著者
岩田 大吾 土岐 知弘 大森 保 石橋 純一郎 高井 研
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.137, 2008

鳩間海丘は南部沖縄トラフの水深1,500 mに位置する直径約4 kmのカルデラ火山である。沖縄トラフの海底熱水系は背弧・島弧系であり,堆積物が豊富であるという特殊な環境から世界で初めて海底面からの二酸化炭素ハイドレートの噴出が観測されるなど,日本における熱水研究に様々な科学的題材を提供してきた。鳩間海丘における熱水活動は,1999年の有人潜水探査船「しんかい2000」による潜航調査において初めて発見された。2006年8月に行われたNHKの取材時には,世界で初めて熱水が青く見える現象が観測された。過去の調査では観測されたことのない青色熱水であることから,海底熱水活動の活発化した可能性等が指摘された。本研究では,発見当時青く観測された熱水噴出孔から2007年3月及び7月に熱水試料を採取し,化学分析すると共に分光学的に解析を行い,2000年の分析結果と比較して化学組成の変化と青く観測された原因を明らかにした。
著者
岩田 大吾 土岐 知弘 大森 保 石橋 純一郎 高井 研
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.137, 2008 (Released:2008-09-06)

鳩間海丘は南部沖縄トラフの水深1,500 mに位置する直径約4 kmのカルデラ火山である。沖縄トラフの海底熱水系は背弧・島弧系であり,堆積物が豊富であるという特殊な環境から世界で初めて海底面からの二酸化炭素ハイドレートの噴出が観測されるなど,日本における熱水研究に様々な科学的題材を提供してきた。鳩間海丘における熱水活動は,1999年の有人潜水探査船「しんかい2000」による潜航調査において初めて発見された。2006年8月に行われたNHKの取材時には,世界で初めて熱水が青く見える現象が観測された。過去の調査では観測されたことのない青色熱水であることから,海底熱水活動の活発化した可能性等が指摘された。本研究では,発見当時青く観測された熱水噴出孔から2007年3月及び7月に熱水試料を採取し,化学分析すると共に分光学的に解析を行い,2000年の分析結果と比較して化学組成の変化と青く観測された原因を明らかにした。
著者
木村 政昭 上田 誠也 山里 清 加藤 祐三 大森 保
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

1986年に世界の背弧海盆に先駆けて中央地溝の一つである伊平屋海凹内で研究者らにより、低温で非晶質の熱水性マウンドが発見された。そこで、本研究においては、大洋中央海嶺で発見されたような硫化鉱床や大型生物コロニ-が認められるような高温の熱水性ベント・システムが背弧海盆にも認められるのかということを世界に先駆けて検証することを目標の一つとした。そして、それによって背弧海盆が大洋中央海嶺と同じ様な拡大メカニズムにより形成されたのかどうかということを明らかにしようと努めた。その結果、研究者らが参加・協力した調査・研究において以下に述べるような成果があげられた。昭和63(1988)年度:4ー6月、伊平屋海凹と伊是名海穴で熱水性生ベント・システム発見。ドレッジにより大型生物や硫化鉱床採取(ゾンネ号:「かいよう」)。9月には、前記熱水域に潜航し、熱水性鉱床・生物コロニ-等のサンプル採取に成功(「しんかい2000」)。平成元(1989)年度:4ー5月、伊是名海穴で高温熱水を噴出するブラックスモ-カ-が発見され、さらに新熱水域を発見する(「しんかい2000」)、1990ー91年の調査により、さらに北方の奄西海丘でも熱水性鉱床が発見された。1991年6月、沖縄トラフ南部北縁の潜水調査。トラフ縁の沈水時期を明らかにする(「スコ-ピオン」)。平成4年1月、南西諸島南方海域の海底地形精密調査。海溝運動と島弧・背弧海盆形成メカニズムを探る(「よこすか」)。以上、本研究により、発見された鉱床は、わが国経済水域内にあり、いわゆる黒鉱型鉱床に酷似し、金・銀を多量に含む珍しいものである。そして、シロウリ貝やバクテリア等も発見採取され、生命の起源解明にも寄与した。更に今後熱水域が新たに発見される可能性も指摘することができた。一方、構造探査の方では、沖縄トラフは典型的な大陸性地殻構造を持っていることが明らかになったが、鉱床の性質はそれと予盾しない。
著者
大森 保 藤村 弘行
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

サンゴ礁における炭酸系変動の時系列観測により、瀬底島サンゴ群集は二酸化炭素濃度=945ppmvに達すると石灰化速度がゼロになること、および、アラゴナイト飽和度が1(平衡状態)となる結果が得られた。IPCC報告書の数値予測モデルによれば、早ければ21世紀末以降に、大気中の二酸化炭素濃度が950ppmvレベルに達し、アラゴナイト質骨格を形成する海洋生物の生存が極度に脅かされ、サンゴ礁生態系激変の可能性が示唆される。サンゴ飼育水槽実験により、光ストレス・農薬・有害化学物質ストレスに対する代謝応答(光合成・石灰化)、枝状サンゴの骨格形成における量元素(Sr, Mg, U)の取り込み応答、稚サンゴの骨格形成の応答等について解明した。さらに、サンゴの骨格形成における基質タンパク質の効果について解明した。
著者
大森 保 新垣 雄光 又吉 直子 棚原 朗
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1).瀬底島サンゴ礁において、海水中の炭酸系成分のシステマチックな時系列観測を5年間継続しておこなった。海水中の二酸化炭素濃度は、昼間に低く、夜間に高い日周変化を示す。これは、昼間には光合成と石灰化が卓越し、夜間には呼吸が卓越することによる。(2).流向流速計を用いた海水の流動解析をおこない、さんご礁の炭酸系変動の日周変動を説明できるボックスモデルを構築した。(3).海水中の二酸化炭素濃度の変動を周期解析すると、最も主要な変動周期は、約26.7時間であった。これは、海水中の二酸化炭素濃度変動が、太陽の日射量変動よりも、むしろ月の運行に関連した潮位変動に大きく規定されることを示している。それ以外にも、13時間、6.5時間などの短時間の周期変動があり、複合的なメカニズムによって規定されることが示唆される。(4).短周期の成分変動を除去して、年間を通した長周期の変動をみると、二酸化炭素濃度は、おおよそ、月単位でブロック上に変化し、夏に向かって上昇する傾向と、冬に向かって減少する傾向が確認された。この変動は、主として、海流の循環にともなう季節変動に支配されていると示唆された。サンゴ礁炭酸系変動と地球環境変動の関係を解明するためには、炭酸系変動の長周期因子の解明が必要であることがわかった。(5).瀬底島で構築した炭酸系変動ボックスモデルをレユニオン島のサンゴ礁に適用したところ、炭酸系の日周変動をうまく説明できることが確認された。これによりサンゴ礁の炭酸系をグローバルな視点から整合的に評価する方法を確立することができた。(6)以上により、サンゴ礁における炭酸系変動と地球環境変動について解明するための基礎を確立した。