- 著者
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江角 由希子
小原 郁夫
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.7, pp.597-604, 2001-07-15 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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5
女子短大生の四基本味に対する味覚感受性の視覚刺激による影響について検討した.甘味, 塩味, 酸味および苦味を連想する食品についてアンケート調査し, 各味質について選び出された食品のうち上位3品を視覚刺激のための食品とした.そして, 視覚刺激のない状態および味質を連想する食品を直視する視覚刺激のある状態で濾紙ディスク法による味覚検査を行い, 以下の結果を得た.(1) 基本味を連想する食品について, 甘味は連想されやすく, 塩味は連想されにくかった.また, 苦味を連想する食品の種類が多く, 個人差が大きかった.(2) 酸味に対する感受性は, 視覚刺激により鈍化した.特に, 舌縁部において鈍かった.(3) 甘味食品による視覚刺激は, 甘味感受性以外の味覚感受性を鈍くする傾向を示した.(4) 塩味食品による視覚刺激は, 味覚感受性に対する影響がみられなかった.(5) 酸味食品による視覚刺激が, 味覚感受性に対して最も大きな影響を及ぼし, 甘味感受性を鋭敏化し, 酸味感受性を鈍化させた, (6) 苦味食品による視覚刺激は, 甘味および塩味に対する感受性を鋭敏にさせる傾向を示した.(7) 舌中央部の味覚感受性は, これまでにもいわれているように, 鈍いことが確認できた.また, 視覚刺激よりさらに鈍化する傾向であった.一方, 舌尖部は, 視覚刺激により鋭敏になる傾向が強かった.これらの結果から, 味覚感受性と視覚刺激の問に関連性のあることが明らかになった.