著者
大羽 成征
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.113-122, 2018-09-05 (Released:2018-10-31)
参考文献数
18
被引用文献数
4

自由エネルギー原理(FEP)および能動推論(AIF)は,動物の脳が環境を知覚し認識しこれに基づいて行動を起こす過程の情報処理機構全般を対象とした説明原理であり,脳の神経計算機構のモデルであるのみならず,動物やヒトを取り巻く実環境タスクに向き合う人工知能設計のためにも示唆するところが大きい.本論では,FEPおよびAIFが依って立つ基盤である変分推論および確率的推論としての制御について,それぞれその基礎を確認することによってFEPおよびAIFの意義を浮かび上がらせることを試みる.
著者
大羽 成征
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.9, pp.803-808, 2010-09-01

統計的仮説検定は,雑音を含む有限のデータに基づく科学的発見の信頼性を保証するために,あらゆる分野で使われてきた枯れた技術である.しかし近年,バイオインフォマティクス,脳科学など多くの分野で取り扱われ始めた高次元システムを対象とする問題では,検定多重性への対処や,検定多重性の利用に関する新しいアイデアが今もなお生まれ続けている.本稿では経験ベイズ検定に基づく統計的バイオインフォマティクスを典型例にとり,多重性の高い状況を目の前にした読者がどのように考えればよいかを議論し,最近の研究が対象にしている多重検定ならではの手法やその性質を紹介する.
著者
大羽成征 中江健 吉本潤一郎
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2013-BIO-34, no.9, pp.1-5, 2013-06-20

スパイク統計に基づいて神経細胞間の機能的結合を知るための手法として、一般化線形モデル (GLM) に基づく応答関数推定法が提案されている。GLM によれば古典的な 2 ニューロン間クロスコレログラム解析で生じる擬似相関起源の偽陽性を排除できる。しかし、GLM によっても原理的に避けられない偽陽性要因が存在する。本発表ではそのうち 2 つを指摘する。第一は、スパイク検出時刻決定の誤差、第二は時間方向に非線形性の強いダイナミクスを GLM でフィッティングすることによって生じる歪みである。本発表ではまた、これらの偽陽性を避けるために、応答関数可視化法に関する小さなトリック 「GLM クロスコレログラム」 を提案する。これとクラスタリング法と組み合わせて、機能的結合パターンの典型例を見つけることで、通常手法を使った場合に導かれたであろう解釈誤りの可能性を減らせることを示す。