著者
大村 知子 山内 幸恵 平林 優子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.393-402, 2008-06-15

人体の動作により衣服にはひきつれやだぶつきといった着くずれが生じる.本研究では,姿勢変化の過程における人体とパンツの軌跡を三次元動作解析システムにより捉え,動作により人体とパンツがずれるプロセスの解明を試みた.また,ずれの量や方向についてパンツ別,被験者別,動作別に比較を行った.主な結果は次のとおりである.(1)ずれの量は開口部で大きく,ずれは皮膚の伸展の大きい部位に向かって生じた.(2)ずれはアンクルラインやニーラインなど衣服にゆとりが多い部位で先に生じ、それからウエストラインなど衣服のゆとりが少ない部位で徐々に生じる傾向にあった.また,ずれは水平方向や横方向へ先に生じ,その後に垂直方向に生じる傾向にあった.(3)股上が浅く,ゆとりの大きいパンツは,後ウエストラインにおいて下方へのずれの量が大きかった.立位から蹲踞への動作では立位から椅座への動作よりウエストラインにおいて後方へのずれの量が大きかった.また,ずれの量や方向は被験者の着衣の仕方や好みに影響を受けた.
著者
大村 知子 山内 幸恵 平林 優子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.39-44, 2009-01-15

We asked 58 young women to select their preferred pant size after trying on pants of various sizes. The wearers and third party observers assessed how well the pants fit at different parts of the body. The results were as follows: 1. Fifty percent of the wearers selected a smaller size than their actual size as their preferred size. 2. As to size selection, wearers whose waists were larger than that of the standard size preferred a good fit at the waist. 3. Regarding the degree of fit in each region, the observers tended to assess the degree of fit over the entire body, while there was no correlation between the degree of fit at the waist and that at the hip among the wearers.
著者
大村 知子 山内 幸恵 平林 優子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.393-402, 2008 (Released:2010-07-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

人体の動作により衣服にはひきつれやだぶつきといった着くずれが生じる.本研究では,姿勢変化の過程における人体とパンツの軌跡を三次元動作解析システムにより捉え,動作により人体とパンツがずれるプロセスの解明を試みた.また,ずれの量や方向についてパンツ別,被験者別,動作別に比較を行った.主な結果は次のとおりである.(1)ずれの量は開口部で大きく,ずれは皮膚の伸展の大きい部位に向かって生じた.(2)ずれはアンクルラインやニーラインなど衣服にゆとりが多い部位で先に生じ、それからウエストラインなど衣服のゆとりが少ない部位で徐々に生じる傾向にあった.また,ずれは水平方向や横方向へ先に生じ,その後に垂直方向に生じる傾向にあった.(3)股上が浅く,ゆとりの大きいパンツは,後ウエストラインにおいて下方へのずれの量が大きかった.立位から蹲踞への動作では立位から椅座への動作よりウエストラインにおいて後方へのずれの量が大きかった.また,ずれの量や方向は被験者の着衣の仕方や好みに影響を受けた.
著者
森 由紀 大村 知子 大森 敏江 木岡 悦子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.949-958, 1999-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

