著者
島崎 秀昭
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.86-103, 2018-09-05 (Released:2018-10-31)
参考文献数
78
被引用文献数
3

本稿は生物の認識と行動の環境への適応に関する理論の解説を行う.始めに環境の階層モデルに対する近似推論法を紹介し,サプライズ最小化の原理から生物の認識及び行動の説明を試みるFristonらの自由エネルギー原理を機械学習の立場から概観する.次に階層モデルによるアプローチを情報理論の観点から考察し,情報量最大化原理に基づく古典的な知覚の理論や非線形信号処理との関係を解説する.最後に認識のモデルに対する熱力学的な取り扱いを紹介し,学習過程のエントロピー・自由エネルギーのダイナミクスを考察して熱力学法則との形式的関係を明らかにする.このようにして生物がその非線形な演算装置を適応させて外界の表現を獲得し,身体を使い認識に沿うように外界を改変していく過程が複数の視点から明らかになる.
著者
島崎 秀昭
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.72-98, 2019-09-05 (Released:2019-10-31)
参考文献数
94
被引用文献数
1

本稿は生物の学習と認識をベイズ統計学と熱力学の立場から解説する.脳は学習により獲得した外界のモデルをもとに推論を行う器官であると考えるのが脳のベイズ的な見方である.本稿の前半はこの見方が自発活動と刺激誘起活動をめぐる実験事実からいかにして形成されてきたかを解説し,ベイズ推論に基づく外界の認識が実現されていることを示唆する神経活動として図地分離・注意等の実験例を紹介する.後者の実験では順方向結合による初期刺激応答に対してリカレント回路による入力が時間遅れで統合されていることが示唆され,初期刺激応答後の神経活動に気づき・注意・報酬価値が表されると報告している.後半では神経細胞集団の刺激応答のダイナミクスを生成モデルを用いて再現した上で,学習と認識を神経活動のエントロピーに関する法則を用いて記述する熱力学的手法について解説する.特に時間遅れを伴う動的な情報統合によってベイズ推論を実現する神経ダイナミクスが情報論的なエンジンを構成することを紹介する(ニューラルエンジン).これにより内発的な刺激変調を定量化し,その効率を計算できることを解説する.
著者
小林 祐喜 島崎 秀昭 荻久保 佳伸 溝口 健二 相原 威 塚田 稔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.686, pp.31-36, 2000-03-15
被引用文献数
1 1

近年、軸索を逆伝搬する発火活動が報告されており、海馬における学習則を考える場合、入力同士の同時性以外に入力と軸索を逆伝搬する発火活動(出力逆伝搬)の同時性も考慮する必要がある。そこで本研究は、電気刺激をCA1野へのびるshaffer側枝と出力層であるstratum oriensに刺入し、その入力と出力逆伝搬の位相をτ=0ms, ±5ms, ±10ms, ±20ms, ±25mS, ±50ms, ±100ms, ±500ms, 1000msと変化させたときのLTP(長期増強), LTD(長期抑圧)の空間分布を光計測法を用いて計測した。結果としてLTP, LTDは位相差に依存して空間的に異なった分布として引き起こされることが明らかとなった。