著者
谷口 綾 大久保 功子 齋藤 真希 廣山 奈津子 小田柿 ふみ 三隅 順子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.94-102, 2014-03-20 (Released:2014-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

目的:帝王切開で出産した女性の,妊娠中から産後1か月までの帝王切開に対する心理的プロセスとその影響要因を明らかにし,看護支援への示唆を得ることを目的とした.方法:グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い,帝王切開後の女性18名に半構造化面接を行って分析し理論化を試みた.結果:女性は帝王切開に対する〈心づもり〉と〈意味づけ〉のプロセスをたどることで,帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕に至る.それらは〈帝王切開の可能性の認識〉をした時点から始まり,〈手術への恐怖〉や〈自然分娩への未練〉は阻害要因,医療者や経験者とのやりとりは促進要因となる.〈意味づけ〉は分娩後にも続く.緊急帝王切開では〈心づもり〉や〈意味づけ〉ができないまま手術に臨む場合があるが,〔納得〕するためには,分娩後に〈意味づけ〉が行われる.考察:帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕の理論を軸に,〈心づもり〉と〈意味づけ〉を促すような具体的な看護支援が示唆された.
著者
堀内 成子 近藤 潤子 大川 章子 石井 ひとみ 大久保 功子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.42-53, 1988-12-25 (Released:2010-11-17)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

本研究は, 妊娠の進行に伴う睡眠の変化を明らかにするために, 妊婦の睡眠の主観的評価を分析することを目的に行った。調査票は「入眠および睡眠中の関連因子群」,「起床時の関連因子群」,「睡眠全体の満足度」,「睡眠に関する影響因子」を含めて構成し、289例の妊婦から有効回答を得た。その結果, 妊娠の進行に伴う変化では, 初期には非妊期に比べて途中覚醒が多く,「眠い」という睡眠に対する欲求が強く現れていた。中期になると, 初期に比べて睡眠に対する欲求は落ち着きを示していた。末期になると, 寝つきが悪くなる・眠りが浅くなる・時間が不足する・途中覚醒が多くなるという状態から, 睡眠全体に不満感が高まるという関係が示された。初産婦では, 妊娠初期に夜中の途中覚醒に対して「いやだ」という否定的な回答が多く, 妊娠が進行するにつれて, その比率は減少していた。影響因子として, 妊娠に伴う身体変化のほかに, 家庭のサポートが認められた。
著者
堀内 成子 近藤 潤子 小山 真理子 木戸 ひとみ 大久保 功子 山本 卓二 岩澤 和子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.8-17, 1990
被引用文献数
1 5

本研究は, 妊婦および褥婦の睡眠の主観的評価と睡眠ポリグラフ所見との間の関連性を明らかにすること, および妊婦各期と産褥早期の睡眠推移を明らかにすることを目的に終夜睡眠を分析した.<BR>妊婦11週~37週までの正常妊婦7例と, 産褥1週~7週までの正常褥婦4例を対象とし, 終夜睡眠をポリグラフ装置で連続3夜測定した. 睡眠段階はRechtshaffen & Kalesの判定基準を用いた. 対照群として健康な非妊期の女性4例を選び, 測定した.<BR>その結果, 主観的な睡眠深度経過では, 前半単相性パターンと前半多相性パターンとに分かれ, ポリグラフ所見との間に関係が認められた. 睡眠パラメータでは, 妊婦群が非妊婦群に比べて睡眠率が低く, 特に末期群では眠りが浅くなっていた. 産褥早期には, 妊娠末期よりさらに睡眠率が低かったが, 妊婦末期に比べて%S4は増加の傾向が認められた.
著者
大久保 功子 玉井 真理子 麻原 きよみ 近藤 浩子 百瀬 由美子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-11, 2003-06-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