携行品運搬における背負い方式の有用性に関する研究についてすでに報告した。本報では背負い方式が一般的である小学生の学習用具携行に関する実態調査および実験を行い次のような知見を得た.(1) 通学用鞄のタイプに関して, 個人の自由に任せている学校があったが, 1年生の大部分はランドセルを使用していた.6年生が使用している通学用鞄のタイプは, ランドセルが70。0%, リュックサックが20.4%, その他が9。6%で, 高学年ほどランドセルの使用が減少し多様化する傾向がみられ, ランドセルの体格への不適合もその一因であると推察された.(2) 教師はランドセルの使用について, 両手をあけることの安全性や丈夫であるなどの長所を挙げる一方で, 1年生には重すぎる, 高学年には窮屈で格好が悪いなどの問題点を指摘していた.(3) 通学用鞄に学習用具重量を加えた携行総重量の体重比は, 1年生では平均14.8%, 4年生では 11.2%, 6年生では9.0%であり, 低学年ほど体重の割に重いものを携行していた.学習用具の内容は教科書, ノート, 筆記用具の他, 副教材, 補助教材などであった.(4) 低学年児童を被検者とするランドセル背負い実験では, 荷重圧が肩中央部および腰椎部に大きく加わり, 学習用具重量が増すほど荷重圧も大となった.特に, 肩中央部において静立時の荷重圧に対する歩行時の最大荷重圧の比率が大となる傾向がみられた.(5) 体型によって荷重圧の分布が異なり, 背面が平らな者は肩中央部への荷重圧が大きく, 腰部後面が平らな者は腰椎部への荷重圧が大きいという特徴がみられた.(6) ランドセル背負い時の姿勢観察の結果, 静立時, 歩行時いずれにおいても, 学習用具重量が増すほど前傾姿勢をとることが認められた.以上のことから, 低学年児童にとっては重すぎる負荷を軽減する方策を, 高学年児童には体格に適合する携行方法を, 中身の問題とともにそれぞれ検討する必要があると考えられる.
著者
渡邊 敬子 中井 梨恵 岡村 政明 大村 知子 矢井田 修
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.111-121, 2009-02-15
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究では,健康な高齢女性の衣服の着脱時の困難について,その原因を分析することとその手法を開発することを目的とした.高齢女性が構造の異なる3種類の上衣を着脱する動作を3次元動作分析で捉え,動作時間の分析を行い,官能評価の結果と合わせて検討を行った.今回の研究で得られた結果は次のようである.(1)官能評価の結果から,高齢女性では38.5%が原型に近い上衣Aを着にくいと評価しており,健常者であっても困難を感じていることが明らかとなった.これに対して,背幅を広くすることや袖下に菱形のゆとりを入れることで上衣Aの着にくさが改善されると考えられた.(2)着衣の所要時間を算出すると,上衣Cがもっとも短く,次いでB,Aの順であった.この順序は官能評価の結果と一致した.また,着衣動作の所要時間は動作が複雑かどうかを示す上肢の軌跡長とも相関がみられた.動作の所要時間は動作時間分析として作業効率などを示す指標などに用いられているが,着脱の容易さを示す指標としても利用できると考えられた.さらに,内容ごとに区切って所要時間を算出し,構造の異なる衣服間で比較することによって,どのような動作で着衣の問題が生じるのかを明らかにすることができた.これは動作全体の時間の比較ではあいまいであった着脱の問題点を明らかにする新しい手法となるといえる.(3)着衣時のどのような動作で問題が生じているのかを明らかにするため,着衣動作を内容で区切り,所要時間を算出した.その結果,上衣Bの'フェーズ3:後の腕を通すための準備時間'がAに比べて有意に短かった.さらに腕の軌跡の観察から,原型に近い上衣Aではフェーズ3の軌跡が複雑になっているのに対し,背幅の広がるBではスムースな動きであることが分かった.このことから,Bでは背中のプリーツが広がるため,後に通す袖ぐりを前方に引っ張ることができて手首が袖ぐりに届きやすい.これに対して,Aは背幅の寸法が比較的狭く一定であるため,後から通す袖ぐりに手首が届きにくいと考えられた.背幅が狭い場合に手首を袖ぐりに入れることが困難であることが高齢女性の着衣の問題を生じているのではないかと推察された.(4)高齢女性では上衣Cの'フェーズ4:後の袖に腕を通す時間'が,A,Bに比べ有意に短かった.通常の袖幅では上腕最大囲付近で引っかかりが生じるが,袖下にマチのようなゆとりを入れることで単に袖幅が広くなり腕を袖に通しやすくなると推察された.A,Bともに高齢者や障害者に有効な構造であるといわれているが,その構造がもたらす効果に差があることが明らかになった.一方,高齢女性の中でも上衣間の着衣動作の所要時間に差がない被験者もいる他,年齢と着衣の所要時間にも相関がみられなかったことから着衣のためのゆとりの必要性には個人差があるといえた.このことに関しては,被験者の身体能力との関連から検討する.
著者
布施谷 節子 大村 知子
出版者
和洋女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

1)女子大生21名を被験者にして、昨年に引き続き浴衣の着崩れ実験を行った。これまでは一連の動作の結果としての着崩れを把握したが、今年度は動作の違いによる着崩れの特性を明らかにした。さらに対丈と二部式の着物を実験に加え、お端折の有用性を把握した。2)女子大生398名を対象に中・高の学習指導要領の新旧による製作実習教材の違いなどをアンケート調査した.その結果教材に差は見られず、いずれもエプロンが主流であった。製作品を活用しない者が多く、高校では約3割が実習未経験であった。高校では浴衣の製作が約15%みられた。さらなる教材開発の必要性を実感した。3)大学1年生31名を対象にミシンの操作実験を行った。その結果、上糸かけは正しくできた者は皆無、下糸巻きは約半数、下糸セットは約8割、下糸の引き出しは約8割の達成率だった。ミシン操作の指導を小・中・高校と工夫する必要性が示唆された。4)家庭科教育の中での福祉教育について、大学生37名を疑似障害者として着脱動作を行わせた。録画資料から身体上の6点の動作軌跡を検討した。その結果、着脱を行わせることが、障害者を理解させるためのシュミュレーションとして有用であることが明らかになった。5)本科研費を得て、伝統文化を理解させるための教材として浴衣を取り上げて、様々な角度から検討を行ってきた.授業での補助教材の開発や、指導法などを改善し、中学・高校での実習に伴う問題点を明らかにできた。また、浴衣の染色業者に提案し、中・高生が取り組みやすい浴衣教材が開発され、教育現場で使用され始めた。また、三次元動作解析システムを購入できたことから、浴衣以外の靴、ブラジヤー、パンツなどの着脱や動作性の研究手段として有効に活用できるようになり、研究の範囲が広がった。
著者
大村 知子 木岡 悦子 森 由紀
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.539-549, 1997

