著者
小林 信之
出版者
山口大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

我々は従来よりAIDS発症のco‐factorとして、TNF(tumor necrosis factor;腫瘍壊死因子)を提唱してきている。本研究において我々は以下の2点を新たに明かにした。その第1点は、TNFによるHIV感染細胞の特異的致死機構が所謂Apoptosisの機構に拠っており、TNFによるHIV複製増強がHIV感染細胞の特異的致死を誘因しているのではないことを明かにしたことである。近年細胞のApoptosisを仲介すると考えられている細胞膜上の糖蛋白Fas坑原遺伝子が分子クロ-ン化され、細胞死の機構がようやく明かにされうる段階に来ており、今後HIV感染相棒の特異的致死機構がこの観点からさらに詳細に検討されていくものと期待される。我々が明かにした第2の点は、HIV転写制御に細胞特異的に関わる因子の存在と、その因子が作用するHIV‐LTRの中のcis‐elementの同定である。我々が新規に見いだしたこのcis‐elementはHIV‐LTRの‐121から‐158に存在し、この領域がヒトT細胞株MOLT‐4でHIVの転写を正に調節していることから我々はこの領域をURE(up‐regulation element)と命名した。この領域は単独にHIV転写を制御する因子ではなく、HIV‐LTR中のエンハンサ-(Enhancer)領域の機能を制御する領域である事が明かとなった。、HIVの転写には必須の領域ではないが、この領域の存在はHIVの転写を最大500倍活性化すること、さらに、この領域の活性が細胞特異的であることも見いだした。今後この領域に働く細胞性因子の検索を行なっていく予定である。
著者
永井 裕二 村松 幸治 小林 信之 鳥阪 綾子
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp._S102014-1-_S102014-5, 2012

Vibration modes measurement and an analysis method on the partially stiffened cylindrical shell with attached mass which contains liquid partially in it, were developed. Since it was measured that the harmonic numbers of circumferential vibration modes of the liquid filled lower part is different from that of the empty upper one, a finite strip method, which is taken into account the geometrical stiffness of hoop stress due to the contained liquid, partial mass and stiffness by attached elements, was developed. As a result, experimental natural frequencies that the harmonic numbers changes along axis are good agreement to those by analysis.
著者
鈴木 学 放生 雅章 小林 信之 篠原 有香 高崎 仁 吉澤 篤人 杉山 温人 工藤 宏一郎 豊田 恵美子
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.661-666, 2008-10-15
参考文献数
14
被引用文献数
2

〔背景〕わが国の結核罹患率は近年減少傾向にあるが,外国人結核は増加傾向(2000年5.1%から2003年6%)を示している。在日外国人登録数も年々増加しており,今後も外国人入国が増加することが予想される。〔目的〕当センターにて入院加療を行った外国人結核症を対象に,臨床的特徴について検討し,過去の報告と比較することにより,現在の外国人結核対策の問題点を明らかにし,今後とるべき対策についても提言を行う。〔対象〕当センターで2004年1月から2007年4月の間に結核症の診断にて入院加療を行った52症例を対象とした。〔結果〕男性29人,女性23人,年齢は31.8±8.8歳。出身国は中国,韓国が多く,有空洞症例は54%で,薬剤耐性は8.2%に認められた。治療完遂率は92%であった。〔考察〕以前の報告に比べて,耐性率は減少し治療完遂率は増加していた。治療完遂率の向上は日本版DOTSの推進,医療費の公費負担や言語の問題への対応など,社会全体的な体制の整備が大きく寄与したと考えられる。今後も結核蔓延国からの入国が増えることが予想されるため,新たな対策により,新規結核症を早期発見,早期治療することに加えて入国後の健康増進支援に努めることで罹患率の低下,治療完遂率の上昇を図るべきであると考える。
著者
小林 信之
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-12, 1998-06-30 (Released:2017-05-22)

