著者
内村 泰 新村 洋一 小原 直弘 小崎 道雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.62-67, 1991-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1 7

1.得られた乳酸菌のうち桿菌は非常に少なく, また球菌の大部分は四連球菌であった。この結果から食酢醸造用餅麹ルクパン中の乳酸菌は, 東南アジア諸国で広く用いられている酒醸造用餅麹と同様に, 四連球菌が主要菌であり, 他の形状のものは非常に少ないとした知見を支持する結果となった。2.得られた酵母は分離した全株が菌糸状酵母であり, 当然その存在が考えられた球状酵母は, 全く分離されないという興味二ある結果となった。3.各ルクパンを5日毎に順番に添加する方法により食酢を仕込み, 生産される酢酸量は市販されている日本産タイ国産の食酢製品と比較するとその量は半分以下であった。4.この酢酸量が少なかった原因として, ルクパンが雑菌を含め多種の菌株が存在していることから, 純粋培養された優秀な菌株を用いて醸造を行っているのではなく, それぞれの菌が生産している発酵生産物をさらに資化しているとも考えられた。5またルクパン中に, 当然存在が考えられるアルコール発酵酵母が分離されず, 菌糸状酵母のみであったことは, 菌糸状酵母が糖化生産した糖を直接酸化して, 酢酸発酵を行わざるを得ないことから, 代謝上非常に効率の悪い発酵を行っているのではないかとi推察した。