阪神大震災の被災者の衣生活行動の経時変化を追跡的に調査することによって, 実態の記録と災害など非常時の着装行動に対する危機管理に関する基礎資料を得て, 衣生活への備え方を探求することを目的として, 被災後の着装行動に関する考察を試みた.<BR>資料は, アンケート形式による質問紙調査を 1995年 7 月に女性被災者 204 名を対象に, さらに追跡調査を第 1 回の調査対象者から無作為に 104 名を抽出し, 1996 年 1 月に実施して得た.<BR>主な結果は以下に示すとおりであった.<BR>(1) 避難時の服装は, 被災程度の大きい地域ほどねまきなど発生時のままで, しかも裸足で避難した例が多く, 着がえてから避難した者は全体の約 3 分の 1 だった. 寒中の早朝に, 着の身着のまま, コートあるいはセーターなどを加えただけで, 靴も履かずに避難したことが明らかにされた.<BR>(2) 履物は, 当日は被害が大きいほど, 裸足やスリッパの利用がみられるなど, 地震発生時間と日本の居住様式による影響が認められた.その後の経時変化は, ライフラインの復旧の進展との関わりが顕著で, 被災の1カ月後は運動靴が過半数であったのに対し, 6 カ月以降は運動靴は 20% 以下となって, 歩きやすい靴に, 次いでヒールの高いおしゃれの要素のある靴が増した.<BR>(3) 自宅の庭・車中などで着がえたなど, 非常時の着脱行動の特徴がみられ, 1 週間以上着がえられなかった例が 5.3% あった. 衣生活に関わる救援活動システムや情報伝達方法に, 多くの課題があることがわかった.<BR>(4) 寝る時の服装の経時変化では, 寝衣を着た者は被災当日の夜が前夜の 28% (47 人), その後も日常着のままが多く, 1カ月後でも寝衣の着用は 53.9% で, 6カ月後にようやく震災前に回復した. 年齢層や性別による違いがみられ, 男性の高齢者の回復が最も遅かった.<BR>(5) 寝具は, 居住環境が劣る被災者ほど, 1 カ月以上も毛布のみで過ごした者が多く, 心身の健康を損なう二次災害の 1 要因になったといえる.<BR>(6) 6カ月以後の衣生活意識では, 75% がおしゃれに関心を持ち, 63.7% の被災者が着たい服装色が直後とは変化し, 1 年後では明るい色, 暖かい色・鮮やかな色を着たい者が多かった. しかし, 灰色など目立たない色を選ぶようになった者もあり, 装いの心が復活する傾向が強い反面, 震災によって着装意識が変化した者もみられた.<BR>以上の結果から, 緊急時への危機管理に関しては, 日常生活の延長上に非日常の生活があることを認識することが重要であり, わが国においては都市型の衣生活に対する危機管理を検討する必要性がわかった.サバイバルスキルの教育, 危機管理の教育の必要性とこられの早期実践の重要性を提言した.
著者
木岡 悦子 森 由紀 大森 敏江 大村 知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.647-656, 2001-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

