- 著者
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多賀 厳太郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.4, pp.349-356, 2011-12-20 (Released:2017-07-27)
- 被引用文献数
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2
胎児期から乳児期の脳の発達に焦点を当て,脳のマクロな構造とネットワーク形成に関する解剖学的変化,脳が生成する自発活動と刺激誘発活動の変化,脳の機能的活動の変化について,近年の脳科学研究でわかってきた知見を俯瞰する。それを基に,乳児期の行動発達の動的な変化を理解するための,脳の発達に関する3つの基本原理を提案する。(1)胎児期の脳では,まず自発活動が生成され,自己組織的に神経ネットワークが形成された後で,外界からの刺激によって誘発される活動が生じ,さらに神経ネットワークが変化する。(2)脳の機能的活動は,特定の機能に関連しない一般的な活動を生じた後で,特定の機能発現に専門化した特殊な活動に分化する。(3)脳ではリアルタイムから長期的な時間にわたる変化まで,多重な時間スケールでの活動の変化が生じるが,異なる時間スケールの間の相互作用機構を通じて,構造と機能とが共に発達する。このように脳の発達は極めて動的な変化であり,段階的に見える行動の発達も,脳,身体,環境の相互作用から生じる創発的な過程であると考えられる。