著者
宍戸 俊英 三浦 一郎 渡辺 和吉 野田 治久 林 建二郎 桶川 隆嗣 奴田原 紀久雄 東原 英二
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.731-735, 2005-11

尿膜管疾患14例について検討した.その結果,尿膜管膿瘍は10例で,臨床症状は下腹部痛/臍部排膿と発熱が多く,尿細胞診はclass IIが最も多かった.尿膜管癌は4例で,全例に無症候性肉眼的血尿が見られ,class IIは2例で,血清腫瘍マーカーの上昇を3例に認めた.尿膜管膿瘍では腹部エコー及びMRIを施行した症例では全例で病巣部を描出することができ,T2強調画像で低信号を呈したが,尿膜管癌では内部不均一な等~高信号であった.尿膜管膿瘍の8例に尿膜管摘除術を施行し,尿膜管癌3例には骨盤内リンパ節郭清と尿膜管摘除及び膀胱温存のため膀胱部分切除術を行った.尿膜管癌の2例のみ再発を認め,両症例共に癌死したが,尿膜管膿瘍では再発は認めなかった

1 0 0 0 序文

著者
荒川 孝 奴田原 紀久雄
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1, 2015

従来の上部尿路結石破砕治療の評価は,1989年に日本泌尿器科学会雑誌に公表された故園田教授等による『Endourology・ESWLによる結石治療の評価基準』が大筋で用いられていた.しかし近年においては,この評価基準が公表からあまりにも時間が経過しているためその存在が忘却され,各学会発表,各掲載論文がそれぞれ異なる基準により報告されていることが多く統一性が失われ,それ故それぞれの治療成績の比較が正当に行われているか否かに疑問が残される.また,結石の大きさの評価法も時代とともに変化してきている.これらの事柄を修正し,AUA,EAUいずれの最新ガイドラインでも示されていない,時代に即応した『新たな尿路結石治療効果判定』を提案するべく,2011年秋頃より荒川と東先生,麦谷先生,山口先生の4人の有志により模索が始められた.これは新たなルール作成の作業であるため,慎重に時間と手間を掛け,2013年の日本尿路結石症学会第23回学術集会と第27回日本泌尿器内視鏡学会総会,2014年の第102回日本泌尿器科学会総会と第79回日本泌尿器科学会東部総会の4つの学会において,各学会会長のご理解とご協力のもと『新たな尿路結石治療効果判定の提案』と題した内容でシンポジウムを開催させて頂いた.繰り返し会員の先生がたのご意見を伺いながらversion upし,最終的に今回の本誌特集に於いて論文発表をさせて頂いた.その過程で先の4人に加え,宮澤先生,奴田原先生にもご参加頂き,合計6人が今回の特集の構成メンバーとなった.本特集では,最初に宮澤先生より『国内外における結石破砕治療評価の現状について』と題してご報告頂く.現状では,治療前の結石の大きさの表現方法はKUBや超音波検査による結石の長径,近年の尿路結石診断で多用されるCT検査を用いた結石の表面積を用いたものや,3次元画像を用いた結石の体積など様々である.小さな結石であれば大きな誤差は少ないかもしれないが,大きな結石になると,単純な長径だけの比較と表面積や体積の比較では大きな違いが生じてくる.この疑問に答えるべく東先生は『結石の大きさの術前評価と残石の評価法』において結石の大きさを体積表記に統一する提案をされている.様々なデータ解析を用いて,CTを実施していない症例に於いても簡便に体積の近似値を求める計算式を提示されている.更には,大きな結石に於いては残石率という概念の提案も併せてなされている.結石の外科的治療は完全摘出が基本であろうが,評価の一助となろう.また,治療結果の判定においては,stone freeのみが治療成功の評価なのであろうか?との疑問もある.つまり結石の存在により生じた尿の通過障害の解除は評価されなくてよいのであろうかという点である.これにつき麦谷先生は『結石治療後の尿路閉塞解除の評価について』の中で,結石による閉塞の解除が確認できた症例を成功例とする提案を行っている.最後に山口先生より我々6名の提案を具体的な表にして示して頂いた.これらの提案は,学会の正式な委員会設置によるものではないので拘束性は無い訳であるが,一つでも多くの学会報告,論文作成においてお役に立つ事が適うならば,我々6名望外の喜びである.なお,この特集の根幹をなす東先生の論文に於ける共同著者である山田先生に対し,膨大な数の症例のデータ分析に多大なるご尽力を頂いた事に対し,深く感謝申し上げる次第である.
著者
宍戸 俊英 榎本 香織 藤田 直之 鈴木 敦 林 建二郎 野村 昌史 板谷 直 多武保 光宏 渡辺 和吉 野田 治久 桶川 隆嗣 奴田原 紀久雄 東原 英二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.543-550, 2008-03-20
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

