著者
米村 滋人 水野 紀子 武藤 香織 磯部 哲 徳永 勝士 田代 志門 奥田 純一郎 中山 茂樹 佐藤 雄一郎 猪瀬 貴道
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度分の研究活動(2018年4月~2020年3月)の実績の概要は以下の通り。当年度は、まず、総合調整班において全体的な研究計画と調査項目・検討課題を決定した。具体的には、先行研究課題である科研費・基盤研究(A)(課題番号24243017)の研究成果として、米村編『生命科学と法の近未来』(信山社、2018)が公表されているため、これを素材に国内外の関連研究者・専門家等からの意見と課題提示を受けた上で、総合調整班において検討を行った。その結果、現在の日本では臨床研究法をめぐる法運用が多大な混乱を惹起しており、医学界からは臨床研究全体が抑制されているとの指摘も見られるため、臨床研究法の法規制のあり方を検討することが適切と考えられ、海外法制度調査もその観点を中心に行う方針とした。以上をもとに、一般的実体要件班・一般的手続要件班において、国内の法学・生命倫理学・医学関係者に臨床研究法の問題点や改善の方向性等につき意見聴取を行うほか、海外の文献調査や国外の機関に対する訪問調査を行う方針とした。国内調査に関しては、各研究分担者の調査内容を研究会の場で共有したほか、永井良三・自治医科大学長や藤井眞一郎・理化学研究所生命医科学研究センターチームリーダーなど医学研究者の意見を直接聴取した。また、ドイツの臨床研究規制については、ヨッヘン・タウピッツ教授を始めマンハイム大学医事法研究所のスタッフに調査を依頼しており、その中間報告を数度にわたり聴取したほか、フランスの臨床研究規制についても文献調査の形で調査を進め、2019年3月に研究分担者・磯部哲と研究協力者・河嶋春菜の助力によりフランス渡航調査を実施した。特殊研究規制検討班においては、研究分担者・徳永勝士を中心に、国内研究機関や海外研究機関・研究者に対するヒアリング調査を行う形でゲノム研究や再生医療研究の規制状況の調査を行った。
著者
柏木 あさ子 柏木 敏宏 西川 隆 田辺 敬貴 奥田 純一郎
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.105-112, 1994 (Released:2006-06-06)
参考文献数
38

半球損傷例に出現する半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect, USN)から方向性注意の半球機能差が推測されているが,脳梁離断症状としての USN の存在は最近まで受け入れられていなかった。しかしながら,脳梁の自然損傷例では既に少なくとも数例に右手における左 USN が記載されている。詳細な検索が行われた自験例YYにおいては,反応が左半球に依存する課題で顕著な左 USN が検出されたのみでなく,右半球に依存する課題で軽度右 USN が検出された。他方,明らかな USN は出現しないとされていた脳梁の外科的全切断例においても,一部の症例に右手における左 USN の記載がある。難治性てんかん患者では,幼少期からの脳損傷やてんかんの持続のために脳の機能差の形成が健常人より弱いことが推測されている。外科的全切断例の多くに USN が観察されないのはその反映と推察される。これらのことからわれわれは脳梁離断症状としての USN の存在を認めてよいと考えた。背景となる半球機能差としては, Mesulam の「右利き健常人では,左半球は主に右空間に,右半球は左空間に加えやや弱いながら右空間にも注意機能を持つ。」との説が有力である。