著者
古市 瑞希 山本 大介 高橋 直久
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.1-15, 2020-08-25

名古屋工業大学で開発された音声インタラクションシステム構築ツールキットMMDAgentは,FST(Finite State Transducer)形式で記述された対話シナリオに基づいて音声対話の処理を実行し,ユーザは対話シナリオを編集することで対話の内容を自由に構成することができる.しかし,FST形式は一般ユーザには馴染みがなく,対話シナリオを編集することは困難である.そこで,一般ユーザでも対話シナリオを編集できるようにするため,ブロック型ビジュアルプログラミング機能を有する音声対話シナリオ編集システムを提案する.提案システムでは,対話の内容を「ブロック」で表し,パズルのように組み合わせるだけで対話シナリオを作成できる.これにより,対話シナリオについて知識がない一般ユーザでも,対話シナリオを作成することができる.また,提案システムに基づきプロトタイプシステムを実装し,評価実験を行った.その結果,テキストで記述する方法に比べて,提案システムを用いることで短い時間で対話シナリオの作成や内容の把握ができることが分かった.
著者
高津 良介 牧 宥作 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.19-25, 2016-02-18

オーケストラをはじめとした複数人での演奏を支援する研究が広く行われている.その中で,演奏の中心となる指揮者が不在な環境に焦点を当てて,図形やコンピュータグラフィクスによる人型モデルなどによる仮想指揮者を用いて支援する研究が存在する.しかし,これらの研究では演奏者全体に向けた簡易な指揮しか行えないことから,演奏者に十分な指示ができないという問題があった.我々はこの問題を解決する新たなアプローチとして,演奏者のパートや役割に応じて個別に指揮する仮想指揮者を用いた合奏支援を提案する.これにより,各パートの演奏者に詳細な指示を行うことができるようになり,指揮者不在の環境において演奏者にとって演奏しやすい指揮環境を構築することが期待できる.実験により,本提案を演奏で使用した際の影響を評価した.
著者
友広 歩李 角 康之
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.1-10, 2016-08-30

スケッチは観察により得た情報の記録,共有,そしてアイディアの発想のために様々な場面で行われている表現手法の1つである.しかし,刻一刻と変化する状況を記録するためには素早く簡素に描きとめたり,対象の立体的な構造を2次元の平面で表現する必要があり,絵を描きなれていない人には困難をともなう.本論文ではタブレットPCと深度情報付きカメラを用い,空間構造の理解やデザインを促すスケッチシステムを提案する.システムのねらいは,2次元の手描きスケッチでは表現しにくいものの立体構造に対する気付きを得やすくすることにある.手描きのスケッチに3次元構造を組み合わせ,奥行きのついたスケッチの世界を歩き回ることや,空間内に付箋を貼るようにメモやアイディアを描き加えることを可能とした.本論文では提案システムの概要と実現方法を述べるとともに,システムを用いて描かれたスケッチとその制作過程を紹介する.
著者
野口 康人 叶 璟 成合 智子 井上 智雄
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.26-36, 2016-02-18

ビデオ会議システム等による遠隔コミュニケーションの普及にもかかわらず,その音声環境は現在でもモノラルまたは2chステレオ程度であることが多い.しかし,多人数が遠隔から参加する場合に,複数の参加者の音声が同一スピーカを用いて再生されると聴き取りにくいと考えられる.本研究では多人数会話における発話音像の定位を数箇所に分散させることの効果について非母語条件も含めて実験的に検討した.同時発話時に認識できる単語数を測定したところ,母語,非母語にかかわらず定位を分散させた方が聴き取りの成績がよく主観的にも効果的であること,少なくとも1名の話は聴き取れると期待できる同時話者人数の限界が2名から3名に向上することが分かった.非母語によるコミュニケーションを含む遠隔会話において,音像定位分散の活用可能性を示すことができた.
著者
谷中 俊介 服部 元史 小坂 崇之
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.8-18, 2017-02-28

