著者
西森 裕夫 田中 寿弥 東 卓弥
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-8, 2010-03

1.'まりひめ'は'章姫'×'さちのか'の組み合わせから育成された促成栽培用品種で、2008年に品種登録を出願された。2.草姿はやや立性で、草勢が強く、草丈は'さちのか'より高く、'章姫'より低い。促成栽培での冬季のわい化は少なく、育成地では電照やジベレリン処理を必要としない。3.育成地のポット育苗における花芽分化時期は9月14日前後で'さちのか'より早く、'章姫'より遅い。頂果房の収穫開始時期は12月上旬であり、'さちのか'よりも2週間以上早い。第一次腋花房の出蕾がやや遅く、頂花房との間に収穫の少ない時期ができやすい。4.1月までの早期収量は'章姫'、'紅ほっぺ'と比べて同等かやや多い。4月までの総収量は'さちのか'、'章姫'より多く、'紅ほっぺ'と比べて同等である。上物率は奇形果や乱形果が少ないため77%と高い。可販果の平均果実重は18g以上で、'さちのか'の15〜16gに比べて大きく、'紅ほっぺ'とほぼ同等である。5.果実糖度は'さちのか'と同等に高く、時期による変動が少ない。酸度は'さちのか'より低く、'章姫'よりやや高い。6.特定の病害には抵抗性を有さず、特にイチゴ炭疽病には'さちのか'と同様に弱い。'紅ほっぺ'と同様に心止まり株の発生がみられる。
著者
辻 佳子 林 俊孝 久保 浩之
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.6, pp.57-68, 2005-03

有機性廃棄物の堆肥化。有機性廃棄物として、柿選果場で廃棄されるくず柿、ジュースエ場から排出されるウーロン茶滓、キャベツの収穫残渣、ユズの加工時に廃棄されるユズ絞り滓、および生ゴミ(給食残飯)を主原料とし、高速発酵処理機(エヌ・アイ・テクノ(株)製バイオメイトBM600-S)を用いて堆肥化処理を行った。1.くず柿、ウーロン茶滓、ユズ、生ゴミの堆肥化において、石灰窒素の添加によるpHの調整が堆肥化促進に有効であった。2.ウーロン茶滓の堆肥化において、pH等の条件を整えても堆肥化処理期間は23日では不十分であった。3.キャベツなど水分含有率の多い原材料の堆肥化では、オガクズが水分調節剤として有効であったこのとき、C/N比よりも混合初期の水分調節に重きをおいて混合割合を決めるとよい。和歌山県内における生ゴミ堆肥の品質実態。1.県内で処理されている生ゴミ堆肥は、成分のばらつきが大きいが、未熟な生ゴミ乾燥物の状態で有機質肥料的な性質をもったものが多かった。2.生ゴミ堆肥を乾物で1/10a施用する場合、塩分、油分の上限はそれぞれ、堆肥乾物あたり5%、10%であった。県内で処理されている生ゴミ堆肥において、塩分の最大値は2.28%で問題ないが、油分の最大値は13.79%で問題となる可能性がある。
著者
林 恭平 根来 圭一 岩本 和也
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.5, pp.67-73, 2004-03
被引用文献数
1

本研究はウメ品種のS遺伝子型をPCR法により識別した。1.供試したウメ50品種から少なくとも10の遺伝子座を識別し、22以上の遺伝子型があることを認識した。2.和歌山県各地の'南高'79樹のS遺伝子型はS1S7であったが、異なるS遺伝子型示す'南高'が2系統あった。3.'小粒南高'5系統のS遺伝子型はそれぞれが違う遺伝子型を示し、'小粒南高'は遺伝的に様々な系統があると考えられた。4.'南高'と自家和合性個体('地蔵'と'剣先')の交雑個体の中で、自家和合性個体をSf遺伝子の有無で識別することができたことから、S-RNase遺伝子は自家和合性個体判別の分子マーカーとして利用できることがわかった。
著者
古屋 挙幸 宮本 芳城 藤岡 唯志 村上 豪
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.7, pp.81-88, 2006-03
被引用文献数
1

