著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.236-243, 2021-10-01 (Released:2021-11-15)
参考文献数
4

アジア太平洋戦争は、国家総動員の掛け声のもとで行われ、その戦争を人々が受け入れるにあたっては教育やメディアなどを通して様々な共通意識が醸成されていったと言える。そして、戦争体験者の言葉を読み解くことで、その意識とはどのようなものだったのかを浮かび上がらせることができないだろうか。デジタルアーカイブ化で公開されている戦争体験者の証言からキーワードを取り出して、その言葉がどのような文脈とともに紡ぎ出されたのかを見ていき、人々の戦争との向き合い方を探るオーラルヒストリーの実践を試みる。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.25-31, 2021-01-12 (Released:2021-02-24)
参考文献数
7

新型コロナウィルスによって社会は混乱し、私たちは大きく行動を変容させた。それは日々触れるメディアが発するニュースや様々な情報がきっかけになっているはずだ。では、その内容は正しいものだったのか、その伝え方はどうだったであろうか。感染者や集団感染を出した医療施設などが誹謗中傷を受けるようになり、さらに真偽不明の情報がマスメディアで伝えられたことでトイレットペーパーの買いだめに走る人々も出た。メディアがコロナ禍にどう向き合ったのかを振り返ることで、今後起こりうるエピデミックの際の情報の伝え方の最適解を探ることはできるのではないか。そのためにメディアの記録を収集、蓄積して分析ができる環境を整え、その答えを探る仕組みを社会実装することを考えたい。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-14, 2019-01-07 (Released:2019-02-18)
参考文献数
5

米軍が撮影した沖縄戦、米政府の沖縄の出先機関「米国民政府」が記録した占領期の沖縄の姿、これらの映像や写真が沖縄県内の公文書館やメディアに大量にアーカイブされている。その映像資料から私たちは沖縄の歩んできた現代史を辿った上で、今の沖縄について深く知ることができる。さらに、どういう未来を構築すべきなのかを考える基盤にもなるだろう。筆者は、沖縄県公文書館の映像収集と公開の取り組み、沖縄のテレビ局が60年に渡ってアーカイブしてきた映像や番組を地域貢献や新たなコンテンツ制作のためにどう公開・活用しているのかを調査した。その結果、アーカイブの持つ、新たな知を生み出し人々と地域を結びつける力をあらためて確認できた。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.312-317, 2018-10-01 (Released:2018-11-20)
参考文献数
5

テレビの放送が始まって65年、各テレビ局と「放送番組センター」は大量の番組や映像素材を積み上げてきた。それらの番組や映像は、私たちの社会の移り変わりを記録してきた貴重な公共資産と言える。また、ビデオテープやフィルムからのデジタル化も進められている。そのアーカイブコンテンツの保管から、公開、利用、活用についてNHK、民放、放送番組センターがどんな取り組みを進めているのか調査した。筆者は、様々な方法で放送コンテンツの公開や利活用が積極的に進められるべきだと考えるが実際には思ったように実現していない。保存や公開の現状と、アーカイブコンテンツの公開性を確保するためにどんな課題あるのかを報告する。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.219-221, 2021-10-01 (Released:2021-11-15)
参考文献数
3

オーラルヒストリーは、何らかの体験をした人に聞き取りをした口述記録である。体験者の一人語りではなく、聞き手との共同作業で生まれ、その記録はアーカイブとして未来に伝えられる。また、それらは様々に使われる。オーラルヒストリーという概念は、口述記録そのものにとどまらず、利活用も含むと考えて良いだろう。聞き取りによる口述記録は古くから作られてきたが、デジタルアーカイブとして整備が進めば、誰もがどこからでもアクセスでき利活用の幅は一気に広がる。今回の特集ではオーラルヒストリーの様々な可能性とデジタルアーカイブとの関わりで見ていく。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.16-21, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
6

鹿児島県奄美群島から沖縄本島、先島地方には民謡を始め琉球王朝の古典音楽、あるいは祭祀のための音楽が豊潤にあって、暮らしや様々な行事、あるいは盛んに行われるコンクールなどのためにいまも盛んに歌われている。さらに、そうした音楽をベースにした新民謡やポップスも次々に生み出されている。しかし、小さな集落や島で生まれた民謡や戦後次々に作られた新民謡などは、歌う人がいなくなったり、レコードが廃盤になったりするなどして消え去る危険に直面している。また、同じ曲でも時代や場所や流派によって演奏の仕方が変わる。これらの音源を収集し、何らかのプラットフォームなどで体系的に保管し、公開することでこの音楽文化をしっかり留めたい。現状と進められている様々な試みを調査・報告し、これからの南島の音楽のデジタルアーカイブの可能性を考えたい。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.3-6, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
5