Das Thema "Martin Heideggers Denken und das asthetische Problem des Schonen" weckt vielleicht den Eindruck, als seien hier zwei sich fremden Sachen zwangsweise zusammengefugt worden. Aber die Frage nach dem Wesen des Schonen und der Kunst spielt eine einschneidende Rolle in der denkerischen Wende Heideggers in der Zeit seiner "Nietzsche"-Vorlesungen. In dieser Abhandlung beschaftigte ich mich besonders mit der zum erstenmal von Kant getroffenen Bestimmung des Schonen auf Grund des Wohlgefallens "ohne alles Interesse". In dieser Interesselosigkeit im Schonen, die danach wiederum von Schopenhauer in bestimmter Weise ausgelegt und spater von Nietzsche in Zur Genealogie der Moral scharf kritisiert wurde, sieht Heidegger "die hochste Anstrengung unseres Wesens" und "die Befreiung unserer selbst zur Freigabe dessen, was in sich eine eigene Wurde hat." Zwar gehoren fur Heidegger, sowohl die Kantische Asthetik des Schonen als auch Nietzsches Lehre von "Wille zur Macht" als Kunst zur neuzeitlichen Subjektivitat und damit in die Geschichte der abendlandischen Metaphysik, aber er weist zugleich darauf hin, dass die dort angesprochenen asthetischen Zustande ("Lust der Reflexion" bei Kant und "Rausch" bei Nietzsche) die Moglichkeit eines wesentlichen Bezugs zum Sein eroffnen. In dieser Hinsicht kann man ein ambivalentes Verhalten Heideggers zum abendlandischen Begriff des "Schonen" erkennen.
著者
平嶋 純子 放生 雅章 飯倉 元保 平石 尚久 中道 真二 杉山 温人 小林 信之 工藤 宏一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1683-1687, 2012-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9

症例は38歳女性.20歳時に気管支喘息を発症し,22歳から経口ステロイド依存性となるもコントロール不良であった.妊娠を契機に喘息が増悪し流産するエピソードが複数回あり,これまで出産に至ったのは妊娠7回中1児のみであった.今後妊娠する意向のないことを確認し2009年8月からオマリズマブ投与を開始したがその6週後に妊娠が判明した.PEF・自覚症状ともに改善し経口ステロイドも減量出来ていたためオマリズマブ投与を継続した,その後感冒を契機に喘息コントロールが増悪しオマリズマブ投与は計7回で中止とした.2010年2月に切迫流産となり26週544gの女児を出産した.超低体重出生児でしばらくNICUに入る必要があったが,体重は順調に増加し出産後2年を経過したが現在のところ問題なく生育している.オマリズマブ投与により妊娠早期の喘息増悪を抑制しえたことが出産につながった可能性があると考えた.妊娠中にオマリズマブを使用し出産に至った症例は本邦で1例目であり,貴重な症例と考え報告する.
著者
小林 信之 菅原 佳城 鳥阪 綾子
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,大変形と大回転を伴う極めて非線形性の強い極柔軟体の制御系設計のために,高精度,かつ,低次元のモデル化手法を開発することを目的に,【1】曲げ捩りせん断および軸変形を考慮した非線形梁および非線形板へモード合成法を適用する自由度低減モデルの開発とその検証,【2】開発したモデルを用いた大変形と大回転を伴う極柔軟体の制御系の試設計,を行った.その結果,【3】非線形性の強い極柔軟梁と板に対する低次元モデルが計算精度を保持しながら,システムの自由度を低減できること,【4】提案した自由度低減モデルが床体操のように大回転と大変形を伴いながら移動するロボットの制御に適用可能であることを示した.
著者
杉山 博之 小林 信之
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.66, no.642, pp.398-405, 2000-02-25
被引用文献数
3

This paper establishes a new formulation strategy of the flexible beam with large rotation motion. The finite element based formulation, that is previously presented for the analysis of the 'Spaghetti Problem' by authors, is extended to realize the low order and high accuracy beam model using a kind of Component Mode Synthesis Method. The deformation of the flexible beam is modeled by the combination of static mode represented by the shape function and the analytically evaluated both end clamed dynamic mode with respect to the local coordinate system. Body attached local coordinate system satisfies that x-axis of it connects both-ends of the beam. To demonstrate the efficiency and the validity of the flexible beam model in Multibody Dynamics, a 2-link flexible robot arm is modeled as the flexible multibody system consists of some rigid bodies and two flexible beams. The validity can be indicated by good agreements between the numerical simulation and the experimental results.
著者
石田 和雄 小林 信之
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.50, no.453, pp.1042-1048, 1984-05-25
被引用文献数
2 1

