著者
奥田 昌明
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

琵琶湖の堆積物を分析し、モダンアナログ法を用いて化石花粉(%)を古気温(℃)に定量変換することによりMIS1~MIS11間氷期の古気温を復元した。MIS5eおよびMIS11は、気候状態が現在と似ていることから温暖化後の地球のアナログとみられる。このMIS11(43万年前)において本研究では、琵琶湖が今の和歌山県南部くらいの暖かさにあったことを突きとめた。具体的には、7千年前の気候最適期に対して+1~1.5℃、300年前の産業革命前と比べて+1.5~2.5℃の温暖環境となる。これは100年後の気温上昇と比べるとやや足りないが、今後のCO2削減努力いかんでは100年後の地球のアナログになり得る。
著者
奥田 昌明 安田 喜憲 瀬戸口 烈司
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.287-295, 1999-08-01

ギリシャ南島部コパイ湖の最終氷期に多産するキク亜科化石花粉について詳細な研究を行った結果,おもに<i>Matricaria</i>型および<i>Centaurea</i>から構成されていることが明らかとなった.この組成は,トルコのアナトリア高原南西部から報告されている後氷期の花粉組成ときわめてよく似ている.このことは,トルコの高原地帯における完新世の植生が,ギリシャ南部海岸低地における最終氷期植生の相似型となりうる可能性を示している.
著者
中川 毅 奥田 昌明 米延 仁志 三好 教夫 竹村 恵二
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.207-225, 2009-06-01 (Released:2012-03-27)
参考文献数
40
被引用文献数
4 6

過去におけるモンスーン変動のパターンを復元するための代表的な試料として,中国のレス古土壌堆積物と鍾乳石をあげることができる.だが,前者が主としてモンスーンと氷期・間氷期サイクルの密接な結びつきを示唆するのに対し,後者においては太陽放射の直接の影響の方が卓越するなど,両者の間には本質的に解決されない矛盾が存在していた.著者らは,琵琶湖の堆積物コアの化石花粉データを用いて,季節ごとの気候を過去45万年にわたって定量的に復元することで,この矛盾を統合的に説明することを試みた.その結果,シベリアと太平洋の気団の温度はいずれも氷期・間氷期サイクルに応じて変動するが,海陸の温度傾度においてはそのような変動が相殺され,むしろ太陽放射の直接の影響の方が卓越することがわかった.また海陸の温度傾度はモンスーンの直接の駆動力であるため,夏モンスーンの強度も太陽放射の変動周期に同調して(すなわち,主として23,000年の歳差運動周期で)変動していた.ただし,太陽放射の振幅が十分に大きくない時代においては,モンスーンは氷期・間氷期サイクルの方に連動する傾向が見られた.本稿では,これらの事実を総合的に説明することのできる,きわめて単純なモデルについて解説する.またモンスーンが海洋の表面温度の分布に及ぼすかもしれない長期的な影響,ならびにレス古土壌堆積物が内包している,モンスーンの記録計としての問題点についても言及する.
著者
百原 新 斎木 健一 奥田 昌明
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.211-216, 2006 (Released:2007-07-27)
参考文献数
18
被引用文献数
7 9

千葉県袖ケ浦市吉野田の更新統下総層群清川層 (MIS7.3) から, ナウマンゾウやシカ, カメ類化石とともに11分類群の大型植物化石が取り上げられた. 大型植物化石群は, サルスベリ属, ハリモミ近似種, ブナ, フジを含み, いずれも印象化石だった. このうち, サルスベリ属はヤクシマサルスベリ近似の化石種に同定された. 吉野田の当時の気候は, シマサルスベリの北限の温量指数102℃月前後の気温条件と推定された.