スターチス・シヌアータの新品種'紀州ファインホワイト'と'紀州ファインイエロー'を育成した。新品種の特性は次のとおりである。1.両品種ともスターチス萎凋細菌病に対して、強い抵抗性がある。2.両品種とも花房が大きくて花房数が多く、ボリュームがある。また、'紀州ファインホワイト'のがくの色は純白に近く、花冠の色は淡いクリーム色である。'紀州ファインイエロー'のがくの色はレモン色で、花冠の色は濃い黄色である。3.収量性は'紀州ファインホワイト'が中程度、'紀州ファインイエロー'が多収性である。また、両品種とも切り花の2L率が高い。
著者
尾畑 勝吉 前田 恵助 石野 忍
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.6, pp.155-158, 2005-03

リサイクル飼料である食用規格外パンクズ、チョコフレークを主原料とした飼料を用いて、豚の肉色、マーブリングヘの影響について調査した。今回の試験ではロース芯部分の脂質含量に有意な差は認められなかったが、色彩色差計で測定した結果、R飼料区は明度で有意に明るくなり、色度で有意に黄色方向に傾き、明るい色となり商品価値が高いと考えられた。
著者
小川 大輔 古屋 挙幸 藤岡 唯志 宮本 芳城
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.13, pp.15-23, 2012-03

紀州ファインルビー'を種子親として,スターチス・シヌアータ新品種'紀州ファインバイオレット'および'紀州ファイングレープ'を育成した。両品種の特性は次のとおりである。'紀州ファインバイオレット' 1. がくの色は'デュエルバイオレット'と同等の濃い青紫色である。 2. 初期の切花長がやや短いが,収量性が高く,草姿は立性で作業性がよい。 3. 低温要求性は比較的高く,培養温度によっては3~4週間の低温処理が必要である。 '紀州ファイングレープ' 1. がくの色は'紀州ファインバイオレット'よりやや赤みを帯びた紫色である。 2. 草丈が伸びやすく,採花初期から秀品率が高い。また,収量性も高い。 3. 低温要求性は比較的高く,培養温度によっては3~4週間の低温処理が必要である。
著者
花田 裕美 森 泰
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.4, pp.43-50, 2003-03

冬咲きのピンク品種'ダイアナ'と冬咲きの白色品種'アーリー・ホワイト'の交配育種により育成した新品種'ブライダル・ピンク'は、今までの冬咲き品種には無い白色の花弁の周縁部がピンクに発色する覆輪の花色をもつ冬咲き品種である。その特性は両親である'ダイアナ'、'アーリー・ホワイト'と同程度の草勢であり、開花特性も同程度である。本品種は、種子冷蔵期間15日を行った場合、着花輪数5.0輪、花柄長50.0cmと良質の切り花の収穫が可能であり、有望な冬咲きの覆輪品種である。
著者
宮本 芳城 藤岡 唯志 藤田 政良
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.3, pp.35-42, 2002-03

シュッコンカスミソウの培養過程において効率的にロゼット化しにくい個体を選抜するため、試験管内での選抜法について検討した。 1.シュッコンカスミソウではカルスからの再分化個体では、茎頂培養個体に比べて試験管内およびほ場での生育のばらつきが大きく、変異の拡大に有効であった。 2.茎頂培養個体または茎頂由来カルスからの再分化個体をアンシミドール2.Omg/liter添加した1/2MS培地を用い、20℃、3,000lx、16時間照明下で培養することによって、試験管内での植物体の伸長抑制程度(草丈)が系統の特性と一致し、試験管内での低ロゼット個体の選抜ができた。 3.試験管内で選抜した植物体を栽培した結果、試験管内での伸長抑制程度とほ場移植後のロゼット性程度が一致し、試験管内での選抜が有効であることが検証できた。
著者
宮本 久美 中谷 章
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.12, pp.21-31, 2011-03

