜2002年度までの19年間に「うつ病」は4.5倍と,著明に増えている.次にうつ病と関連が深いとされている自殺者は,この9年間にわたり3万人台と高止まりが続いている.さらには抗うつ薬の販売額は増加している.2)職場の現状では2008年度の社会経済生産性本部の上場企業を中心にした調査によれば,「この3年で心の病が増加した」と答えた上場企業は56.1%にのぼり,年代では30歳代に多いと報告している.2.身近な視点1)筆者が精神科医として相談・診療に関与している企業4社では,いずれもメンタルヘルス不調者が増加している.2)2つの「うつ病やうつ状態をめぐる座談会」の参加者である,2名の精神科医や3名の心療内科医,産業医・心理学者のいずれもメンタルヘルス不調者が増加していると答えていた.以上の2視点からの結果より,増加しているといえる.
著者
夏目 誠 村田 弘 杉本 寛治 中村 彰夫 松原 和幸 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.266-279, 1988 (Released:2009-03-26)
参考文献数
14
被引用文献数
10 8

私たちは勤労者のストレス度,特に職場生活のそれを数量化するために,下記のストレス調査表を作成した.Holmesが作成したストレス度を測定する,社会的再適応評価尺度の主要項目に,職場生活ストレッサー18項目,および「私の耐えられるストレス度」,「現在の私のストレス度」の2項目を追加した67項目より構成されている.1,630名の勤労者を対象に結婚によるストレス度を50点とし,それを基準に0~100点の任意数値記入方式により自己評価させた,得られた結果は以下のとおりである.1. 各項目について1,630名と性,年齢,職種,職階,勤続年数(以下,各条件とする)別対象者数から得られた点数の平均値を求めた.私たちは,このようにして得た各項目の平均点数をストレス点数と仮称した.65項目のストレス点数を,高い順にランキングした. 1位は「配偶者の死」82.7で,「収入の増加」が24.7と最下位であった.27項目が50点以上の得点を示した.次に65項目を,個人,家庭,職場,社会生活ストレッサーの4群に分類した.2. 職場適応力をみるために私たちが考案した「私の耐えられるストレス度」は73.7で「現在の私のストレス度」は48.8であった.3. ストレス点数の平均値から,各条件別でt検定により比較検討を行い,差異を求めた.その結果は, 30歳代では20歳代に比べ,課長と班長は部長より,点数が高かった.同様に,上記の4群間でそれを求めたところ職場生活ストレッサー群のみ差が認められた.同群において, 30, 40, 50歳代は20歳代よりも,課長と班長は一般職に比し,高得点であった.勤続年数では, 21年以上の勤務者は, 10年以内の者に比較して点数が高かった.以上の結果や調査表の意義と活用を中心に考案を加えた.
著者
夏目 誠 太田 義隆 藤本 修 南野 壽重 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-15, 1985-01-20
被引用文献数
8

職場不適応症の病態生理学的特徴を明らかにするため,同症の代表的タイプといえる中核タイプ25名および脱落タイプ14名,計39名に眼球運動,脳波や顔面表情筋筋電図などの精神生理学的指標を用いて,ポリグラフの記録を行い,健康成人16名(対照群)のそれと比較検討するとともに,臨床的特徴との関連についても考察を加えた.得られた結果は以下のとおりである.1.職場不適応症の中核および脱落タイプは,対照群に比べ,安静時に低振幅急速眼球運動(r)の出現回数は少なく,シュウ眉筋筋放電振幅も低い値を示した.2.暗算刺激負荷により,中核タイプは安静時よりrの出現回数が増加している例数が,対照群に比べ多かった.シュウ眉筋においても同様の傾向を示した.一方,脱落タイプでは,両指標ともほとんど変化を示さなかった.3.暗算刺激終了後も,中核タイプは安静時より,rの出現回数の増加と両表情筋筋放電の高振幅が持続しているのに対し,脱落タイプでは,これらの特徴が認められなかった.以上の結果と同症両タイプの臨床的特徴との関連について,考察を加えるとともに,両タイプの発症機制解明に精神生理学的検索の有用性を明らかにした.
著者
夏目 誠 太田 義隆 古我 貴史 南野 寿重 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.160-169, 1986-05-20
被引用文献数
7

職場不適応症の対応として,私たちが考案した治療的対応システム(後述)の効果や産業医の役割を知るために,直接関与した96名の職場不適応症者を対象に調査を行った.対象は,最近19年間に精神科外来診療を行っている大阪府立公衆衛生研究所精神衛生部外来(以下,当所診療所)を受診した54名と,私たちが精神衛生面の産業医をしている,社員数15,000名を擁する,ある企業の職場内診療所を過去14年間に受診した42名である.タイプ別内訳は,中核群が34名と最も多く,ついで脱落群26名,その他群15名,一過性反応群は13名で,専門職不適応群は8名に認められた.治療的対応システムの内容を中心にして,代表的な2症例を呈示した.1.私たちは,職場不適応症の治療的対応システムを考案した.その内容は,I.診療と諸検査,II.本人や家族へのカウンセリング,III.復職へのリハビリテーション,IV.職場関係者への治療的助言からなっている.2.治療的対応システムにより,96名中81名の職場不適応症者は,就業するようになった.3. 96名のうち,職場関係者への治療的助言が必要であった者は59名で,そのうち助言が受容された者(受容群)は,49名であった.拒否された10名(拒否群)は,いずれも当所診療所受診者であった.受容群のほうが,拒否群よりも職場によく適応していた.治療的助言として,治療的配置転換が27名と最も多く,ついで職務の軽減,指導が18名で,治療的仮出勤が13名であった.4.上記の治療的対応システムを活用するためには,精神衛生面を担当する産業医の役割が大であると考えた.
著者
夏目 誠
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.101-109, 2005-02-01

平成2年から15年までに受診した企業におけるリストラクチャリングが発症要因になった34名(男性23名)のストレス関連疾患者について検討した. 得られた結果は以下のとおりである. 1. 年代は50歳代が13名と最も多く, 次いで30歳代の9名, 40歳代の8名と続く. 2. 発症要因 1)職場要因:最も多かったのがプロジエクトチームなどによる新規事業開発を担当させられた13名であり, 次いで部課や営業所, 工場などの統廃合が9名にみられた. 人員削減は30名と多くに認められた. 2)個人要因:性格傾向では几帳面, 生真面目で融通性が乏しい人が17名と半数にみられ, エネルギーがあり, 頑張るタイプと受け身で消極的な人がおのおの8名であった 3. 診断と治療, 予後 1)診断では適応障害が22名で, うつ病が7名, 心身症が5名であった. 2)予後は軽快が16名と最も多く, 良好が13名, 不変が5名であった. 4. 職場要因を中心に発症メカニズムから以下の2タイプを考えた. 1つはプロジェクトチームなどによる新規事業担当者で, 几帳面, 生真面目で融通性の乏しい性格特徴に発症するタイプであり, 他は組織統廃合ストレスと受け身で消極的なタイプによるものである. 上記の結果について, 臨床的観点から考察を加えた.