著者
矢部 信成 村井 信二 横瀬 崇寛 尾戸 一平 吉川 貴久 北里 憲司郎 清水 裕智 小島 健司 水野 達人 大久保 恒希 味生 洋志 池谷 仁美 林 量司 中村 雄二 浅野 朗
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society Kanto Chapter
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.184-185, 2015
被引用文献数
3

Transanal rectal foreign bodies are foreign items retained in the rectum following direct insertion through the anus. In general, the treatment strategy is to attempt endoscopic removal of the foreign body through the anus. At our hospital, there were 4 cases of rectal foreign bodies during the 4-year period from April 2010 to March 2014, and the foreign bodies were removed endoscopically in all the cases. All the patients were male, with a median age of 22.5 years (16 to 87 years) . Their motives for the foreign body insertion were sexual preference in 2 cases, amusement in 1 case, and habitual practice to induce defecation in 1 case. The foreign bodies found were vibrators in 2 cases, the plastic cap of an nasal spray in 1 case, and a toothbrush in 1 case. In all the cases, the removal was carried out under intravenous conscious sedation. The instruments to be used for the removal procedure were determined according to the case. Non-invasive procedures for the removal of transanal rectal foreign bodies are greatly beneficial for the patients.
著者
若松 祐三 中村 雄一 重信 隆彰 石山 重行 草野 健 前之原 茂穂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.314, 2008 (Released:2009-02-04)

〈緒言〉昨今の食事の欧米化、運動不足に伴い肥満人口が増加している。体脂肪率、BMIは肥満の判定に有効な手段だが、メタボリックシンドロームの病態基盤である内臓脂肪量評価との関係性を調べることにより、当センター検診CTにおける内臓脂肪量評価の基準(内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量100cm2未満 正常、100cm2以上150cm2未満 多い、150cm2以上 非常に多い)の妥当性を確認する。なお当センターでは平成19年1月よりMS診断の補助としてCTによる内臓脂肪測定を開始している。今回平成19年4月より1年間おける受診者の測定結果と体脂肪率、BMI、との関係について検討した。対象及び方法)平成19度人間ドック受診者11712名中 CTによる内臓脂肪測定を行った1631名(男性:1042名 女性:589名)を対象とした。使用機器は東芝製Asteion4、内蔵脂肪解析ソフトはN2システム Fat Scan、TANITA 身長体重計を使用した。臍の高さ、呼気時のCT撮影、Fat Scanで処理したCT断面図により腹壁の筋肉を境にして外側を皮下脂肪、内側を内臓脂肪とした。内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量が100cm2未満を_I_群、100cm2以上150cm2未満を_II_群、150cm2以上を_III_群とし、その3つの群と、体脂肪率、BMIとの関係を調べ、内臓脂肪量の至適基準を検討する。結果)内臓脂肪量をGold standardとしてBMI、体脂肪率を検討した。BMI正常者の内臓脂肪量の平均は82.148cm2標準偏差43.007、またBMI異常者では平均136.168cm2標準偏差55.560となった。体脂肪率正常者の内臓脂肪量の平均は男性102.871cm2標準偏差47.771、女性は54.377cm2 標準偏差29.894となった。体脂肪率異常者の男性の平均は144.199cm2 標準偏差57.423、女性は平均97.978cm2 標準偏差43.576となった。