'ゆら早生'の樹冠内における果実品質変動の要因解析を行った. 2009年10月20日に収穫した場内2園地の合計3樹を供試し,果実重,遊離酸含量,糖度に及ぼす着果位置や果実特性の影響を数量化Ⅱ類により解析した.その結果,'ゆら早生'果実の肥大には,有葉果の多い樹づくりが重要であり,養分の流れの良い整枝と着果位置が望ましく裾なり果は小玉になりやすいことがわかった.遊離酸含量については,有葉果で減酸が早く,扁平で果皮が薄く糖度の高い小玉果で、酸が高かったことから,強い乾燥や着果負担などで正常な果実発育を抑え込まない管理が重要と思われた.また,果実熟度に関与する要因が遊離酸含量に影響していたことから,多孔質シートマルチなどによる日照条件の改良,裾なりや懐なり果実の摘果などとともに,適期の収穫が酸高の防止に重要と思われた.糖度については,樹冠の上中部に位置し,果梗枝が細く収穫期には下向きに垂れる果実,直花果よりも有葉果で糖度が高かった.樹によって正反対の影響を及ぼす要因が多く,これらは果実への養分の流れやすさに関係していると思われた.以上の結果から,'ゆら早生'の果実品質変動は,基本的には従来の早生ウンシュウミカンでの知見を踏襲するものであるが10月上旬~下旬に収穫する極早生であるため果実熟度の違いによる変動が加わり,さらに,根の発育が悪く樹勢の弱い品種であるため果実への養分の流れやすきの要因が加わることが明らかになった.このことが'ゆら早生'の果実品質変動を大きくしており,外観や従来の知見では予測しにくい原因であることがわかった.
著者
宮本 芳城 川村 和史 梅本 哲矢
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.6, pp.13-23, 2005-03

県産米「キヌヒカリ」の品質低下の主な原因となっている心白粒など白未熟粒の発生要因を明らかにするため、移植時期と収量、品質との関係を検討し、登熟初中期にあたる出穂後20日間の気象要因の影響について解析した。1.移植時期と収量および収量構成要素との関係は明らかではなかった。2.移植時期と白未熟粒発生との関係は年次によって差がみられるが、移植時期は遅いほど白未熟粒の発生が減少する傾向が認められた。3.白未熟粒の発生と出穂後20日間の日最高気温の平均および日平均気温の平均との間に高い相関が認められ、この期間の温度が高いと白未熟粒の発生が増加したまた、この関係は栽培条件の異なる現地ほ場においても認められた。4.出穂後20日間の平均日照時間が長いほど白未熟粒発生割合が高くなる傾向がみられた。また、過度な日照不足は粒の充実不足を招き、白未熟粒の発生につながると考えられた。5.得られた近似式から「キヌヒカリ」の白未熟粒の発生を少なくするためには、出穂後20日間の日平均気温の平均を26.1℃以下、かつ日最高気温の平均を31.4℃以下にすることが有効であった。それには和歌山県北部の平坦地では出穂期を8月15日以降に遅らす必要があり、このときの移植時期は6月21日以降であった。
著者
大江 孝明 林 恭平 桑原 あき
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.7, pp.55-61, 2006-03

ウメ果実の品質成分含量、紅色着色、硬度の点で育種上有用な品種を探索した。1.達観による青果収穫果実の比較において、品質成分含量で'二青梅'、'薬師'、'児玉'、'地蔵'、'西洋梅'、'大平'、'美里'が、紅色着色で'紅サシ'、'東地紅'、'白王小梅'、'前沢小梅'、'竜峡小梅'、'谷口紅'が有望と考えられた。2.小梅とアンズ系の品種を除いた普通種のウメでは、青果収穫時期が遅い品種ほどクエン酸含量が高い傾向が見られた。3.青果収穫果実で有望と考えられた品種のうち、収穫労力や梅干加工適性を考慮し、普通種のウメに絞って品質成分含量や果実形質の推移を詳細に調査した結果、'地蔵'と'二青梅'が有望と考えられた。特に'地蔵'はβ-カロテンやソルビトール含量が突出して高く、外観上鮮やかなオレンジ色を呈する特徴を有していた。