著者
小林 弘典 藤本 三喜夫 中井 志郎 宮本 勝也 横山 雄二郎 坂下 吉弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.2517-2521, 2013-09-25
参考文献数
16

症例は11歳の男児で,下腹部痛を主訴に受診した.腹部造影CTでSMV rotation signを認め,小腸は右側,結腸は左側に偏在しており,下腹部正中に腫大した虫垂を認めたため,腸回転異常症併存急性虫垂炎と診断し緊急手術を行った.全身麻酔下に臍切開単孔式手術を行い,マルチプルトロカール法にて5mmトロカールを2本穿刺した.腹腔内を観察しnonrotation typeの腸回転異常症であることおよびLadd靱帯やpedicleなどの異常膜状構造物がないことを確認した.虫垂の同定は容易であり,トロカール穿刺間の筋膜を小切開し虫垂を引き出し直視下に虫垂切除を行った.腸回転異常症併存急性虫垂炎に対して腹腔鏡手術を施行した症例の報告はまれであり,腸回転異常症併存急性虫垂炎に対する単孔式腹腔鏡補助下手術の有用性を若干の文献的考察を加え報告する.
著者
原 鐵洋 二宮 基樹 土井 寛文 久原 佑太 木建 薫 豊田 和宏 小林 弘典 橋本 泰司 坂下 吉弘 宮本 勝也 嶋本 文雄
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-7, 2020-01-01 (Released:2020-01-31)
参考文献数
13

ニボルマブ投与により原発巣が著明に縮小し,10か月後に著効を認めたStage IV胃癌を経験した.症例は80歳の女性で,進行胃癌の診断で当院へ紹介された.No. 11リンパ節,大動脈周囲リンパ節の腫大を認め,Stage IV胃癌と診断した.一次治療でS-1とoxaliplatinの併用療法,二次治療でramucirumabとpaclitaxelの併用療法を施行したが有害事象と病状進行のため中止し,三次治療としてニボルマブを開始した.6コース投与後に原発巣が縮小した一方でNo. 11リンパ節は増大傾向を示したが,QOLの著しい改善を認め継続したところ,19コース投与後に著明な縮小を認めた.30コース投与後に原発巣は瘢痕化し,No. 11リンパ節はさらなる縮小を認めた.ニボルマブ投与により画像上増悪傾向を示しても全身状態,治療経過を考慮し継続することで遅発性に効果を認める例があることが示された.
著者
竹末 芳生 横山 隆 児玉 節 山東 敬弘 村上 義昭 宮本 勝也 津村 裕昭 立本 直邦 松浦 雄一郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1921-1925, 1994-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

過去5年間において当科で経験した術後MRSA腸炎24例を対象とし,発症時期によりMRSAを分類し,その病態,発症機序につき検討した.術後6日以内の早期発症は16例, 7日以降の晩期発症は8例認められた.早期発症例は中等,重症例が75.0%を占め,また末梢血中白血球減少例が62.5%であり,晩期発症例の25.0%, 12.5%と比較し高率であった.これは早期発症例では術後腸管運動が回復しておらず, MRSAが産生した毒素が腸管内にとどまり血中に吸収されたためと考えた.晩期発症例の特徴は長期絶食(11.8±3.1日),抗生剤長期投与(13,9±8.2日)であった.これらは常在細菌叢の変化を生じ, MRSAへの菌交代現象をおこし易いが,腸管運動が正常のため毒素血症は稀であり,軽症例が多くを占めたと推察した.晩期発症例は内科領域で経験されるMRSA腸炎と類似の発症機序が考えられ,早期発症例が術後腸炎の特徴を有していると考えた.
著者
中村 浩之 藤本 三喜夫 宮本 勝也 中井 志郎
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.320-323, 2008 (Released:2008-10-02)
参考文献数
21

症例は14歳の男性.平成18年6月より腹痛,嘔気,嘔吐を主訴に近医受診.腸重積症と診断されたため,加療目的のため当院へ紹介された.腹部は平坦,軟で,右下腹部に腫瘤を触知したが,下血を認めなかった.腹部造影CT上,回盲部腸重積症の所見であった.注腸による整復を試みたが,不成功のため,緊急手術を施行した.腹腔内を検索したところ,盲腸および上行結腸は後腹膜への固定が不十分であった.回腸が約10cmの長さにわたって上行結腸に重積しており,Hutchinson手技で用手的に整復した.同部位に腫瘤,癒着,捻れなどはなく,血行障害も認めなかった.術後4日目の下部消化管内視鏡検査で回腸末端にリンパ濾胞の過形成を認めるのみであった.回盲部および上行結腸の固定不全という広義のmalrotationとintussusceptionとの合併はWaugh's syndromeといわれ,稀な病態である.