著者
見城 勝 大倉 さゆり 任田 美穂 金子 智佳子 太田 尚子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.365-373, 2000-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
15
被引用文献数
5 3

皮脂は皮膚表面に恒常的に分泌されて皮膚表面の保護的作用を果たす一方, 過剰あるいは不十分な分泌による肌状態への影響が懸念されている。皮脂成分と肌状態の関係についてはこれまでも多くの研究が行われているが, 季節変動に着目して検証した例は少ない。われわれは皮脂の分泌量および組成と肌状態評価値について, 個人レベルでの季節的な変動幅 (冬, 春) について検討を実施したところ, 以下に示す興味深い結果が得られた。 (1) 総皮脂量と組成は冬, 春で大きく変動し, その傾向は個人により異なっていた。 (2) 肌状態評価値も季節変動があり, 傾向は個人により異なっていた。 (3) 皮脂成分と肌状態の解析を個人で対応させて実施したところ, 皮脂中の遊離脂肪酸比率の低下に伴い乾燥性の肌荒れが改善すること, 不飽和度 (遊離脂肪酸中の不飽和/飽和比率) の低下により角質細胞面積が増大傾向にあること等が見出され, 皮脂成分の変動が肌状態に影響を与えている可能性が示唆された。 (4) 肌質との関係については, 不飽和度が高く総皮脂量が少ない人たちがやや敏感肌および敏感肌群に属していたことから, 皮脂組成が肌の敏感度にも影響を与えている可能性が示唆された。
著者
蛭田 明子 堀内 成子 太田 尚子 實崎 美奈 石井 慶子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は周産期に子どもを亡くした夫婦を支援するツールの作成を目的に実施した。方法は、31名の父親と母親に対するインタビューである。夫婦のあり方は様々だが、家族の外部にも自分のサポートを得ること、悲しみに伴うお互いの一般的な感情の変化を予期できること、家族の中で子どもの存在がオープンであることが、家族の再構成に重要な影響を及ぼしていることは共通した語りであった。家族の語りにもとづき、「夫婦」と「夫婦を支えたいと願う両親」を対象とした二つのリーフレットを作成した。
著者
太田 尚子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、乳タンパク質のβ-カゼインとβ-ラクトグロブリンの脂肪酸塩存在下及び非存在下における相互作用について、超音波分光分析並びに動的粘弾性測定により調べた。β-カゼイン単独またはβ-カゼインとβ-ラクトグロブリン混合系は脂肪酸塩非存在下では一過的な超音波減衰の増加が観察されたものの、動的弾性率の増加は認められず、三次元的ネットワークの構築は起こっていないことが判った。一方、この混合タンパク質系に脂肪酸塩の一種であるカプリン酸ナトリウムを添加した際には、β-ラクトグロブリン単独タンパク質に比べ超音波減衰の増加や弾性率の増加は少ないもののゲル化現象が認められた。この事からβ-カゼインが脂肪酸塩存在下でテクスチャーモディファイヤーとして役立つことを示唆した。
著者
橿淵 暢夫 太田 尚子 宮沢 雅一 藤原 典雄 木下 篤 平井 義和
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.290-296, 1999-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
6
被引用文献数
3 1

敏感肌はわれわれ化粧品開発にたずさわるものにとって大変重要な課題である。にもかかわらず, その実体はよくわかっていない。今回, その実体を明らかにすることを目的にいくつかの検討を行った。その内容は (1) 本人の肌意識 (自覚肌質) を形成している因子を問診をとおして明らかにすること, (2) そしてそれが年間をとおしてどのような変化をするかを明らかにすること, (3) 角質形態と自覚肌質との間に関連性があるかないかを検討することである。その結果, (1) 自覚肌質の形成には共通の体験がうかがえること, (2) 自覚肌質の分布は年間をとおして変化がないが, 個人は入れ替わっていること, (3) 角質細胞形態のなかには自覚肌質と相関のあるものがあるが, そのなかでは角質細胞面積との関連性が強く, 理論値からの乖離値との相関が最も高かった。その結果, 問診の結果と細胞面積の理論値からの乖離値を組み合わせることで自覚肌質を客観的に特徴づけることが可能となった。
著者
太田 尚子 遠藤 茉里 澤木 心美 岸川 めぐみ
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.183-191, 2014 (Released:2014-09-25)