An effective method for calculating the nonlinear-rocking response of ground-supported unanchored cylindrical tanks to earthquakes was developed. In this method, tank wall and liquid content are replaced with a mass-spring system, and the nonlinearity associated with the partial uplift of bottom plates due to overturning moments is considered as the rotational spring of bi-linear type which is determined by a static uplift analysis of tank bottom. The reliability of the dynamic analysis was illustrated by computing resonance frequencies, response accelerations and rotation angles of tank models and by comparing them with the results of vibration tests. A seismic deign procedure for nonlinear rocking of tanks is proposed, in which the uplift height of bottom plates is calculated by dynamic rocking analysis and the corresponding radial stress of them is obtained by static analysis. And a rocking analysis of a full-sized tank was tried, too.
著者
小林 信之 石田 和雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.50, no.451, pp.514-519, 1984-03-25
被引用文献数
1

When an earthquake hitting, the part of the bottom plate of the unanchored cylindrical tank will be lifted up from the foundation so that no resistance mechanism is existed against the uplift force caused by the overturning moment. The high stresses will be yielded in the bottom plate and the shell plate. This report concerns those problems. The calculation model was made in order to obtain the uplift resistance force, the uplift height, the reaction force from the foundation and the uplift region. In this model, the uplift region was considered as crescent shape, and the elasto-plastic, large deformation effect and the contact problem of the bottom plate was considered. From the comparison between this calculation model and the static tilt test of a thin bottom plate model tank, the calculation result was good agreement with the test.
著者
神宮 浩之 豊田 恵美子 小林 信之 工藤 宏一郎
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.397-400, 2004-06-15
被引用文献数
6

膜炎を合併した非結核性抗酸菌症の報告は稀であり, 今回私たちは胸水貯留を認めた肺M.kansasii症の1例を経験したので報告する。症例は60歳男性。数ヵ月前より続く全身倦怠感, 右肩凝り, 発熱を主訴に近医受診。胸部X線上, 右上葉の浸潤影を指摘され, 肺炎の診断で一般抗生剤の投与を受けるも改善せず, 肺結核疑いで平成15年5月7日当科入院となった。入院時, 右胸水を認め, 胸腔穿刺を行ったところ滲出性胸水でAdenosinedeaminase(IADA) は66.1U/lと高値を示した。また, ツベルクリン反応が強陽性であったことより肺結核を疑い, 気管支鏡検査を施行した。右B1aおよびB2aより行った経気管支肺生検では, 類上皮細胞肉芽腫病変を認め, 気管内吸引痰, 気管支擦過浮遊液, 気管支洗浄液のいずれの検体からも培養検査で <I>M.kansasii</I> が検出された。国立療養所非定型抗酸菌症共同研究班の診断基準より肺 <I>M.kansasii</I> 症と診断し, RFPを含む3剤の治療を行った。以後, 胸水再貯留は認めず, 全身状態良好で6月6日退院となった。
著者
小林 信之
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高速搬送される柔軟体の挙動解明のために,Absolute nodal coordinate formulationを用いてモデル化し,ローラと柔軟体の接触を拘束方程式で記述した運動方程式の構築を行った.MATLAB上でプログラム化して,一定速度で搬送される場合と周期的に往復動する場合について数値シミュレーションを行った.その結果,一定速度で搬送される場合には,搬送速度が速くなるとダイバージェンス型の不安定が生じ,周期的に往復動する場合には,柔軟体の曲げ1次固有振動数の2倍の振動数で駆動することによりパラメトリック共振が生じることが明らかになった.Finite segment methodを用いたモデル化も行い,さらに既存の実験装置の改造と実験を行い,数値シミュレーション結果と比較した.その結果,一定速度で搬送される場合には低い速度領域でフラター型の不安定が,また,早い速度領域で搬送される場合にはダイバージェンス型の不安定が生じることが分かった.実験と解析に若干の差異があったことから,実験装置の改良およびモデル化に関する更なる検討を行う必要がある.また,柔軟体が周期的に往復動する場合には,柔軟体の曲げ1次固有振動数の2倍の振動数で駆動することによりパラメトリック共振が実験によっても計測されて,数値シミュレーションと実験が比較的良く一致することが分かった.接触問題をユニラテラルコンタクト問題と考えたモデル化手法について検討を行い,多点接触問題を伴う柔軟構造物の地震時の挙動解析に適用した.MATLAB上でプログラム化して,重心位置の高い大型構造物を対象に地震応答シミュレーションを行った.その結果,構造物のロッキング振動と下端部のすべりが連成した地震応答特性が明らかになり,本研究で展開した解析方法の有用性を示すことができたとともに柔軟体の不安定挙動についての知見を得た.
著者
小林 信之 渡辺 昌宏 張 亜軍
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