当事者の視点から遺伝子診断による選択的中絶の意味を記述し, 看護への示唆を得ることを目的に, Cohenらの解釈学的現象学を用い, 同意の得られた場合に限り遺伝病の子どもを持つ夫婦3組の出生前遺伝子診断の参加観察と, 1名の研究参加者に3回の深いインタビューからデータを得た. 浮かび上がった主テーマ「つながりの破壊」と「障害者の存在に対する相反する価値との直面」を基に物語を再構成した.出生前遺伝子診断では遺伝病という衝撃が生んだ,夫婦の心のすれ違いと障害の差異化によって破壊された人とのつながりの中で, 家族の中での犯人探し, 自己疎外, 障害者の存在の肯定と否定を招き, 選択的中絶によって相容れない価値観に引き裂かれ, 内なる優生思想と出会いつつ, あらたなつながりを希求することとなっていた.よって看護には家族と社会とクライエントとのつながりに関心を払い,診療科を超えた継続的ケアが必要とされていることが示唆された.
著者
大久保 功子 百瀬 由美子 玉井 真理子 麻原 きよみ 湯本 敦子
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

看護への示唆を得るためCohenらの解釈学的現象学を用い、当事者の視点から遺伝子診断による選択的中絶の意味を記述した。浮かび上がった主テーマである「つながりの破壊と障害者の存在に対する相反する価値との直面」をもとに物語を再構成した。I.知るということ、「1.夫婦の心のすれちがい、2.不幸の上にもっと不幸:障害の差異化、3.家族の中での犯人探し、4.自己疎外」II.選ぶということ、「1.身ごもった子どもの存在を宙吊りにしておく辛さ、2.障害者の存在の肯定と否定に引き裂かれて、3.中絶した子どもを忘れてしまうことの罪悪感と、亡くしたことを悲しむことへの嫌悪感というジレンマ、4.内なる優生思想との遭遇」III.つながりへの希求、「1.夫婦と家族の絆、2.必要なうそ、3.子どもに受け継がれ再現される苦悩への懸念」出生前遺伝子診断では、遺伝病という衝撃が生んだ夫婦の心のすれ違いと、障害の差異化によって人とのつながりが破壊され、家族の中での犯人探し、自己疎外、障害者の存在の肯定と否定とに直面化を招いた。選択的中絶によって自分の中での合い入れない価値観に自らが引き裂かれ、内なる優生思想が自分や家族の中に露呈するのを目の当たりにしていた。どのように生きるかを選ぶことは当時者の実存的問題であり、医療が決めることではない。しかし未来の中に苦悩が再現される可能性が出生前遺伝診断の特徴であり、その人の生き方ならびに人とのつながりを診断が破壊、支配もしくは介入しかねない危険性をはらんでいる。生きていくのを支えていたのもまた、人とのつながりでありであった。医療者自身が障害と選択的中絶に対する価値観を問われずにはおかないが、同時に中立的立場と判断の止揚を求められている。世代を超えた継続的なケアと、人と人とのつながりへの細心の配慮と、看護者自身がその人とのあらたなつながりとなることが必要とされていることが示唆された。
著者
大久保 功子
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13413430)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.85-93, 1996
被引用文献数
4

This paper describes the lived experience of the four couples and two mothers who had their first baby. The research used a qualitative method in which in-depth interviews based on a phenomeno-logical approach. The first theme emerged was that their daily life began to revolve around the existence of their baby. They have responsed to thier baby. There were distinctions between father and mother. Mother sacrificed herself to live her own baby. Consequently she might have the conflict between living for the baby and for herself. On the other hand, father had inferiority complex toward breast feeding, and realized limited ability for the baby. Instead, father had to search for his ability for the baby on his own will. The second theme was how to understand their baby. It was started from having met the part of unknown baby, so they wanted to know baby's mind. Three patterns were identified; 'reading the baby's mind (Sassuru)', 'reading the context of the baby's on time and space that parents have coexisted with their baby', and 'putting themselves in the baby's place'. Parents were encouraged by themselves as founding out thier own baby's as a human being, growth and development, and possibility. It brought about a pleasure in discovery such things.