さらに男性の体脂肪率25%未満、女性の体脂肪率30%未満を体脂肪率正常者、それ以上を体脂肪率異常者とした場合、男性の体脂肪率正常者は_I_、_II_、_III_群それぞれ82.7%、61.4%、43.7%となり、女性の体脂肪率正常者はそれぞれ63.4%、16.3%、13.5%となっている。_I_群の場合でも体脂肪率異常者が存在し、また男性の内臓脂肪量100cm2以上の_II_,_III_群にも体脂肪率正常者が存在している。次に内臓脂肪量各群とBMIとの関係について検討した。BMI25未満を正常者、25以上を異常者とした場合、正常者は_I_群では79.7%で_II_群、_III_群になるとそれぞれ48.7%、26.3%と減少傾向にある。これは皮下脂肪などの全構成要素か含まれた為だと考えられる。 BMI、体脂肪率は、肥満の度合いを知る為の簡便な方法ではあるが、必ずしも内臓脂肪量を正確に反映してるとは言えない。内臓脂肪量の正確な測定法としては、CTがもっとも適していると思われる。さらにメタボリックシンドロームとの関連も検討して報告する。
著者
半田 瞳 中村 雄一 半田 学 竹島 憲一郎
出版者
日本徒手理学療法学会
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.45-49, 2021 (Released:2021-11-11)
参考文献数
23

〔目的〕難治性の有痛性外脛骨に対し,Fascial Manipulation(以下FM)を実施したため改善効果を報告する。〔対象〕本症例はVeich分類Ⅱ型の有痛性外脛骨と診断され手術療法が検討された1症例とした。〔方法〕疼痛評価,足関節・後足部判定基準および歩行能力の評価を実施した。さらに,足部の形態測定としてアーチ高率および開張率を計測した。理学療法としてFMを実施した。〔結果〕足部の形態の変化はみられなかったものの,疼痛の軽減に伴い歩行能力が向上した。〔結論〕有痛性外脛骨に対する徒手療法としてFMは有用である可能性が示唆された。
著者
勝木 美佐子 中村 雄二 平野 正憲 野本 一臣 今井 道代
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.715-718, 2012 (Released:2013-04-01)
参考文献数
12

目的:ビリルビンは,強力な抗酸化物質であり,動脈硬化予防に作用している可能性があると報告されていることから,生活習慣と総ビリルビン値に関連性があるかを検討した.方法:対象は平成22年に当クリニックを受診し,体質性黄疸が考えられる総ビリルビン値2.3mg/dL以上を除外した21,166名(男性12,622名,女性8,544名)である.生活習慣に関しては,喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,ストレス,睡眠時間について,自記式問診票にて確認した.体格については,body mass index(BMI)を18.5未満(やせ群),18.5以上25.0未満(標準群),25.0以上(肥満群)の3群に分け,それぞれ総ビリルビン値の平均値について検討した.総ビリルビンは酵素法にて測定した.成績:喫煙習慣について,総ビリルビン値は男女ともになし群,やめた群,あり群の順に有意に高値であった.飲酒習慣については,飲酒習慣のない者が男女とも総ビリルビン値が有意に低値であった.運動習慣については,運動習慣のない者が男女とも有意に低値であった.ストレスと睡眠時間については,男女とも総ビリルビン値と関連を認めなかった.体格については,男女ともに,やせ群,標準群,肥満群の順で有意に高値であった.結論:喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,体格(BMI)において総ビリルビンとの関連がみられた.今後,ビリルビンと生活習慣病の発症・進展における役割についての検討が必要と思われる.
著者
寺田 勝彦 藤田 修平 田端 洋貴 脇野 昌司 井上 美里 中前 あぐり 小尾 充月季 辻本 晴俊 中村 雄作
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ac0400-Ac0400, 2012

【目的】 脊髄小脳変性症(Spino-cerebellar degeneration:SCD)の立位・歩行障害の改善には,体幹の前後動揺,体幹・四肢の運動失調によるバランス障害,脊柱のアライメント異常による歩行のCentral pattern generator(CPG)の不活性化に対応した多面的アプローチ(the multidimensional approach:MDA)が必要である.今回,SCDの立位・歩行障害へのMDAの有効性について検討した.【対象および方法】 当院の神経内科でSCDと診断され,磁気刺激治療とリハビリテーション目的に神経内科病棟に入院した40例である.無作為に,従来群(the conventional approach group:CAG)20例(MSA;5例,SCA6;12例,SCA3;3例),多面的アプローチ群(MDAG)20例(MSA;8例,SCA6;8例,SCA3例;ACA16;1例)に分別した.CAGでは,座位・四這位・膝立ち・立位・片脚立位でのバランス練習,立ち上がり練習,協調性練習,筋力増強練習,歩行練習を行なった.MDAGでは,皮神経を含む全身の神経モビライゼーションと神経走行上への皮膚刺激,側臥位・長座位・立位・タンデム肢位での脊柱起立筋膜の伸張・短縮による脊柱アライメントの調整,四這位・膝立ち.