著者
大野 義一朗 宮田 敬博
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.42-50, 2000-03
被引用文献数
1

1998年9月, 越冬中の各国基地医師にファックス, 電子メールを送り医療現状調査をおこない昭和基地と比較した。7基地から直接回答があり10ヵ国14基地の情報を収集した。医師数は日本隊が2名で他は1名であった。医師以外の医療従事者がいるのは1基地のみ。手術室のある基地は多いが実際に手術を行っている基地は少ない。集計死亡数76件のうち病死9%, 事故死72%, 不明19%。病死では急性心疾患が最多で, 事故死の73%が航空機事故だった。日本隊の死亡1名は実数でも比率でも少ない。その理由は隊員選抜の健康診断が有効に機能していてこれまで致命的な疾患が発生していないことと, 大陸間航空路がなく航空機関連事故が起きていないためと考えられる。昭和基地でも重症患者の救命に不可欠な緊急搬出用航空路をどのようにして安全に導入するかが課題である。
著者
鳴岩 伸生 桑原 知子 川部 哲也 佐々木 玲仁 加藤 奈奈子 佐々木 麻子 渡邉 研太郎 大野 義一朗 重田 智
出版者
京都光華女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

長期閉鎖環境におけるストレスの実際と有効な対処を明らかにするために,南極地域観測隊の越冬隊員に対し,出発前の日本および現地での質問紙調査と帰国後の面接調査を実施した。その結果,越冬後半の白夜の時期に,怒り・敵意の感情が高まる者が現れる一方で,高まらない者も多くおり,隊内に感情の溝が存在することが明らかになった。また,越冬中の肯定的感情が積極的なストレス対処に影響を与え,否定的感情が非建設的なストレス対処に影響することが明らかになった。
著者
大野 義一朗 宮田 敬博 Giichiro Ohno Takahiro Miyata
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.42-50, 2000-03

1998年9月, 越冬中の各国基地医師にファックス, 電子メールを送り医療現状調査をおこない昭和基地と比較した。7基地から直接回答があり10ヵ国14基地の情報を収集した。医師数は日本隊が2名で他は1名であった。医師以外の医療従事者がいるのは1基地のみ。手術室のある基地は多いが実際に手術を行っている基地は少ない。集計死亡数76件のうち病死9%, 事故死72%, 不明19%。病死では急性心疾患が最多で, 事故死の73%が航空機事故だった。日本隊の死亡1名は実数でも比率でも少ない。その理由は隊員選抜の健康診断が有効に機能していてこれまで致命的な疾患が発生していないことと, 大陸間航空路がなく航空機関連事故が起きていないためと考えられる。昭和基地でも重症患者の救命に不可欠な緊急搬出用航空路をどのようにして安全に導入するかが課題である。In September of 1998,we sent questions about base medical systems to Antarctic wintering team doctors by facsimile and e-mail and we obtained information about 14 stations of 10 nations. Syowa has two doctors. Most other stations have one. Only one has paramedical workers. Many stations have an operation room but only few operations have been done. There have been 76 deaths : 9% from disease, 72% from accidents and 19% from unknown causes. The major fatal disease was the heart attack, 73% of fatal accident involved airplanes and helicopters. The very low mortality of Syowa may be because effective personnel selection avoids severe disease and there are no severe accidents by intercontinental aircraft. The problem is how JARE can establish an indispensable air-evacuation system safely.
著者
大野 義一朗 宮田 敬博 吉田 和隆 大谷 眞二 草谷 洋光 山本 啓之
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.311-319, 2002-03
被引用文献数
2

24時間風呂は微生物が繁殖しやすく, 越冬期間中の状況では診断治療が難しいレジオネラ症の感染源として危険性が指摘されている。JARE-39 (1998-1999), -40 (1999-2000)は昭和基地の24時間風呂の細菌調査を行った。浴槽水, 130kl造水槽水, 24時間風呂循環回路のフィルターを持ち帰りレジオネラ菌とその他の細菌について培養検査, PCR検査を行った。またJARE-40で越冬中に浴槽水の一般細菌と大腸菌の培養検査, 浴槽水温調査を行った。さらに疾患統計から風呂に起因する可能性のある疾患の発生を調査した。その結果フィルターと浴槽水からPCRにてLegionella pneumophilaと塩基配列が一致するレジオネラ菌遺伝子を検出したがレジオネラ菌分離培養は陰性であった。8月の浴槽水温は平均44.6℃と高温で少数の一般細菌が検出されたが, 水温が1-2℃低下した越冬後半には一般細菌が増加し大腸菌群も検出された。39次隊越冬中に胃腸炎と上気道炎の集団発生があったが風呂との因果関係は不明であった。今後も定期検査が望ましく, 遠隔地で可能な検査体制の確立が望まれる。
著者
大野 義一朗 大日方 一夫 下枝 宣史 大谷 眞二 宮田 敬博 藤原 久子 三上 春夫 大野 秀樹 福地 光男 渡邉 研太郎 森本 武利
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.241-249, 2007-07

