著者
河相 安彦 矢崎 貴啓 松丸 悠一 先崎 孝三郎 浅井 秀明 今道 康夫 伊藤 允人 杉村 華織 竹尾 藍 朱 一慶 伊澤 武志 大野 洋介 山本 史朗 小平 真倫亜 宗 邦雄 島 由樹 林 幸男 桑原 克久 小林 喜平
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.572-581, 2007-07-10
被引用文献数
3 7

目的: 本研究の目的は総義歯学の授業で講義型学習 (以下LBL) と問題解決型学習 (以下PBL) 双方を経験した学生の自己学習および臨床推理能力に関する教育効果と授業・教員に対する評価の両教育形式間での比較検討である.<BR>方法: 総義歯学の授業を平成15年度入学の学生に, 平成17年度3年次前期にLBL, 平成18年度4年次前期にPBLにて行った. PBLは5回にわたり, 毎回1症例についてグループディスカッションを行い, グループによるまとめを2回, 個人レポートを2回および全体発表を1回という予定で進行した. 全体発表終了後, 教育効果および授業・教員に関する27項目のアンケートを行った.因子分析により質問項目の類型を行い, 各質問項目についてLBLおよびPBLの比較を行った (Paired-t).<BR>結果: 因子分析より質問項目は4因子に類型された. LBLとPBLとの間で「学習態度」について7項目中4項目, 「臨床推理能力」について全項目, 「授業内容」について7項目中5項目, 「教員評価・そのほか」について6項目中2項目, 合計27項目中18項目 (66.6%) でPBLが有意に高い値を示した.<BR>結論: PBLはLBLに比べ自己学習および臨床推理能力の教育効果の向上に極めて有効で, 授業に関する評価も有意に高かった. 一方, 同様の授業を受けることに学生は後向きで, 消極性解消法の検討が必要であると示唆された.
著者
小林 喜平 郡司 敦子 村上 洋 矢ざき 貴啓 佐藤 正喜 桑原 克久
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

高齢者の咀嚼機能は一般的に歯の喪失に伴い低下する。ことに無歯顎者で著しく,総義歯の状況により十分な回復ができず,結果的に食物摂取,栄養確保が困難になる。咀嚼機能レベルに応じて適切な食物摂取が容易かつ確実に行なえるよう噛み易さを考慮し,食物の硬さを調整して栄養バランスの採れた一連の献立を提供し,それを利用しながら個人へ行なう食事指導は健康管理面からも効果的である。そこで可及的に同一食品を用いて普通食,刻み食,五分粥食,三分粥食,ミキサ-食へと展開させた一連の献立群に栄養学的検討を加え,総義歯患者の食事指導に役立つ展開食の開発を試みたところ以下のような結果を得た。1.60歳代前半の高齢者を対象とした展開食に超軟性食の三部粥食を追加検討したところ,(1)各献立とも各栄養素充足率は満たされ.(2)ビタミン類は調理損失をみこしており過剰傾向であり.(3)蛋白質の確保に1700kcal,70gを設定したので一般成人の理想値より多く.また豆・豆製品は各展開食に多く,三部粥食では芋類と砂糖が多い傾向であった。2.高齢者の嗜好の多い和食タイプに,食事選択範囲を広げる目的で洋食タイプを加えて比較検討したところ,(1)各栄養素充足率では,和食タイプ,洋食タイプとも同様の傾向であり,(2)食品群別充足率では,それぞれ異なる傾向がみられ,食品の選択に工夫を要すること,ならびに類似タイプの献立を連続摂取を避けることが示唆された。3.展開食の臨床応用の前準備として,65歳代,70歳代,80歳代を考慮し栄養摂取の観点から展開食構成を調整する際の問題点を検討するため,特別栄養護施設入所者を対象に5日間の昼食の喫食率としてグループ別残菜調査を検討したところ,(1)残菜率は15%から20%の範囲にあり,(2)献立により傾向は異なり,嗜好,盛りや味付け,固さや量,個人の全身状況,咀喝状況などの影響が示唆された。
著者
郡司 敦子 木本 統 小出 ひとみ 村上 洋 朱 一慶 多々 納賞子 島 由樹 河相 安彦 小林 喜平
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.45-51, 2007-05-31 (Released:2010-07-21)
参考文献数
23

目的: 総義歯患者において, 旧義歯から新義歯へ移行することにより生じる, 食生活および栄養状況の変化を検討すること.方法: 被験者は, 2004年3月から2005年11月までに日本大学松戸歯学部付属病院を受診した新義歯作製希望の無歯顎患者のうち, 本研究の内容と目的を説明し, 書面による同意の得られた30名とした.間食を含む3日間の食事記録とデジタルカメラにて撮影された食事写真をもとに, 管理栄養士が被験者からの聞き取り調査を行い, 栄養充足率の算出を行った.さらに平井の方法に準じ摂取可能食品質問表から咀嚼スコアーを算出した.統計分析は旧義歯と新義歯間の平均値の差をRepeated measureANOVAにて行った.有意水準は0.05とした.結果: 旧義歯, 新義歯における, エネルギーおよび栄養充足率は, 大部分が100%を超えていた.しかしながら, 旧義歯群と新義歯群の間に統計的有意差は認められなかった.旧義歯における咀嚼スコアーは58.3±19.9を示し, 新義歯では66.1±18.5を示した.新義歯の咀嚼スコアーは旧義歯の咀嚼スコアーに比べ有意に増加した.結論: 新義歯を装着することにより, 被験者自身の咀嚼に関する評価は向上するものの, 旧義歯および新義歯使用時における被験者の栄養充足率は正常範囲であり, 両者間に差は認められなかった.