立位およびバランスパッド上での閉眼閉脚立位・閉眼タンデム肢位での身体動揺を制御したバランス練習,歩行練習を行なった. 施行時間は両群共に40分/回,施行回数は10回とした.評価指標はアプローチ前後の30秒間の開眼閉脚・閉眼閉脚・10m自立歩行可能者数,10m歩行テスト(歩行スピード,ケイデンス),BBS,ICARSの姿勢および歩行項目,VASの100mm指標を歩行時の転倒恐怖指数とし,両群の有効性を比較検討した.統計分析はSPSS for windowsを用い,有意水準はp<.05とした.【説明と同意】 本研究に際して,事前に患者様には研究の趣旨,内容および調査結果の取り扱い等を説明し同意を得た.【結果】 CAGの開眼閉脚の可能者数は13例(65%)から14例(70%)(p<.33), 閉眼閉脚は7例(35%)から9例(45%)(p<.16),10m自立歩行は14例(70%)から14例(70%)(p<1.00)と有意差は認められなかった.MDAGでは,開眼閉脚が14例(70%)から20例(100%)(p<.01),閉眼閉脚が6例(30%)から14例(70%)(p<.002),10m自立歩行が12例(60%)から20例(100%)(p<.002)と有意に改善した.CAGの歩行スピード(m/s.)は,0.56±0.24から0.69±0.28(p<.116),ケイデンス(steps/m.)は101.4±20.2から109.8±13.3(p<.405)と有意差は認められなかった.MDAGの歩行スピードでは,0.69±0.21から0.85±0.28(p<.000),ケイデンスは110.6±13.6から126.6±22.4(p<.049)と有意に改善した.CAGのBBS(点)は33.2±14.6から37.4±14.0(p<.01),ICARS(点)は17.2±7.9から15.4±8.5(p<.000)と有意に改善した.MDAGのBBSでは,30.0±9.1から40.9±6.8(p<.000),ICARSは16.1±4.9から9.4±3.0(p<.000)へと有意に改善した.CAGのVAS(mm)は55.7±28.1から46.3±29.0(p<.014)と有意に改善した.MDAGのVASでは72.4±21.6から31.4±19.4(p<.000)へと有意に改善した.また両群で有意に改善したBBS・ICARS・VASの改善率(%;アプローチ後数値/アプローチ前数値×100)は,CAGでは順に,15.2±17.3,15.0±18.0,22.1±44.3,MDAGでは33.1±17.3,43.7±9.9,59.2±21.7と,それぞれにp<.03,p<.001,p<.002と,MDAGの方が有意な改善度合いを示した.【考察】 今回の結果から,磁気治療との相乗効果もあるが,MDAGでは全ての評価指標で有意に改善し,BBS・ICARS・VASでの改善率もCAGよりも有意に大きく,立位・歩行障害の改善に有な方法であることが示唆された.その理由として,SCDでは体幹の前後動揺,体幹・四肢の運動失調による求心性情報と遠心性出力の過多で皮神経・末梢神経が緊張し,感覚情報の減少や歪みと筋トーンの異常が生じる.皮神経を含む神経モビライゼーションで,皮膚変形刺激に応答する機械受容器と筋紡錘・関節からのより正確な感覚情報と筋トーンの改善が得られた.また神経走行上の皮膚刺激で末梢神経や表皮に存在するTransient receptor potential受容体からの感覚情報の活用とにより,立位・歩行時のバランス機能が向上したといえる.その結果,歩行時の転倒恐怖心が軽減し,下オリーブ核から登上繊維を経て小脳に入力される過剰な複雑スパイクが調整され小脳の長期抑制が改善された事,脊柱アライメント,特に腰椎前彎の獲得により歩行のCPGが発動され,MDAGの全症例の10m自立歩行の獲得に繋がったといえる.【理学療法研究としての意義】 SCDの立位・歩行障害の改善には確立された方法がなく,従来の方法に固執しているのが現状である.今回のMDAにより,小脳・脳幹・脊髄の細胞が徐々に破壊・消失するSCDでも立位・歩行障害の改善に繋がったことは,他の多くの中枢疾患にも活用し得るものと考える.
著者
中村 雄祐 美馬 秀樹 増田 勝也 鈴木 親彦
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014-CH-102, no.5, pp.1-5, 2014-05-24

人文学・社会学における学際研究とはどのようなものなのか,これからどのように発展させていくのか.我々は,東京大学大学院人文社会系研究科に 2000 年に設立された人文社会系の学際的研究・教育プログラム,「文化資源学研究専攻」 を対象に研究領域の形成過程を分析している.具体的には,文化資源学研究専攻の授業シラバス (2013 年時点で約 600 件),および修士論文 (2013 年時点で約 80 本) の 「論文要旨」 「参考文献一覧」 を対象として,報告者の一人である美馬 (東京大学知の構造化センター准教授) が中心となり開発したテキスト分析システム MIMA SEARCH を用いて解析し,中村 (東京大学大学院人文社会系研究科准教授)・鈴木 (同博士課程) がその解釈を行っている.今回は,シラバスと修士論文要旨についての分析・解釈を報告する.
