著者
田口 茂 吉田 正俊 西郷 甲矢人 宮園 健吾 谷 淳 田中 彰吾 山下 祐一 西尾 慶之 武内 大 富山 豊
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「意識とは何か」という問題は、現代において哲学と科学と医療にまたがる大問題である。本研究の目的は、この大問題に、以下の三つの方法を組み合わせてアプローチすることである。①第一に、「現象学」を一つの理論的な核として、哲学・精神医学・神経科学・ロボティクス・数学の密接な学際的共同研究を行う。②第二に、「意識変容」という正常な意識状態からの逸脱に焦点を当て、変容した意識と正常な意識とを対比することにより、意識の本質的特性に迫る。③第三に、「圏論」という数学的理論を用いて、上述の諸研究から浮かび上がる関係論的構造を分析する。これにより、意識研究を一段新しい次元にもたらす新たな理論的枠組みを提起する。
著者
吉田 正俊 田口 茂
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.53-70, 2018-09-05 (Released:2018-10-31)
参考文献数
53
被引用文献数
6 2

フリストンの自由エネルギー原理では,外界に関する生成モデルと現在の認識から計算される変分自由エネルギーを最小化するために,1) 脳状態を変えることによって正しい認識に至る過程(perceptual inference)と2) 行動によって感覚入力を変えることによって曖昧さの低い認識に至る過程(active inference)の二つを組み合わせていると考える.本解説の前半では自由エネルギー原理について,我々が視線を移動させながら視覚像を構築してゆく過程を例にとって,簡単な説明を試みた.本解説の後半では,このようにして理解した自由エネルギー原理を元にして「自由エネルギー原理と現象学に基づいた意識理論」を提唱した.この理論において,意識とは自由エネルギー原理における推測と生成モデルとを照合するプロセスそのものであり,イマココでの外界についての推測と非明示的な前提条件の集合である生成モデルとが一体になって意識を作り上げている.この考えはフッサール現象学における意識の構造についての知見と整合的である.
著者
吉田 正俊
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.3-12, 2014-03-05 (Released:2014-05-16)
参考文献数
54
被引用文献数
2 1

サリエンシーとは視覚刺激が空間的配置によってボトムアップ性注意を誘引する特性のことを指す.サリエンシー·マップとは計算論的な概念で,視覚の基本的な特徴,たとえば輝度や方位によるサリエンシーが平行して計算された後に足しあわされて作られた単一のマップのことを指す.本解説ではサリエンシー·マップとその視覚探索解析への応用について記す.とくに,著者が以前行った,盲視モデル動物としての第一次視覚野損傷サルへの応用について詳述する.
著者
吉田 正俊
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.109-114, 2009 (Released:2019-11-08)
参考文献数
17

第一次視覚野が損傷を受けた患者において,視野上のものが見えないにもかかわらず,その位置を当てるなどの視覚情報処理能力が残存している「盲視」という現象がある。盲視の発現には数カ月のトレーニングが必要であるという知見が集まってきている。マカクザルを動物モデルとして用いた研究では,第一次視覚野の切除後にも盲視が起こることが明らかになっている。筆者らはこのような実験モデルを作成して,機能回復トレーニングによって視覚機能がいかに回復するかを調べた。継続的なトレーニングによっておよそ8週間程度で視覚弁別の成績がほぼ正常と同等のレベルまで回復することが明らかになった。しかし,詳しく調べると以下の違いがあることが明らかになった。1)サッカードの制御にも影響を与える,2)意志決定の過程にも影響を与える。これらの知見は新しいリハビリテーションの方策と効果判定に役立つと考えられる。
著者
吉田 正俊
出版者
東北大学倫理学研究会
雑誌
モラリア (ISSN:13434802)
巻号頁・発行日
vol.20・21, pp.171-188, 2014-11-11
著者
吉田 正俊
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1962

博士論文