本稿では,睡眠不足の原因の1つである不安に対し,疑似的な添い寝をしているような感覚をユーザに与え,不安を軽減することを目的とした抱き枕"ZZZoo Pillows"を開発した.本システムは,抱き枕に内蔵した風船に空気を送り込むことで,呼吸する人間の胸部のように膨張と収縮を行い,抱き枕内に温水を循環させることで,人と添い寝しているような温もりを提示する.また,重ねたゴムシートの間に空気を流し振動させることで,いびきのような音を発生させる.呼吸感,体温,いびき,これら3つの提示内容により,ユーザの不安軽減を狙う.本システムが不安に及ぼす影響に対し,State-Trait Anxiety Inventoryを指標として実験を行った.実験の結果,仰臥位群と体温提示群において,体温提示群の得点の方が有意に高くなった.また,呼吸感提示群と体温提示群において,呼吸感提示群の得点の方が有意に低くなった.このことから,本システムが有する各提示内容において,呼吸感の提示による不安軽減の可能性が見られた.In this study, we developed ZZZoo Pillows with the aim of providing users with a sense of sleeping alongside someone to alleviate anxiety, which is a cause of sleep deprivation. The balloon built into this system can reproduce the sensation of a human breathing by repeatedly expanding and contracting similarly to a human chest during breathing. Further, simulating the warmth of a person's body with this system is possible through the use of a hose that runs around the inside of the huggable pillow through which warm water is circulated. In addition, snoring noise can be produced by passing compressed air through a layer of rubber to create vibration. We evaluated our proposed system using the State-Trait Anxiety Inventory (STAI). Evaluation results confirmed that the STAI score was higher in reproduced the warmth by our system than the supine position without the huggable pillow, and lower in reproduced the breathing than the reproduced the warmth.
著者
塚田 学 菰原 裕 粕谷 貴司 新居 英明 高坂 茂樹 小川 景子 江崎 浩
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.10-23, 2018-08-20

インターネットを前提とした視聴サービスが登場し,なかでも空間に存在する視聴対象を解釈し,コンテンツとして活用するオブジェクトベースの視聴サービスの重要性が増している.2014年より,Software Defined Media(SDM)コンソーシアムでは,オブジェクトベースのメディアとインターネットを前提とした視聴空間の研究を行っている.現在,音楽イベントのDVDなどのパッケージメディアは,マイクやカメラなどの収録機材の位置によって大きく制約を受けるコンテンツである.こうした課題を解決するため,本研究では,クラシックコンサートとジャズセッションのイベントを収録し,インタラクティブに自由視聴点での三次元映像音声を再生するアプリケーション「SDM3602」を設計,実装した.SDM3602を95人の被験者に実際に体験してもらい,インタラクティブ3Dコンテンツの自由視聴点再生の有効性を検証した.さらにビルボードジャパンが開催した2017年Live Music HackasongでSDM3602のデモンストレーションを行い,審査員と一般の来場者の投票により,優秀賞を受賞した.Various audio-visual service based on Internet are deployed these days widely. Among these, object-based audio-visual services are getting more critical. We started Software Defined Media (SDM) consortium to investigate object-based audio-visual services and Internet-based audio-visual since 2014. The placement of microphone and camera limits the audience to watch at the free viewpoint of the contents of the package media such as DVD. In the study, we designed and implemented the system of interactive 3D audio-visual service with a free-view-listen point, named SDM3602. 95 persons experienced SDM3602 and answered the questionnaire in subjective evaluation. We also demonstrated the system in "Live Music Hackasong 2017" hosted by Billboard Japan. We received the second prize based on the vote of the judges and the audience.
著者
藤田 大樹 中野 亜希人 羽田 久一
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-10, 2019-02-28

氷の造形物は彫刻で作るのが一般的だが,スキルや材料の調達などの問題で誰もが簡単に製作できるわけではない.本稿では,氷の造形物を素早く印刷するための新しい3Dプリンタの手法を提案する.水とフロンガスを個別に噴霧する2つのエアーブラシを3Dプリンタに組み込むことにより,既存の3Dプリンタと同じ操作で氷の造形物を出力できる.この氷プリンタを使うことで,誰でも高速に氷の造形物を作ることが可能となる.本システムの評価として,氷のラインをパラメータを変えながら印刷し関係性を調査した.この結果から,氷の造形物を印刷するのに適したパラメータを発見した.また,既存のGCodeを氷プリンタ用のGCodeに変換するソフトウェアを実装した.これにより,ユーザは特別な知識がなくても氷プリンタ用のGCodeを作ることができる.氷の造形物は,時間の経過で溶けて完全に消失する性質を持っており,これは3Dプリンタに新しい表現を与える.
著者
梶並 知記 小田 凌平
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-15, 2022-02-28

本稿では,対戦型格闘ゲームを対象とし,プレイヤの視線情報を用いた試合の振り返りを支援するインタフェースを提案する.対戦型格闘ゲームは,2名のプレイヤがそれぞれ格闘家を模したキャラクタを操作し,相手と闘うゲームである.対戦型格闘ゲームの典型的なゲーム画面のレイアウトは,リングを横から見たカメラ視点であり,キャラクタ2体が同一軸上に左右に並んで向かい合う形となる.2名のプレイヤは,同一内容のゲーム画面を見てプレイする.プレイヤは,自分達が行った試合の動画を見直して,戦略/戦術について議論する振り返りをする場合がある.しかしながら,プレイ中のプレイヤの視線情報を用いた,試合の振り返り支援はあまり行われていない.本稿では,2名のプレイヤの視線情報を用いて,ゲーム画面上のプレイヤの着目箇所や視線の移動軌跡の類似性/差異性を強調して可視化する4つの機能を備えた,試合の振り返り支援インタフェースを提案する.対戦型格闘ゲームの経験者を被験者とした評価実験を行った結果,提案インタフェースが振り返りの際の議論のきっかけを与え有効であることと,提案機能ごとに有効性が異なることを示す.
著者
梶並 知記 長谷川 和也
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-27, 2018-02-28