著者
田端 洋貴 藤田 修平 脇野 昌司 辻本 晴俊 中村 雄作 阪本 光 上野 周一
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0842, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】当院では2015年10月よりロボットスーツHAL FL-05(以下HAL)を導入し運用を開始している。近年HALに関する報告は散見するが,神経難病に対する効果についての報告は僅少である。そこで当院における神経難病患者に対するHAL導入効果を検討したので報告する。【方法】HAL導入基準は,歩行補助具の有無や種類に関わらず,見守りまたは自立して10m歩行可能な神経難病疾患とした。対象は11例(男性5名,女性6名),平均年齢54.8±18.3歳で,対象疾患は,脊髄小脳変性症7例,筋ジストロフィー1名,筋萎縮性側索硬化症1名,多発性硬化症2名であった。1患者当りのHAL歩行練習実施時間は,着脱を併せて1回60分,アシスト量は被験者が快適に感じ,且つ理学療法士が歩容を確認しながら適宜調整した。歩行練習には,転倒防止の為にAll in oneを使用し,実施回数は1患者当り平均12.4±3.7回であった。測定項目は,歩行評価として10m最大歩行速度,バランス評価としてTimed Up and Go test(以下TUG)をHAL実施前(HAL前)とリハビリ終了後(HAL後)に測定した。統計学的分析にはWilcoxonの符号付き順位検定にて有意水準は5%未満とした。【結果】10m最大歩行速度は,HAL前0.75±0.31m/s,HAL後0.99±0.38m/s,歩幅は,HAL前0.45±0.11m,HAL後0.51±0.11m,歩行率は,HAL前95.7±28.8 steps/min,HAL後113.2±27.2steps/minであった。TUGはHAL前25.9±24.4s,HAL後17.4±9.7sであった。HALによるリハビリにより歩行速度や歩幅,歩行率などの歩行パフォーマンスと,バランス指標であるTUGにおいて有意な改善を示した。歩行速度の向上には歩幅と歩行率の改善が寄与するとされ,HALは荷重センサーにより重心移動を円滑に行わせ,律動的で一定の正確な歩行リズム形成により歩行率を高め,歩容などが改善した結果歩行速度が向上したと考えられた。また歩行速度の向上に求められるトレーニング要素としてはトレーニング量があり,HALが歩行アシストする事で身体にかかる負担が軽減された事により,歩行速度向上に繋がる十分な練習量の獲得が,過用・誤用症候群の出現なく達成出来たものと考える。【結論】神経難病は多くが進行性で,確立した治療法が無く,早期からのリハビリテーションによる機能維持が重要である。今回の結果から,HALによる歩行練習により歩行能力,バランス能力に改善効果を認めた。この事は,ADLやQOLの維持・向上につながり,神経難病に対する有効なリハビリテーションツールの1つとして非常に意義のあるものと考える。今後は,より効果の高い具体的な介入方法などを検証し,有効的なHALの使用方法の確立を目指していく。
著者
熊木 俊朗 大貫 静夫 佐藤 宏之 設楽 博己 國木田 大 夏木 大吾 福田 正宏 笹田 朋孝 佐野 雄三 守屋 豊人 山田 哲 中村 雄紀 守屋 亮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

擦文文化期における地域間交流や社会変化の様相を解明するため、北見市大島2遺跡にて擦文文化の竪穴住居跡の発掘調査を実施した。大島2遺跡は標高の高い尾根上というやや特異な環境下にあり、低地や砂丘上にある他の集落とは異なる性格を有することが予想されたが、発掘調査の結果、海獣狩猟や動物儀礼、住居の廃絶儀礼、建築木材の選択、木製品の様相などに、オホーツク文化やトビニタイ文化との関連を思わせるような特徴が認められることが明らかになった。
著者
寺田 勝彦 藤田 修平 田端 洋貴 脇野 昌司 井上 美里 中前 あぐり 小尾 充月季 辻本 晴俊 中村 雄作
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ac0400, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 脊髄小脳変性症(Spino-cerebellar degeneration:SCD)の立位・歩行障害の改善には,体幹の前後動揺,体幹・四肢の運動失調によるバランス障害,脊柱のアライメント異常による歩行のCentral pattern generator(CPG)の不活性化に対応した多面的アプローチ(the multidimensional approach:MDA)が必要である.今回,SCDの立位・歩行障害へのMDAの有効性について検討した.【対象および方法】 当院の神経内科でSCDと診断され,磁気刺激治療とリハビリテーション目的に神経内科病棟に入院した40例である.