著者
尾野 大気 三松 謙司 川崎 篤史 加納 久雄 久保井久 洋一 荒牧 修 大井田 尚継
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.226-229, 2008-08-01 (Released:2011-11-28)
参考文献数
26
被引用文献数
9 2

平成 13 年 10 月から平成 19 年 9 月までの 6 年間に,当院で経験した経肛門的直腸異物症例 5 例と過去10 年間の本邦報告 27 例を対象とし,臨床的特徴と摘出方法について検討した.40 代から 50 代男性の性的倒錯によるものが多く,主訴は異物摘出困難が多かった.診断には単純腹部 XP と骨盤 CT が有効であった.当院症例における摘出方法は,経肛門的摘出が 3 例,開腹手術が 1 例,開腹下経肛門的摘出が 1 例で,麻酔法は腰椎麻酔のみが 1 例,全身麻酔のみが 2 例,腰椎麻酔・全身麻酔併用 1 例,無麻酔 1 例であった.異物が大きいほど肛門括約筋を弛緩させるために麻酔を必要とした.経肛門的直腸異物は,腹部単純 XP や骨盤 CT にて異物の大きさ,種類,挿入位置を正確に把握し,麻酔の有無や開腹の適応を決定する必要があると考えられた.
著者
川崎 篤史 三松 謙司 大井田 尚継 久保井 洋一 加納 久雄 天野 定雄
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.249-252, 2006-04-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1

鼠径部に発生したガングリオンの1例を経験したので報告する。症例は16歳の女性。左下腹部から左大腿部前面の痛みを主訴に来院した。触診上, 左鼠径部に圧痛を伴う膨隆を認め, 画像診断で大腿ヘルニアの疑いで緊急手術となった。手術は恥骨筋内に径5cm大の嚢胞性病変を認め切除摘出した。病理組織学的所見は嚢胞壁の線維性肥厚を認め, 内容物は無色透明の粘液様物質でガングリオンの診断であった。経過は良好で再発は認めていない。鼠径部腫瘤の鑑別診断として, 発生頻度は低いものの, ガングリオンも念頭に置き適切な診断・治療をする必要があると考えられた。
著者
斎野 容子 三松 謙司 川崎 篤史 木田 和利 吹野 信忠 加納 久雄 佐伯 郁子 和田 裕子 荒居 典子 大井田 尚継
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.945-949, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
14

症例は70歳、男性。2007年11月、直腸穿孔及び腹膜炎にてハルトマン手術を施行、2010年8月、腸閉塞の診断で癒着剥離術及び小腸部分切除術を施行した。2010年10月、腸閉塞にて入院し、イレウス解除術及び小腸部分切除術を施行したが、術後3日目に小腸吻合部縫合不全を認め、術後7日目に創部Surgical site infectionによる腹壁創部〓開を認めた。創傷治癒促進と低栄養改善を目的としてNSTが介入し、中心静脈栄養、経腸栄養、食事の併用により適切な栄養管理を行うとともに、CaHMB・L-アルギニン・L-グルタミン配合飲料(アバンド™)1日1袋28日間の経口投与を行った。アバンド™投与後、腹壁創部は順調に改善して投与後28日目にはほぼ上皮化し、縫合不全は投与後20日目に閉鎖し、第67病日に退院となった。低栄養状態を改善した上でアバンド™を投与することは創部〓開や縫合不全部の創傷治癒促進に有効であると考えられた。
著者
木田 和利 三松 謙司 吹野 信忠 川崎 篤史 久保井 洋一 加納 久雄 大井田 尚継
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.229-233, 2010 (Released:2011-04-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は73歳,男性.6カ月前より糖尿病性腎症による慢性腎不全のために血液透析が導入されていた.入院7日前より腹痛,発熱を認めていた.症状が改善しないために救急搬送された.初診時,38°Cの高熱を認め,腹部所見では腹部全体に圧痛と筋性防御を認めた.腹部CT検査では,肝表面に腹水とfree airを認めた.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で,同日緊急手術を施行した.術中所見では,腹腔内は膿性腹水と腸内容を認め,上行結腸が約20cmにわたり完全壊死し,穿孔していた.また,Treitz靭帯から肛門側約90cmの回腸の漿膜が約10cm分節的に黒変し,血流障害が認められた.上腸間膜動脈,右結腸動脈,回腸動脈の拍動は触知されたため,非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI)と診断し,右半結腸切除,回腸部分切除術を施行した.血液透析患者では,腸管虚血性疾患の発症リスクが高いため,腹痛を主訴とする患者の診断と対応には十分注意する必要がある.
著者
朴 英智 大井田 尚継 森 健一郎 永田 靖彦 藤崎 滋 秦 怜志 三宅 洋 富田 凉一 天野 定雄 福澤 正洋
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.637-640, 1999-08-30
被引用文献数
1

十二指腸乳頭部腺腫は比較的稀な疾患である。今回われわれは本疾患に対し乳頭全切除+乳頭形成術を施行し良好な結果を得た1例を経験したので報告する。症例は62歳, 男性。検診にて肝機能障害を指摘されるも放置していたが, 徐々に黄疸出現し当院内科入院となる。十二指腸内視鏡所見で十二指腸乳頭部に径2.5cm大の表面平滑で結節状の腫瘤を認め, 生検にてAdenomaと診断された。内視鏡的切除は困難と判断され手術目的にて当科紹介となり手術施行した。手術は術中迅速病理でAdenomaと診断され, 断端は腫瘍細胞 (-) であることを確認し, 乳頭全切除+乳頭形成術を施行した。経過良好で術後3週目に退院した。十二指腸乳頭腺腫は腺腫の再発, 腺腫内癌や癌の発生などが議論されているが, 腺腫の遺残がなく乳頭全切除が可能ならば乳頭全切除+乳頭形成術が十二指腸乳頭腺腫に対する術式の第一選択と考えられる。
著者
三松 謙司 大井田 尚継 西尾 知 堀井 有尚 野中 倫明 越永 従道 宗像 敬明 富田 涼一 天野 定雄 福澤 正洋
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1023-1028, 1998
被引用文献数
13 14

目的 : 1971年1月から1996年12月までの25年間に経験した小児腸重積症713例について年齢, 性差, 症状, 診断, 治療方法, そして重積型式, 重積原因疾患, 再発に関して臨床的に検討した.結果 : 年齢は平均15.2カ月で男児に多く, 症状では, 腹痛, 嘔吐, 血便の三主徴が半数に認められた.非観血的整復率は平均61.0%であったが, 発症から12時間以内では平均83.7%と高く, 早期診断, 早期治療が重要であると思われた.観血的整復術施行例において, Hutchinson法のみ施行した症例が71.2%, 腸管切除例は11.5%であった.重積型式は, 回腸結腸型, 回腸回腸結腸型が多く, また重積原因として器質性疾患によるものは2.4%と少なく, 器質性疾患のうちではMeckel憩室が10例と最も多かった.結論 : 再発率は観血的整復後の4.0%に比べ, 非観血的整復後は10.0%であった.このことは, 高圧浣腸による不完全整復と器質性疾患が関与している可能性が考えられた.