著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.31-39, 2001-12-10 (Released:2017-08-01)

近世に写本で流通した実録は、近代以降、「歴史ではなく文学・小説」とされてきた。しかし、個人の責任において固定されたテクストを他者として読む読本などの小説と、共同体が出来事を解釈してテクストを流動させる実録とでは質的に大きな隔たりがある。実録の、本文の流動性と固定化、作者の不在、という特徴を手がかりに、印刷文化の普及した時代に写本で流通した事実の位相を考察した。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.49-59, 1987-12-10

馬場文耕作とされる「皿屋舗辯疑録」の構成要素の検討を通して、皿屋敷伝承の実録化に関与した文化圏について考察する。この伝承は、巡国の聖や祐天説話を生んだような浄土宗門の説教僧の手を経て実録化されたと考えられる。この事情は、本作が、説教から近世的な講談への過渡的な意味を持つことを示すと共に、講釈師の文化圏が、説教者達と、かなり深く重なり合って、近世口承文芸、舌耕文芸の形成に関って来た事も示唆している。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2-10, 2004-11-10 (Released:2017-08-01)

新聞小説のもとになったと言われる続き物は、江戸戯作の作法に倣った物であるという。実際、江戸戯作の中には読者の好評を理由に当初の計画よりも長編化する作品が少なくない。定期刊行物に連続して掲載されるという意味での連載以前に、分割して出版された小説における本文生成について、『椿説弓張月」『春色梅児誉美』『道中膝栗毛』を材料に、それぞれに異なる「長編化」方法の意味を考察する。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.49-59, 1987-12-10 (Released:2017-08-01)

馬場文耕作とされる「皿屋舗辯疑録」の構成要素の検討を通して、皿屋敷伝承の実録化に関与した文化圏について考察する。この伝承は、巡国の聖や祐天説話を生んだような浄土宗門の説教僧の手を経て実録化されたと考えられる。この事情は、本作が、説教から近世的な講談への過渡的な意味を持つことを示すと共に、講釈師の文化圏が、説教者達と、かなり深く重なり合って、近世口承文芸、舌耕文芸の形成に関って来た事も示唆している。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.34-43, 2012-01-10 (Released:2017-08-01)

近世の実録は、実在の事件に取材しながら、書写、伝承していく過程で、場合によっては荒唐無稽と思われるような変容を遂げる。それは、現代の科学的思考から見れば「非・事実」、「虚構」である。しかし、そうした虚構によってこそ「事実」は言語化できるとも考えられる。具体的な資料を検証できる実録を材料とすることで、我々にとっての事実とは何か、記録する営みとは何か、と言う文学の根源的な課題に近づくことができるだろう。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.34-43, 2012

<p>近世の実録は、実在の事件に取材しながら、書写、伝承していく過程で、場合によっては荒唐無稽と思われるような変容を遂げる。それは、現代の科学的思考から見れば「非・事実」、「虚構」である。しかし、そうした虚構によってこそ「事実」は言語化できるとも考えられる。具体的な資料を検証できる実録を材料とすることで、我々にとっての事実とは何か、記録する営みとは何か、と言う文学の根源的な課題に近づくことができるだろう。</p>
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.75-83, 1989-08-10

近世の仇討小説は厖大な量に上るが、"ワン・パターン″で面白みがなく、個々の趣向でしか評価できない、という見方が強い。しかし、量産された背景には、仇討小説の持つ本質的な魅力があった筈である。本稿では、実録等を材料として、趣向を捨象し、仇討小説の定型を抽出し、仇討小説が定型を保ちつつ史的な流れの中で、仇討とは別の副次的な主題を持って来たことを確認し、近世に於ける仇討小説の意味を考察した。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.75-83, 1989-08-10 (Released:2017-08-01)

近世の仇討小説は厖大な量に上るが、"ワン・パターン″で面白みがなく、個々の趣向でしか評価できない、という見方が強い。しかし、量産された背景には、仇討小説の持つ本質的な魅力があった筈である。本稿では、実録等を材料として、趣向を捨象し、仇討小説の定型を抽出し、仇討小説が定型を保ちつつ史的な流れの中で、仇討とは別の副次的な主題を持って来たことを確認し、近世に於ける仇討小説の意味を考察した。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2-10, 2004

新聞小説のもとになったと言われる続き物は、江戸戯作の作法に倣った物であるという。実際、江戸戯作の中には読者の好評を理由に当初の計画よりも長編化する作品が少なくない。定期刊行物に連続して掲載されるという意味での連載以前に、分割して出版された小説における本文生成について、『椿説弓張月」『春色梅児誉美』『道中膝栗毛』を材料に、それぞれに異なる「長編化」方法の意味を考察する。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.30-39, 1988

実録体小説は、写本のままで成長、変化する。この時、登場人物の付会、変容が重要な役割を果たしている。本稿では、幕末期に成立した『天一坊実記』で新たに加えられた重要な人物について、その背景を、それ以前の実録の中に探って行く。そこから見えて来るのは、謀叛を扱う実録に於ける、理想的な反逆者、為政者の型の存在である。そしてそれは、太平記読み等の、軍書講釈以来の伝統と深く関係していることも知られるのである。
著者
小二田 誠二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.31-39, 2001

近世に写本で流通した実録は、近代以降、「歴史ではなく文学・小説」とされてきた。しかし、個人の責任において固定されたテクストを他者として読む読本などの小説と、共同体が出来事を解釈してテクストを流動させる実録とでは質的に大きな隔たりがある。実録の、本文の流動性と固定化、作者の不在、という特徴を手がかりに、印刷文化の普及した時代に写本で流通した事実の位相を考察した。