著者
定延 利之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

とりたて表現の数量的側面に関する振る舞いを記述し、この振る舞いを成立させている要因として、「体験vs.知識」という言語情報の区別を浮き彫りにした(「11研究発表」の欄の図書を参照)。そして、この振る舞いに関する日本語と中国語の共通点と相違点を明らかにするとともに、それらがとりたて表現だけでなく、他の表現にも並行的に観察されることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文1点目)。次に、これらの共通点と相違点を説明できるモデルを考察した。具体的に言うと、この区別がとりたて表現だけでなく、さまざまな言語表現に共通して見られることを論じ、特に体験の関わる言語表現には、これまで考えられていない新しいデキゴトモデルが必要であることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文3点目)。また、それらのうち時間表現については、「情報のアクセスポイント」の観点から、特に詳細な論を展開した(論文4点目)。場所表現についても、モノとデキゴトに関する考察に基づき、詳しい論を展開した(論文6点目)。さらに、「体験vs.知識」という区別が言語情報にとどまらない、人間のコミュニケーションに深く根ざしたものであることを論じた。具体的には、この区別が話し言葉・書き言葉という位相差や(論文2点目)、声質のような言語行動(論文5点目)に関与していることを明らかにし、これまでの言語研究やコミュニケーション研究が知識表現に偏って進展してきており、体験表現が不当に無視ないし軽視されてきていることを示した。
著者
定延 利之 杉藤 美代子 友定 賢治 CAMPBELL Nick 犬飼 隆 森山 卓郎 本多 清志 朱 春躍
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

「音声言語」教育の基礎資料を作成するという本研究の目的を果たすために、基礎資料の全体的デザインを検討し、検討結果を反映させる形で調音映像資料と、会話音声資料の作成をおこなった。調音映像資料については45回を越える実験を通して「母音」「rとl」「有声音・無声音」「口蓋化」「促音」「無声化」「早口言葉」「りきみ」「空気すすり」等の映像資料を元にした。その中心は日本語であるが、比較対照のために英語・中国語の実験もおこない、調音映像の資料を作った。会話音声資料については、基礎資料作成のための材料として、大学生対話や低年齢層話者も含めた家庭内会話、社会人会話など100時間にせまる会話の映像と音声を記録・観察した。これらの作業の過程で、たとえばりきみや空気すすりのように、これまで軽視されていた行動が、大きな役割を果たすことを明らかにした。また、調音動態と会話分析の双方を収容する包括的な枠組みとして「文法」(音声文法)の必要性を明らかにした。以上の作業を通して得られた知見は、その都度「基礎資料の全体的デザイン」の再検討に反映した。得られた知見の学会発表や論文集出版、パネルディスカッション企画、24回の打ち合わせを通して、音声文法の若手研究人材の育成につとめた。これらの知見を日本語教育や国語教育に真に役立てるために、日本語教育や国語教育の関連学会大会でのデモや発表をおこない、「日本語音声コミュニケーション教育研究会」「日本語音声コミュニケーション研究会」を立ち上げ、成果を問うた。それとともに、インターネット上に基礎資料のサンプルを一部英語版も含めてアップし、国際的な規模で、教育現場の意見のフィードバックをおこなった。また、われわれの活動を広報するために、学会講演や一般書の出版、国際ワークショップ開催や新聞インタビュー、広報誌でPRするとともに、インターネット上にホームヘージを開設した。
著者
キヤンベル ニツク 定延 利之 柏岡 秀紀
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究のはじめに「対話構造」、「アクティブ・リスニング」を主なテーマとして、招待講演や国内および国際会議での発表を多く行った。本プロジェクトにより、新たな技術を得てはいないが、自然音声対話に関しての合成と認識手法に関して理解を深めることが可能となった。また本研究はEUのプロジェクトであるSocial Signal Processingに影響を及ぼした。さらに大規模マルチモーダルコーパスを数カ国の大学と協力して収録し、ウェブページhttp://www.speech-data.jp/nick/mmx/d64.htmlにそのデータベースを掲載した。最後に本研究で開発された画像処理モジュール、音声処理モジュールを含み、簡単な会話が可能なロボット"Herme"を完成させた。"Herme"は現在アイルランドに展示されており、ロボットとの対話音声コーパスの収録を行っている。