α-カゼイン(α-CN)は非常に熱に対する安定性の高いタンパク質として知られているが,オボアルブミン(OVA)との共存下で特徴ある物性を有するゲル状凝集体をつくり得ることが判った。また,この混合タンパク質の試料溶液を調製するにあたり,脂肪酸塩の添加がより均質なサスペンジョンを調製する上で効果的であった。カプリン酸ナトリウム添加のα-CN/OVA混合システムは,OVAに比べ加熱処理の過程でより緩やかな相転移現象を経てゲル化に至り,結果的にこれまでのOVAゲルとは異なる新規なテクスチャーをもつことが示唆された。
著者
太田 尚子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-25, 2006
被引用文献数
6

目 的<br>死産で子どもを亡くした母親たちのケアへのニーズと,その背景となっている思いや体験を探索する。<br>対象と方法<br>研究デザインは,質的因子探索型研究である。妊娠中期以降に,死産を経験した母親13名と早期新生児死亡を経験した母親1名の計14名を対象に,半構成的面接法によりデータを収集し,継続的に比較分析した。<br>結 果<br>母親たちのケア・ニーズには,妊娠中に築かれた子どもとの絆を確認し,母親であると自覚できることを支援する『母親になることを支える』,子どもの死亡という喪失体験が引き起こす悲嘆過程を促すことを支援する『悲嘆作業を進めることを支える』,そして,ケアに関するあらゆる場面で,母親たちの意思を尊重し,母親主導でケアを展開する『希望を引き出して意思決定を支える』があった。『母親になることを支える』の構成要素として,《希望するだけ子どもに会うこと・別れることを支える》,《生きた証を残す思い出づくり》,《火葬と供養を支える》,《子どもが生きているかのような扱い》の4つのカテゴリが抽出された。また,『悲嘆作業を進めることを支える』には,《子どもや出来事の話の引き出しと傾聴》,《泣いていいことの保証と泣ける環境》,《心の痛みを助長させない環境》,《退院後の心のサポートと情報の提供》,《母親を支援できるように家族を支える》の5つのカテゴリが抽出された。<br>結 論<br>母親たちのケア・ニーズには,母親になることへの支援,悲嘆作業を進めることへの支援,そして,あらゆるケア場面での意思決定への支援があった。
著者
太田 尚子
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

魚肉水溶性タンパク質(WSPC)のゲル化特性の解明とその高機能化を図ることを目的として,WSPCのカプリン酸ナトリウム誘導ゲル形成能をオボアルブミン(OVA)の存在下並びに非存在下で調べた.まずゲル形成に先立ち,無添加魚肉水溶性タンパク質(WSP)の動的粘弾性挙動をオレイン酸ナトリウムの存在下及び非存在下で調べたところ,無添加WSPの場合に比べ、このタンパク質-脂質混合系において水素結合が混合系サスペンジョンの弾性率の増加を促していることが示唆された.次に、WSPCを用いたレオロジー測定により、WSPC単独ではゲル形成に至らないが、OVAとの混合タンパク質では常温下でゲルを形成することが判った.この混合ゲルの微細構造を走査型電子顕微鏡観察したところ、カプリン酸ナトリウム誘導OVAゲルのそれに匹敵するくらいの微細な網目構造を持っている事が判った.更に,フーリエ変換赤外分光分析により、カプリン酸ナトリウム誘導OVAゲルの場合には、そのゲル形成過程に分子間β-シートに基づくアグリゲーションバンドが現れることが明らかになった.しかしながら,WSPCとOVAから成る混合タンパク質の場合には顕著なアグリゲーションバンドが見出されず,混合タンパク質でのゲル化に伴う二次構造変化の挙動は明らかにはできなかった.今後更に,WSPCの混合ゲル中での物性発現がどのような機構に基づいているものかを解明する事が必要である.