本稿では,対戦型格闘ゲームの初心者観戦者を対象とした,試合の観戦支援システムを提案する.対戦型格闘ゲームは,プレイヤが格闘家を模したキャラクタを操作し,対戦相手のプレイヤが操作するキャラクタと闘うゲームであり,近年国際的な競技会も開催されているデジタルゲーム競技(e-Sports)のジャンルの一種である.従来研究で,キャラクタの相対位置や,ゲームフィールド上の絶対位置がプレイヤの意思決定に及ぼす影響について考察されている.本稿ではゲームキャラクタの相対位置や絶対位置に基づき,対戦型格闘ゲームのプレイ中に現れる典型的な3つの状況である,近距離状況,遠距離状況,画面端状況を定義し,状況に応じた文字アノテーションと図形アノテーションを提示する観戦支援システムを構築する.文字アノテーションは,プレイヤにとっての各状況の意味を端的に観戦者に示しつつ,攻防が行われそうなタイミングを観戦者に伝達する.図形アノテーションは,矩形や矢印といった基本図形で,攻防が行われそうな場所を観戦者に伝達する.対戦型格闘ゲームにあまり詳しくない初心者観戦者を被験者とした評価実験を行い,提案システムの有効性を検証する.実験の結果,提案システムを用いた被験者が,試合中の攻防が行われるタイミングや場所をより容易に理解・予測できるようになることを示す.
著者
巻口 誉宗 高田 英明 坂本 大介 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-10, 2020-02-26

遠隔地のスポーツのライブビューイングやステージイベントなどのエンターティンメント分野において,半透過スクリーンやハーフミラーを用いて被写体を空中像で表示する演出手法が活用されている.これまでこうした演出手法では,空中像を表示させたい領域に大がかりな装置を設置する必要があり,被写体の移動範囲が制限されていた.そこで我々は,空中像をステージ外や観客席に移動させる演出の実現を目的とし,可搬型のサイズ・構成で臨場感の高い空中像を表示できる両面透過型多層空中像表示技術を提案する.本手法は4台のディスプレイと4枚のハーフミラーを組み合わせたシンプルな光学系で構成される.観察者は装置の正面と背面の2方向から被写体の両面を空中像として観察でき,両面それぞれから近景と遠景の2層の背景空中像を観察できる.提案手法では表示面は4面しか持たないものの,ハーフミラーによる透過と反射によって背景の2層を正面・背面の観察方向で共有することで,両面それぞれから3層,合計6層の空中像を視聴できる.さらに,近景と遠景は正面・背面の観察方向にかかわらずに光学的な奥行きの順序関係が保たれることから,複数人が同時に装置両面から,多層化された臨場感の高い空中像を視聴できる.本稿では提案手法の光学構成の詳細から,実用性評価のために行ったプロトタイプ実装とイベントでの活用事例まで広く報告する.
著者
山﨑 賢人 岡原 浩平 木村 朝子 柴田 史久
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.34-42, 2021-02-26

本論文では,視野角によって生じる死角と遮蔽物によって生じる死角を,複数視点のカメラ映像を接合することで同時に解消する画像接合手法を提案する.視野角によって生じる死角は特殊な光学系を採用する方法や複数視点からのカメラ画像を接合する方法などで解消できる.一方,遮蔽物によって生じる死角については,隠背景を観測して,遮蔽物が占める領域に投影・合成する隠消現実感技術によって解消できる.しかし,これらの死角は同時に発生しうるため,各々を個別に解決すると非効率になる可能性がある.そこで我々は,画像接合技術と隠消現実感技術に共通する考え方を整理し,両者を同時に解決する手法について検討した.その結果,画像接合のための境界線決定時に,遮蔽物を基に生成したマスク画像を用いることで,広視野画像から遮蔽物を除去した画像を生成できることを確認した.
著者
山﨑 賢人 阿倍 博信
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-21, 2019-02-28

実物体に注釈情報を投影するプロジェクション型ARは,新たな情報提示方法として注目を集めており,様々な分野への応用が期待されている.一方で,プロジェクタと投影対象との間に物体が存在する場合,任意の位置に注釈情報を投影できない問題がある.この問題に対し,遮蔽を考慮して注釈情報を移動させることで,ユーザの視認性を維持する注釈ビューマネジメントを開発した.本研究では,注釈ビューマネジメントを用いたプロジェクション型ARシステムを設計と評価の結果,有用性を確認したことを報告する.This paper describes design and evaluation of an annotating view management in projection-based AR system. Projection-based AR, a technology that projects annotations on the real object in real-time, catches the attention of a new displaying method and is used in various fields. On the other hand, projection-based AR has a problem that cannot project annotations on any position when there are objects between the projector and the projection target. In this study, we proposed the annotating view management by considering occlusion, and decided the layout of the annotation to solve this problem.
著者
中村 隆之 宮田 一乘
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.24-31, 2018-08-20