(目的) 前立腺肥大症患者に対して実施した, ホルミウムレーザー前立腺核出術 (HoLEP) と経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) による治療効果を比較検討した.<br>(対象と方法) 2004年4月から2006年3月までの間にTUR-Pを施行した患者41人 (平均年齢69.2±7.3歳) と, 2005年12月から2007年2月までの間にHoLEPを施行した患者46人 (平均年齢68.2歳±7.5歳) の計87人を対象とした.<br>(結果) 両群間に患者年齢, 術前のIPSS, QOL index, 残尿量, 最大尿流率, 平均尿流率, 推定前立腺容積に有意差はなかった. ヘモグロビンの低下はTUR-P群1.91±1.3, HoLEP群1.15±1.2 (P<0.05) とHoLEP群で有意に少なかった. 手術時間はTUR-P群で118.3±369分, HoLEP群161.9±65.0分とHoLEP群で有意に長かった (p<0.001). 切除重量はTUR-P群が29.3±13.3g (10~55), HoLEP群34.8±33.4g (5~148) で有意差はなかった (p=0.337). カテーテル留置期間 (115.2±27.5vs52.1±29.6時間p<0.001) および入院期間 (9.4±2.2vs6.6±2.3日p<0.001) はHoLEP群で有意に短かった. また, 術後3ヵ月目のIPSS, QOL index, 残尿量, 最大尿流率, 平均尿流率に有意差を認めなかった.<br>(結論) HoLEPはBPHによる下部尿路閉塞に対し, TUR-Pと同等の治療効果を認めた. またTUR-Pに比べ出血が少なく, カテーテル留置期間や入院期間も短かった. HoLEPはTUR-Pの代替治療になり得る有力な治療選択肢であると考えられた.
著者
庄司 信行 新家 真 奴田原 紀久雄 東原 英二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.647-651, 1990-05-15

炭酸脱水酵素阻害剤(CAI)を1年以上投与されている緑内障患者32例に著明な代謝性アシドーシスとそれに対する呼吸性代償,骨塩の融解および尿での骨塩の漏出とカルシウム溶解性の低下が認められた。 このうち22例にクエン酸製剤ウラリット-U®を投与したところ,眼圧の変化はなく,骨塩漏出の低下と代謝性アシドーシスが改善した。 以上の結果からCAI長期使用例,とくに骨系統の疾患や慢性肺疾患の合併頻度の高い老人では,定期的な血中重炭酸とカルシウムイオンのチェックが必要である。ウラリット-U®はCAIの併用薬として有望である。
著者
林 建二郎 宍戸 俊英 菅田 明子 中村 雄 板谷 直 原 秀彦 多武保 光宏 桶川 隆嗣 東原 英二 奴田原 紀久
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.137-141, 2015 (Released:2015-05-27)
参考文献数
10

【目的】高齢者におけるホルミウムレーザー前立腺核出術(holmium laser enucleation of the prostate:HoLEP)の治療成績を若年者の成績と比較検討した. 【対象と方法】2005年12月から2010年5月の期間にHoLEPを施行した患者168例を後期高齢者とされる75歳以上51例の群と74歳以下117例の群にわけ,自覚症状の変化や尿流動態および合併症を比較検討した. 【結果】両群でともに有意な自覚症状の改善,尿流動態の改善が認められた(p<0.001).合併症は74歳以下の群で一過性尿閉5例(4.3%),精巣上体炎5例(4.3%),後出血4例(3.4%)を認め75歳以上の群より多かった.両群間で術後のヘモグロビン減少や輸血率,尿失禁の合併に有意差はなかった. 【結語】HoLEPは高齢者の前立腺肥大症に対し,比較的侵襲の少ない有用な術式と考えられた.
著者
東原 英二 奴田原 紀久雄
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1545-1560, 1991-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
148

常染色体優性遺伝嚢胞腎 (ADPKD) は進行性の腎機能低下が主要な病態であるが, その予後は従来いわれているように「診断後10年で腎不全に到る」ものでもなく, 腎不全が不可避でもない. 本邦での透析導入時平均年齢は52~56歳であるが, 透析に移行しない者も含めると, おおよそ平均73歳で終末期腎不全に到る. 60歳代で透析を受ける割合は約40%であり, 本邦のADPKDの予後は欧米よりも若干良好である可能性がある.ADPKDの遺伝子は第16染色体の短腕上のα-globin 遺伝子の近くに存在することが確かめられている. この遺伝子 (PKD1) によるADPKDと, PKD1の関与が証明定れないADPDKでは, 腎機能の予後が異なることが報告定れている.高血圧は約60%に認められる. 嚢胞の圧迫によって腎動脈が狭細化し, レニン―アンギオテンシン―アルドステロン系が刺激定れることが高血圧発症の端緒であり, 片側性腎血管性高血圧と異なり両腎が侵されているので, 圧Na利尿がおこらず, Naが体内に貯留し高血圧となると考えられている.肝嚢胞の合併頻度は57%で高齢になるに従い増大し, 肝嚢胞の有る者ほど腎機能は悪い. 肝嚢胞と膵嚢胞 (7%) の合併は有意に相関する. 経皮的嚢胞穿刺を行っても腎機能は改善せず, 出血や感染などの合併症もあるので激しい疼痛や管理の困難な感染の治療を目的とする以外は実施すべきではないと考えられる. その他ADPKDには, 腎結石 (10~18%), 大腸憩室 (80%), 頭蓋内動脈瘤 (8%), 心臓弁膜の閉鎖不全 (20~30%) などの合併症がある.