著者
灰谷 謙二 友定 賢治 小西 いずみ 岩城 裕之 有元 光彦
出版者
尾道市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中国地方方言は、西日本方言の広がりにおいてそれを促進する役目をもつのか、妨げ停滞させる役目をもつのか。たとえば断定辞は中世のデアからヂャ・ジャをへてヤへ変化する流れがあり、それは現在の方言分布状況と一致する。この流れで中国地方はジャからヤへ移行するかとみると、九州がその動きを速く見せるのに比して、ここではそれが遅い。そのような変化と伝播の「淀み」の成因を明らかにし、ひいては日本語方言状況の成立において中国地方方言がどのように位置付けられるかを明らかにすることの基礎研究たらんとし、東西・南北・円環のうち東西山間部・沿岸部の2経路においてどのような伝播の速度差があるかを追跡した。
著者
友定 賢治 陣内 正敬
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.84-91, 2004-09-30

近年,関西方言が,一度東京を経由しての全国発信であるが,若年層を中心に全国的に広がりつつあり,地元方言や共通語とともに新しいスピーチスタイルが形成されつつある.それは単に「ことば」だけではなく,関西的なコミュニケーションの受け入れという面がある.関西的な「楽しさ」「笑い」が,現在の豊かな社会・娯楽社会での,会話を楽しむという時代風潮に一致したためであろう.関西方言受容の背景にある日本人のコミュニケーション観にも変化が生じているということである.
著者
定延 利之 キャンベル ニック 森 庸子 エリクソン ドナ 金田 純平 坂井 康子 匂坂 芳典 朱 春躍 砂川 有里子 友定 賢治 林 良子 森山 卓郎 大和 知史 犬飼 隆 杉藤 美代子 藤村 靖
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本プロジェクトは、書きことば研究に比べて立ち遅れの目立つ、日本語の話しことば(韻律を含む)の研究を進めるものである。「人物像」を重視した前研究(基盤A(H19-22))において、日本語の主な話し手像(発話キャラクタ)を分析したように、本プロジェクトでは日本語話しことばに見られる主な「状況」を考察し、「状況」に基づく話しことばの姿を分析する。特定の「状況」において「どのような立場の者が、どのような立場の者に対して、どのような発話の権利を持つのか」を明らかにし、それを活かした資料を作成する。
著者
陣内 正敬 真田 信治 友定 賢治
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

日本におけるコミュニケーションの地域性と、関西方言や関西的コミュニケーションの広がりを探るために、平成12年度〜平成14年度にかけて、全国の主要6都市において多人数臨地アンケート調査を実施した。回答者は世代と性を考慮した計1275名に及んだ(大阪177、広島185、高知150、福岡144、名古屋202、東京417)。収集した資料はすべて表計算ソフト(エクセル)に入力し、データベースとして活用できる形にした。調査結果の成果のひとつとして、関西的なコミュニケーションの受け入れには各都市で同様な世代差が見られ、若者世代ほどその傾向が強いことが分かった。なお、共同研究者による調査報告とその考察を成果報告書の形で刊行した(『研究成果報告書No.1』)。また併せて、調査データベースの一部も紙媒体の形で刊行した(『研究成果報告書No.2』)。この他、研究分担者の高橋を中心に、関西弁や関西コミュニケーションの広がりに関する電子言語地図を作成した。次のHPで公開中である(URL:http://home.hiroshima-u.ac.jp/hoogen)。また、研究分担者の岸江を中心に、主要6都市調査で収録された「道教え談話」を電子化し、6都市30話者2場面の計60談話を収めたCD-ROMを作成した(談話音声とその談話テキストを含む)。この談話は、21世紀初頭の各都市における年配層や若年層が、くだけた場面と改まった場面でどのような話し言葉を用いているかを記録した保存資料としての価値もある。
著者
岩城 裕之 友定 賢治 日高 貢一郎 今村 かほる
出版者
呉工業高等専門学校
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1 医療現場での方言をめぐる問題に地域差がみられること各地でのアンケートや臨地調査によって、方言を巡る問題に地域差があることが明らかとなった。具体的には、富山の場合、県内のごく狭い範囲で、体調を表す重要な語について使用・不使用があったり、意味が異なる場合が存在することが分かった。一方、青森では多くの語が難解であり、医療場面で想定されるすべての語彙、表現の記述が必要となることが明らかとなった。2 方言データベースの作成と公開青森、広島、富山、飛騨のデータを収録した方言データベースを作成、公開した。いわゆる聞き取りにくい方言について、検索する際に想定されるいくつかの入力パターンを調査し、いずれのパターンでも適切な候補を表示できるようなシステムを構築した。方言研究者であれば一定のルールの中で記述するが、医療関係者などの非方言研究者は、必ずしもそうではないことに配慮したためである。結果的に、使いやすい方言辞書を追求することとなった。また、現地で収録した音声を加工し、データベースの多くの語や一部の文例について、クリックすることで音声を聞くことができるようになった。揺れのある入カパターンから適切な候補を見つけ出すことのできる方言辞書やデータベースは、ほとんど前例がなく、ユニークな成果であると思われる。3 コミュニケーションマニュアルの作成青森県津軽において、いくつかの定型的問診場面を取り上げ、方言による対話例を作成した。しかし、共通語の問診と異なり、いわゆる日常の挨拶や雑談をはさむことが「方言的」であったため、マニュアルにはなじまないと考えられ、今後も研究を重ねていく必要があると思われる。
著者
定延 利之 杉藤 美代子 友定 賢治 CAMPBELL Nick 犬飼 隆 森山 卓郎 本多 清志 朱 春躍
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

「音声言語」教育の基礎資料を作成するという本研究の目的を果たすために、基礎資料の全体的デザインを検討し、検討結果を反映させる形で調音映像資料と、会話音声資料の作成をおこなった。調音映像資料については45回を越える実験を通して「母音」「rとl」「有声音・無声音」「口蓋化」「促音」「無声化」「早口言葉」「りきみ」「空気すすり」等の映像資料を元にした。その中心は日本語であるが、比較対照のために英語・中国語の実験もおこない、調音映像の資料を作った。会話音声資料については、基礎資料作成のための材料として、大学生対話や低年齢層話者も含めた家庭内会話、社会人会話など100時間にせまる会話の映像と音声を記録・観察した。これらの作業の過程で、たとえばりきみや空気すすりのように、これまで軽視されていた行動が、大きな役割を果たすことを明らかにした。また、調音動態と会話分析の双方を収容する包括的な枠組みとして「文法」(音声文法)の必要性を明らかにした。以上の作業を通して得られた知見は、その都度「基礎資料の全体的デザイン」の再検討に反映した。得られた知見の学会発表や論文集出版、パネルディスカッション企画、24回の打ち合わせを通して、音声文法の若手研究人材の育成につとめた。これらの知見を日本語教育や国語教育に真に役立てるために、日本語教育や国語教育の関連学会大会でのデモや発表をおこない、「日本語音声コミュニケーション教育研究会」「日本語音声コミュニケーション研究会」を立ち上げ、成果を問うた。それとともに、インターネット上に基礎資料のサンプルを一部英語版も含めてアップし、国際的な規模で、教育現場の意見のフィードバックをおこなった。また、われわれの活動を広報するために、学会講演や一般書の出版、国際ワークショップ開催や新聞インタビュー、広報誌でPRするとともに、インターネット上にホームヘージを開設した。