中学生の学習用具携行の実態に基づいて, 通学用鞄の携行方法による負荷を実験観察により検討した.被検者は中学生6名, 携行重量を6kgとし, 携行の方法は背負い式と肩掛け式とし, 肩掛けの仕方を斜めにクロスする方法と片側におろす二つの方法に分けた.負荷実験の内容は通学用鞄を掛けた状態での支持基底面の重心動揺測定, 直立時および歩行時の姿勢変異の観察, 肩中央部にかかる荷重圧の測定である.結果は以下の通りであった.(1) 鞄を片側に掛ける方式では, その対照として測定した無所持の場合と比較して, 支持基底面の重心動揺の単位面積軌跡長が小さいという結果が得られた.被検者自身が姿勢のくずれを細かく制御しにくい状態であると解された.(2) 支持基底面の重心動揺軌跡やその外郭内の面積等には被検者固有のパターンが発現し, 姿勢制御機能に個人差のあることが認められた.(3) 通学用鞄の携行方法別姿勢をシルエッター写真から観察した結果, 肩掛け式では鞄を提げた側と反対の方向への傾きが大きく, 無所持の場合と比較して有意に差のあることが認められた.片側式の場合では全身を傾斜させており, 斜め式では胴部でくねらせた状態での傾きが大であることが認められた.背負い式では前傾姿勢がみられ, いずれも鞄装着による負荷を姿勢の傾きによってバランスさせていることがわかった.(4) 肩中央部に加わる荷重圧は片側式の場合が最も大で, 直立時の平均値は53.0kPa, 歩行時最大値が102.4kPaであった.背負い式の場合が最も小さく, 各携行方法問に有意な差がみられた.(5) 実験終了後の着用感では, 片側式において肩への痛み・重量感や歩きにくさなどの負荷を感じたのに対し, 背負い式が最も負荷を感じなかったという結果が得られ, 実験結果と一致した.通学用鞄の携行に関する問題を, 中学生の心身をまもり育てるための類被服の観点からとらえ, 解決への具体的な方策をすすめていくべきであると考える.
著者
大村 知子 山内 幸恵
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.96, 2006 (Released:2008-02-28)

【目的】ローライズパンツは、最近若者を中心に利用されているが、その股上の浅さゆえに座位への動作により後ベルトが下方にずれ、下着が見えてしまうという問題がある。本研究では、パンツの股上丈、身体寸法、姿勢の違いによる適合性や動作適応性への影響などを着用実験により明らかにする目的で考察を試みた。【方法】実験時期は2005年10月から11月、被験者は女子大学生20名。実験衣はサイズが9ARで股上丈が25cm・23cm・21cm・19cm・17cmの5種をシーチングで試作。官能評価は立位・椅座・蹲踞・床座姿勢時における適合性と立位から座位への動作適応性について、外観の評価は立位姿勢時におけるシルエットの評価について。動作による後ベルトの「ずれ」は三次元動作解析より算出。【結果】 (1)各部位の適合性において股上丈の浅いパンツほど「ゆるい」と評価した。適合性と動作適応性において股上丈21cmのパンツを「合っている」「動きやすい」と評価した。 (2)腰囲・胴囲寸法が小さい者は股上丈が浅いほどシルエットが「わるい」と評価された。 (3)椅座姿勢と比較して床座・蹲踞姿勢で有意な「ずれ」が認められた。官能評価で「きつい」と評価される場合に「ずれ」が多く生じた。
著者
森 由紀 大村 知子 大森 敏江 木岡 悦子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.949-958, 1999-09-15
被引用文献数
3

We made a study of the on-the-back carrying system for primary school children as part of our series of studies on age-related practices and physical effects of carrying methods. In our previous report, we referred to the advantage of free-hand carrying for aged persons. We investigated school bags at 30 primary schools in the Kinki and Tokai districts, using 2,945 children as subjects. It was determined that the stiff bag Randoseru is the most popular among first graders, while the higher the grade, the less the Randoseru is used. In addition, we found that the lower the grade, the bigger the ratio of burden weight to body weight. We selected six subjects from among lower gladers to measure burden pressure upon their shoulder center and lumbar vertebra while carrying a fixed-weight-contained Randoseru, either in standing or walking position. As a result, they showed forward-inclined posture, the inclination increasing with the adding of Randoseru weight. Hereby, we bring to light the necessity of reducing the school goods that children carry daily between home and school to only those which are essential in order for these growing children to keep constant upright postures.
著者
大村 知子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、身体機能に障害のある者や高齢者、幼児が着脱しやすいバリアフリーの衣服設計に関する基礎的研究であり、研究目的は、バリアフリーの衣服デザインのための基礎資料を得ることであった。先ず、着用実験の方法に関する検討をした。着用実験用に6種類の留め具のブラウスを試作した。着用実験では、上肢に障害を想定したケースと視覚障害のケースを設定した。被験者は健常な学生29名と中途失明者1名であった。着脱動作の所要時間を分析した結果、障害の種類によって使いやすい留め具は異なった。着脱動作についての感覚評価においても所要時間と同様、袖口のカフスはもっとも難易度が高く、いずれの留め具でも、またどちらの障害においてもバリアが大きかった。他方、中国の高齢者の体型を捉える目的で、2000年11月に中国ハルピン市において100名を被験者として、62項目の身体計測をした。その結果、高齢者の体つきや身体寸法は、若い婦人とは、明らかに異なった。日本人高齢者の体型とも異なることが明らかになった。既製服におけるサイズ不適合な部位に関する実態調査の結果について解析中である。