デジタルアーカイブは、そのコンテンツの種類やジャンルによって利活用の手法は様々である。今回の特集では、個別のアーカイブの設計や運営に当たっている人々、アーカイブを積極的に使っている研究者などにそれぞれのデジタルアーカイブの利活用の手法について報告していただく。設計や構築に当たった人々が当初想定したものとは異なる利活用の手法をユーザーが発見することもある。そうしたデジタルアーカイブの潜在力も確認したい。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.6-8, 2019-01-07 (Released:2019-02-18)
参考文献数
3

沖縄は独自の歴史と豊かな文化を持つ。一方で米軍基地の整理縮小が進まない上に普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡って県と国が対立するなど沖縄戦とその後の米国統治の影響が大きな社会課題として残っている。いま私たちには沖縄の歩んできた近現代史への正確な知識に基づいた眼差しが求められる。その時アーカイブが大きな役割を果たすはずだ。今回の特集では沖縄のアーカイブをテーマに、自治の歴史を刻んだ「琉球政府文書」のデジタルアーカイブ化、沖縄戦や占領下の沖縄をとらえた映像資料の公開と利活用、そしてメディアや個人が所蔵する映像や写真を利用して新たな“アーカイブコミュニティ”を生み出そうという取り組みについて報告する。
著者
宮本 聖二 アリアナ・ ドゥフゼル
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.115-119, 2018

<p>太平洋戦争の直前から戦後にかけて映画館で上映されていたニュース映画、「日本ニュース」。1940年6月に上映が始まり、戦争が終結した1945年夏までは、戦争遂行と国家総動員のためのプロパガンダを目的に制作された国策映画である。軍官当局の検閲を受け、あるいはその指導のもとで制作されていた。現在、デジタルアーカイブ「NHK戦争証言アーカイブス」でこの間の現存するすべての「日本ニュース」を観ることができる[1]。</p><p>当時、人々が接していたメディアは、ほかにラジオや新聞、雑誌などもあり、ニュース映画はその一部でしかない。しかし、唯一の動画であり、映像の持つ独自の訴求力で人々の意識に強く働きかけたはずである。ここでは、1940年6月から太平洋戦争開戦までの18ヶ月間(毎週火曜日公開、第1号から79号まで)に「日本ニュース」が何をどのように伝えたのかを見つめ、人々が新たな戦争を受け入れるにあたってどのような役割を果たしたのかを考察する。</p>
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-14, 2019

<p>米軍が撮影した沖縄戦、米政府の沖縄の出先機関「米国民政府」が記録した占領期の沖縄の姿、これらの映像や写真が沖縄県内の公文書館やメディアに大量にアーカイブされている。その映像資料から私たちは沖縄の歩んできた現代史を辿った上で、今の沖縄について深く知ることができる。さらに、どういう未来を構築すべきなのかを考える基盤にもなるだろう。筆者は、沖縄県公文書館の映像収集と公開の取り組み、沖縄のテレビ局が60年に渡ってアーカイブしてきた映像や番組を地域貢献や新たなコンテンツ制作のためにどう公開・活用しているのかを調査した。その結果、アーカイブの持つ、新たな知を生み出し人々と地域を結びつける力をあらためて確認できた。</p>
著者
宮本 聖二
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.298-307, 2012-11-04

2011 年 3 月 11 日の地震発生と同時に、NHK は緊急報道に取り組み、その後は、地震や津波のメカニズムに科学的なアプローチで迫る、震災時の人々の行動心理を分析する、また、がれき処理や復興の課題を追求するなどから、地域の復興支援をねらいにした歌謡番組なども含めて、さまざまなテーマや視点で番組を作り、放送を出し続けている。<br/> 一方で、放送局として東日本大震災をインターネットで伝えることにも取り組んでいる。多くの人々がネットで動画コンテンツや情報を得ようとしているブロードバンド時代のいま、放送局としては放送を出すとともに、ネットにコンテンツを提供することはきわめて重要である。ここでは、筆者が編集責任者をつとめている「NHK東日本大震災アーカイブス」について、制作の経緯から、あの震災を伝えていくためにどのような試みを続けているのかを述べたい。