船舶などで推進器として使用されているスクリューは,推進効率と運動性能の向上に限界がある.一方,進化の過程で最適化された水棲生物の泳動方法を見てみると,高い運動性能と高推進効率を有する泳動を行っていることが分かる.このことから,高効率で運動性能の高い船舶を開発する上で,水棲生物の泳動を模倣した研究は有益な知見をもたらすと考えられる.このため,本研究は柔軟なヒレの波動運動における波の数と振動数を変えられる水中推進機構の開発とその波動運動を滑らかに制御するための制御手法を構築した。水中推進機構の開発では、カムとフォロワーから構成されるスコッチヨーク機構を用いて柔軟なヒレに波動運動を発生させる水中推進機構を開発し,その機構を水槽内で泳動させることにより,柔らかいヒレの波の数と振動数の推進力と泳動速度への影響を調べた.また、波動運動を滑らかに制御する目的のために、水中推進機構の運動をマルチボディ・ダイナミクスの手法を用いて定式化した。運動方程式は幾何学的な拘束により非線形な微分代数方程式により表される。そして、運動制御のための制御系設計するための効率的な線形化手法を開発した。また、出力を用いたスライディングモード制御系の設計において、PD制御を併用する方法を提案し、より高い制御性能を得られる超平面設計を可能にした。実験から得られた以下の結果をいかに示す.(1)製作した水中推進機構は波の移動方向を変えることで前進と後進が可能である.(2)波の数が多くなると推力と泳動速度の変動が小さくなりスムーズな泳動が可能である.しかしながら,平均推力は小さい.(3)振動数が大きくなると平均推力と推力の変動は増大する.また,泳動速度は増大する.(4)波の数n=1程度の時,大きな平均泳動速度を得られる.(5)無次元振動数が大きくなると推進力と平均泳動速度は減少し,無次元振動数の値にかかわらず泳動速度の変動はほぼ一定である.
著者
小林 信之
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.13-24, 1988-03-31

Auf seinem ganzen Denkweg, der entscheidend durch die Seinsfrage bestimmt wurde, stellt sich Heidegger auch die Frage nach dem Raum. In Sein und Zeit wird die Raumlichkeit des Daseins thematisiert, d.h. der von der "ausrichtenden Entfernung" geoffnete Spielraum des Daseins selbst im Umkreis des "nachstbesorgten Zeugganzen". Aber diese Analyse soll die Frage nach der "Verkoppelung" von Raum und Zeit erst vorbereiten. Das Eigentumliche des Raumes muss verhullt bleiben, solange die Interpretation des ontologischen Sinnes von Sein uberhaupt als Zeit nicht durchgefuhrt wird. Dagegen wird in Heideggers spaten Denken das Sein des Dinges schlechthin als der Ort aufgefasst, der die eigentliche und ursprungliche Welt (das Geviert) "versammelt". Und Dinge, die in diesem Sinne "Orte" sind, geben jeweils erst Raume frei. Das Hervorbringen solcher Dinge ist Bauen im Sinne der ursprunglichen Kunst (griechisch techne). In Die Kunst und der Raum ist die Rede vom "Zueinanderspiel" von Kunst und Raum als einem aus physis zu denkenden Urphanomen. Am Beispiel des plastischen Gebildes sieht Heidegger den kunstlerischen Raum unter drei Aspekten (dem vom Werk "freigegebenen" Raum uberhaupt, dem Volumen, der Leere). Wenn die Kunst das Ins-Werk-Bringen der Wahrheit ist, wird dann nicht das Eigentumliche des "wahren" Raumes erst durch das Kunstwerk "entborgen"?