地形リズムアクションゲーム「アオモリズム」は,ハードウェアとしては60インチの低解像度リアプロジェクタと23インチの高解像度LCDを重ねた2画面構成の筐体,ソフトウェアとしてはオーソドックスな音楽ゲームをベースとしつつも青森県と北海道の地形が殴り合うアニメーション演出等の特徴があるアーケードゲームである.東京ゲームショウ2013における展示を皮切りにCEDEC2014での展示,および青森県の宿泊施設,同県内の博物館での9カ月の長期展示を行った.本論文では,作品の位置付けとコンセプト,開発および展示の結果を示す.また解像度とサイズの異なる2画面構成により離れて見る客と近づいてプレイするプレイヤに異なる体験を与えられたことを中心に,得られた知見を述べる.
著者
加藤 里美 水野 慎士
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.11-19, 2017-08-29

「らくがっきー」は絵を描きながらインタラクティブにサウンドを生成できるメディアシステムである.サウンドの生成は描かれた絵に含まれるオブジェクトを検出することで実現するが,従来システムは描かれたオブジェクトの検出に少数のサンプルに基づく単純な形状特徴量を用いていたため,バラエティのあるオブジェクトの検出は困難であった.そこで,本論文ではオブジェクトの検出のため,大量のサンプルから共通する特徴を抽出して各オブジェクトの検出に用いる機械学習の手法を取り入れる.改良したシステムは従来システムに比べてバラエティに富む手描きオブジェクトを精度良く安定的に検出して,絵に適したサウンドを生成することが可能となった.「らくがっきー」を一般の人に使ってもらった実験では,多くの人からお絵描きが楽しくなったという評価を得た.
著者
角 康之 名生 圭佑 松村 耕平
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-9, 2014-08-20

本稿では,2次元の絵画作品をコンピュータグラフィクスによって3次元アニメーション化する試みを紹介する.対象とする絵画作品として浮世絵,具体的には歌川国芳の「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」を題材にする.この作品は,一見すると1人の男性を描いたように見えるが,よく見ると10数名の男性が寄り集まって大きな大人物を表現しているだまし絵になっている.本研究では,この作品を複数人物の登場する3次元CGアニメーションにする.そうすることで,特定の視点から描かれた浮世絵作品を異なる視点から見てみたり,作品として残された瞬間の前後の物語を想像したり,また,登場人物の1人の視点に乗り移ってみたり,という参加型の鑑賞が可能になると考えられる.本稿では,登場人物のCGモデルの作成,モーションキャプチャシステムを用いたモーションの取得,複数モデルが登場するアニメーションの時空間編集などの一連の作品制作のプロセスを説明する.そして,作成されたCG作品のバリエーションとして,作品鑑賞のための視点変化や重力シミュレーションの導入,登場人物のキャラクター変更などの例を紹介する.
著者
塩原 拓人 井上 智雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.20-28, 2014-08-20

近年1人で食事することを余儀なくされる「孤食」が問題となっている.孤食者支援のための従来研究では,参加者全員が食事をすることが想定されてきた.これに対して本研究では,これまでに考慮されていない,遠隔地間の一方だけが食事をする状況があることに着目した.そして,非食事者の代わりに食事行動をとるインタフェースエージェントによる疑似的な共食を実現した.Surrogate Dinerと呼ぶこのインタフェースエージェントの食事行動は,実際の共食場面の映像分析に基づいている.評価実験では,Surrogate Dinerを用いる共食条件,食事行動のないインタフェースエージェントを用いる会話エージェント条件,相手の実映像を用いる会話映像条件の3条件を比較し,質問紙とインタビューから,孤食者支援についてSurrogate Dinerの有効性が確認された."Eating alone" has been one of the serious problems in our society as more elderly people live alone, more people work and live separately, and people's rhythms of lives become more diverse. Although all the existing research assumed that every participant of social dining had a meal, we found the setting that only a part of the participant has a meal is probable and acceptable for solving the problem. Surrogate Diner, an interface agent that performs eating behavior as a surrogate for a non-eating participant, is introduced in this paper. The eating behavior of Surrogate Diner is based on the actual eating behavior from recorded videos of co-dining. Evaluation study was conducted with the Surrogate Diner condition, the conversational agent condition, and the conversational video condition. Effectiveness of the proposed Surrogate Diner was indicated regarding the alleviation of "eating alone" problem from a questionnaire and interview.