南極医学医療研究集会は,わが国の南極医学研究と医療問題についての研究成果を報告・討論し,次期の観測隊における医学研究に寄与することを目的として毎年行われている.2006年の本研究集会は8月26日,国立極地研究所講堂で行われた.27施設から42名が参加し18の演題報告がなされ,近年では最大規模の研究集会となった. 参加者は越冬経験医師をはじめ,共同研究を行っている大学や研究機関の研究者,関連領域の研究を行っている宇宙開発機構やスポーツ科学研究所などの研究者,南極に興味のある一般病院の臨床医など多彩であった. 2004年より昭和基地に導入されたテレビ会議システムを活用して,昭和基地の医師もリアルタイム映像で討論に参加した.また韓国,中国の越冬医師が初めて参加した.これは3カ国の極地研究所による事前の準備と連携により実現した.集会では各国の南極基地の医療状況や医学研究活動が報告され,活発な意見交換がなされた.南極医学医療研究分野におけるアジア連携の端緒となることが期待される.
著者
大野 義一朗 大日方 一夫 下枝 宣史 大谷 眞二 宮田 敬博 藤原 久子 三上 春夫 大野 秀樹 福地 光男 渡邉 研太郎 森本 武利 Giichiro Ohno Ichio Obinata Nobuhito Shimoeda Shinji Otani Takahiro Miyata Hisako Fujiwara Haruo Mikami Hideki Ohno Mitsuo Fukuchi Kentaro Watanabe Taketoshi Morimoto
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.241-249, 2007-07

南極医学医療研究集会は,わが国の南極医学研究と医療問題についての研究成果を報告・討論し,次期の観測隊における医学研究に寄与することを目的として毎年行われている.2006年の本研究集会は8月26日,国立極地研究所講堂で行われた.27施設から42名が参加し18の演題報告がなされ,近年では最大規模の研究集会となった. 参加者は越冬経験医師をはじめ,共同研究を行っている大学や研究機関の研究者,関連領域の研究を行っている宇宙開発機構やスポーツ科学研究所などの研究者,南極に興味のある一般病院の臨床医など多彩であった. 2004年より昭和基地に導入されたテレビ会議システムを活用して,昭和基地の医師もリアルタイム映像で討論に参加した.また韓国,中国の越冬医師が初めて参加した.これは3カ国の極地研究所による事前の準備と連携により実現した.集会では各国の南極基地の医療状況や医学研究活動が報告され,活発な意見交換がなされた.南極医学医療研究分野におけるアジア連携の端緒となることが期待される.A workshop on Antarctic Medical Research and Medicine 2006 was held at the National Institute of Polar Research (NIPR) on 26 August, 2006. Forty two participants from 27 institutes attended. The members consist of medical doctors with Antarctic experience, human biologists, research scientists in other fields, logistic staff members of the expedition and also medical doctors interested in Antarctica. The current resident doctor at Syowa Station joined the discussion through a telecommunication system. Doctors with Antarctic experience from China and Korea also participated in the workshop. They gave presentations on their Antarctic activities, followed by an active discussion session. Eighteen presentations were given on various topics, including the International Polar Year (IPY) 2007-2008 in medical research, space medicine, telemedicine, an international comparative study of medical operations, psychological surveys, Antarctic high-altitude medicine, Legionella surveillance and nutritional studies.
著者
大野 義一朗 宮田 敬博
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-13, 2000-03
被引用文献数
1

日本南極地域観測隊の越冬中の傷病について統計解析を行った。対象は1956年-1999年の歴代越冬隊(昭和, みずほ, あすか, ドームふじの4基地)で越冬報告をもとに集計した。のべ隊員1110名(女性2名), 出発時年齢は22-56(平均33)歳であった。傷病総数は4233件で, 1人あたり傷病数は3.8件であった。科別割合では外科整形外科疾患45.3%, 内科22.7%, 歯科12.7%, 皮膚科7.2%, 眼科5.9%, 耳鼻科3.8%などであった。死亡例はブリザードによる遭難死1例, 全身麻酔手術は行われたことはなく, 1966年腰椎麻酔で虫垂炎手術が1件行われた。感染症が極夜期に増加するなど疾患によっては特有な季節変動を認めた。第39次隊では39名中38名に何らかの傷病が発生し, 総数199件, 1人平均5.1件であった。観測部門と設営部門の間に差はなく, 年齢別では40歳代で最少, 50歳代で最多であった。傷病の31.7%は環境に起因し, 27.6%は仕事が関与していた。
著者
中尾 美千代 大野 義一朗 小澤 美貴 山本 隆子 森本 武利
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.543-553, 2002-11

第39次越冬隊の医療隊員が、越冬期間中に自分自身の摂取した食事をすべてデジタルカメラで記録した。このデジタルカメラの画像から摂取した食品重量を推定して栄養分析を行った。エネルギー摂取量は日本人の栄養所要量に示される生活活動強度Iのエネルギー所要量よりも若干高値を示したが、1月の摂取量は有意に高値を示した。PFC比からみるとたんぱく質および脂肪の比率が高く、炭水化物比が低い傾向を認めた。特に不足を認めた栄養素はビタミンCと食物繊維とカルシウムで、これらについては食材の確保や保管などの問題が関与すると考えられ、ビタミン剤等による補給の必要性を示すものである。