無作為に,従来群(the conventional approach group:CAG)20例(MSA;5例,SCA6;12例,SCA3;3例),多面的アプローチ群(MDAG)20例(MSA;8例,SCA6;8例,SCA3例;ACA16;1例)に分別した.CAGでは,座位・四這位・膝立ち・立位・片脚立位でのバランス練習,立ち上がり練習,協調性練習,筋力増強練習,歩行練習を行なった.MDAGでは,皮神経を含む全身の神経モビライゼーションと神経走行上への皮膚刺激,側臥位・長座位・立位・タンデム肢位での脊柱起立筋膜の伸張・短縮による脊柱アライメントの調整,四這位・膝立ち.立位およびバランスパッド上での閉眼閉脚立位・閉眼タンデム肢位での身体動揺を制御したバランス練習,歩行練習を行なった. 施行時間は両群共に40分/回,施行回数は10回とした.評価指標はアプローチ前後の30秒間の開眼閉脚・閉眼閉脚・10m自立歩行可能者数,10m歩行テスト(歩行スピード,ケイデンス),BBS,ICARSの姿勢および歩行項目,VASの100mm指標を歩行時の転倒恐怖指数とし,両群の有効性を比較検討した.統計分析はSPSS for windowsを用い,有意水準はp<.05とした.【説明と同意】 本研究に際して,事前に患者様には研究の趣旨,内容および調査結果の取り扱い等を説明し同意を得た.【結果】 CAGの開眼閉脚の可能者数は13例(65%)から14例(70%)(p<.33), 閉眼閉脚は7例(35%)から9例(45%)(p<.16),10m自立歩行は14例(70%)から14例(70%)(p<1.00)と有意差は認められなかった.MDAGでは,開眼閉脚が14例(70%)から20例(100%)(p<.01),閉眼閉脚が6例(30%)から14例(70%)(p<.002),10m自立歩行が12例(60%)から20例(100%)(p<.002)と有意に改善した.CAGの歩行スピード(m/s.)は,0.56±0.24から0.69±0.28(p<.116),ケイデンス(steps/m.)は101.4±20.2から109.8±13.3(p<.405)と有意差は認められなかった.MDAGの歩行スピードでは,0.69±0.21から0.85±0.28(p<.000),ケイデンスは110.6±13.6から126.6±22.4(p<.049)と有意に改善した.CAGのBBS(点)は33.2±14.6から37.4±14.0(p<.01),ICARS(点)は17.2±7.9から15.4±8.5(p<.000)と有意に改善した.MDAGのBBSでは,30.0±9.1から40.9±6.8(p<.000),ICARSは16.1±4.9から9.4±3.0(p<.000)へと有意に改善した.CAGのVAS(mm)は55.7±28.1から46.3±29.0(p<.014)と有意に改善した.MDAGのVASでは72.4±21.6から31.4±19.4(p<.000)へと有意に改善した.また両群で有意に改善したBBS・ICARS・VASの改善率(%;アプローチ後数値/アプローチ前数値×100)は,CAGでは順に,15.2±17.3,15.0±18.0,22.1±44.3,MDAGでは33.1±17.3,43.7±9.9,59.2±21.7と,それぞれにp<.03,p<.001,p<.002と,MDAGの方が有意な改善度合いを示した.【考察】 今回の結果から,磁気治療との相乗効果もあるが,MDAGでは全ての評価指標で有意に改善し,BBS・ICARS・VASでの改善率もCAGよりも有意に大きく,立位・歩行障害の改善に有な方法であることが示唆された.その理由として,SCDでは体幹の前後動揺,体幹・四肢の運動失調による求心性情報と遠心性出力の過多で皮神経・末梢神経が緊張し,感覚情報の減少や歪みと筋トーンの異常が生じる.皮神経を含む神経モビライゼーションで,皮膚変形刺激に応答する機械受容器と筋紡錘・関節からのより正確な感覚情報と筋トーンの改善が得られた.また神経走行上の皮膚刺激で末梢神経や表皮に存在するTransient receptor potential受容体からの感覚情報の活用とにより,立位・歩行時のバランス機能が向上したといえる.その結果,歩行時の転倒恐怖心が軽減し,下オリーブ核から登上繊維を経て小脳に入力される過剰な複雑スパイクが調整され小脳の長期抑制が改善された事,脊柱アライメント,特に腰椎前彎の獲得により歩行のCPGが発動され,MDAGの全症例の10m自立歩行の獲得に繋がったといえる.【理学療法研究としての意義】 SCDの立位・歩行障害の改善には確立された方法がなく,従来の方法に固執しているのが現状である.今回のMDAにより,小脳・脳幹・脊髄の細胞が徐々に破壊・消失するSCDでも立位・歩行障害の改善に繋がったことは,他の多くの中枢疾患にも活用し得るものと考える.
著者
中村 雄二郎
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1967, no.17, pp.115-139, 1967-03-31 (Released:2009-07-23)
参考文献数
23