著者
須田 順子 セルビト ウイルソンA. 小栗 紀彦 松沢 時弘 岡 明男 佐藤 邦忠
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.29, pp.26-31, 1992-12-20 (Released:2010-08-10)
参考文献数
18

若齢雄馬の精巣の組織所見解析に, 多変量解析法の一つである主成分分析の応用を試みた.材料と方法: 臨床所見から, 異常の認められない雄馬5頭の精巣を採取し, 精巣の大きさ (長径×短径×幅cm) と重さ (g), ならびに左右各7ヵ所の組織標本を作成し, Sertoli細胞数, Leydig細胞数および精細管の大きさ (断面の最長径と最短径の積: μm2) を求め, 多変量解析を行った結果:(1) 精巣の大きさと重さ, Johnsenスコア, Sertoli細胞数およびLeydig細胞数, 精細管の大きさ等の要因には, 個体間と精巣の左右間に有意差が認められなかった (P<0.05).(2) Johnsenスコア; Sertoli細胞数と精細管の大きさ. Sertoli細胞数; 精細管の大きさの相関係数には有意性が認められた (P<0.05).(3) 主成分分析で, 精巣からの組織採取部位による所見に差異があることが明らかになった.以上の結果から, 精巣組織所見の分析に主成分分析の応用が可能であることが明らかになった.
著者
倉本 賢一 白石 章 中西 有 甲斐 真 上野 儀治 上田 八尋
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.26, pp.23-30, 1989-12-26 (Released:2010-08-10)
参考文献数
29

競走馬のトレーニング効果あるいは競走能力を評価する一指標として心エコー撮影による左室機能検査をトレーニングセンター在厩のサラブレッド45頭 (2歳-7歳) について試みたところ以下の成績が得られた。1) 心エコー図の撮影は左側第3・4肋間 (心切痕部) に限定されたプローブ位置からのアプローチによって, 左室の最長軸断層像を正確にとらえることでがき, 簡便で汎用性の高い撮影方法と考えられた。2) 心エコー法と色素希釈法による1回拍出量をサラブレッド15頭 (3-5歳) について比較検討したところ, 両者は相関係数, r=+0.956を有する回帰直線y=0.782x-0.147で示され, 心エコー法による1回拍出量の測定の信頼性が高いことが確認された。3) kg当たりの1回拍出量は加齢と調教の進行に伴ない増加するが, 3歳以降ではほぼ安定した数値 (2.42-3.37ml/kg) を示すことが分った。一方, 比較的優れた競走成績をもつ馬群 (4歳馬5頭) と平均的競走成績をもつ馬群 (4-6歳馬10頭) の1回拍出量を比較したところ, 前者は平均3.55ml/kgで後者 (平均2.85ml/kg) に比べ有意な高値を示した。4) 収縮末期径には被検馬群間で差は認められないものの, 拡張末期径では平均的競走成績をもつ馬群と優れた競走成績をもつ馬群間で明瞭な差が認められた。これらのことから, 本法が競走馬の左室機能の評価に有用であることが示唆された。
著者
富岡 義雄 兼子 樹広 及川 正明 兼丸 卓美 吉原 豊彦 和田 隆一
出版者
日本ウマ科学会
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.22, pp.22-29, 1985

競走馬の中手骨 (Mc) における骨塩含量 (BMC/BW; g/cm<sup>2</sup>) の部位および左右肢間の差を明らかにするとともに, BMC/BWに影響を与える因子を検討するため, ボーンミネラルアナライザー (BMA) を用いて競走馬15頭28肢のMcを測定した. 放射性アメリシウム (<sup>241</sup>Am) を線源としたBMAの測定値は精度ならびに再現性に優れていた. このBMAを用いて水槽内に保定したMcを内外側方向で, 遠位関節面から1cmごとに20cm近位まで20個所のBMC/BWを測定したところ, その測定値を図示すると一定のパターンを示した. それは遠位関節面より1cmならびに17cm近位部にピークをもち, 遠位関節面より近位5cm部を最低値とするものであった. また左右Mc間に差はみられなかった. 緻密骨からなる骨幹中央部のBMC/BWは出走回数, 出走期間ならびに馬体重と有意の正の相関を示し, またこの値は59か月齢まで加齢にともない上昇した. 一方, 海綿骨のBMC/BWは遠位関節面から1cm近位部で極めて高値を示した. またこの値は出走回数出走期間ならびに加齢と有意の正の相関を示した.
著者
沖 博憲 深谷 徳善
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.20, pp.11-15, 1983-12-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
3

It is an important problem to study diurnal changes in measurements of body parts in the Thoroughbred when a large number of horses are measured in the course of a day. In this study, 24 body parts were measured in 43 Thoroughbreds at three different times, the day before training, immediately after training, and after grazing. As a result, there were significant chronological differences in the measurements of few parts by the analysis of variance, but such difference was significant at 5% levels in thickness of the breast. The difference in thickness of the breast, however, was considered to be within the range of measuring error. It seems to be the best way to measure Thoroughbreds at the same time on the same day, but no statistical errors will be produced, if all horses are measured on the same day.
著者
上田 八尋 仁木 陽子 吉田 光平 益満 宏行
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.18, pp.28-41, 1981-12-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
10

馬の跛行診断を客観的に行うために, あるいは運動器疾患の原因を解明するためにフォースプレートを用い, 常歩あるいは速歩時に着地した肢に働く床反力を測定し検討した.フォースプレートはキスラー社製Z4852/C (60×90cm) を用いた. 測定項目は垂直分力 (Fz), 前後分力 (Fy), 左右分力 (Fx) と, さらに演算によって合力 (F), 力の作用点の軌跡 (ax, ay), 力の作用点における垂直軸周りのトルク (M'z) (ねじりの力), それに力線図 (リサージュ波形) が得られ波形として描かれる.常歩において, 垂直分力は前後肢ともに2峰性のパターンが得られた. そのピーク値は前肢において体重比56.2%と68.0%であり, 後肢においては48.6%と42.9%であった. さらに垂直分力波形には2つの小峰が認められた. 1つは最初のピークの前であり, 他の1つは第2のピークの後であった.前後分力は着地後, 前方分力としてピークを形成したあと0にもどり, 次いで後方分力としてのピークを形成した. そして, 前方分力と後方分力はほぼ等しい値であった. また, 前後分力の波形の中にも垂直分力の小峰に対応した小峰が認められた.左右分力は個体によって異ったパターンが見られ, 着地から離地までにいくつかの内外側へのピークを形成していた.速歩になると, 垂直分力は前後肢とも単峰性のパターンに変化し, そのピーク値は前肢において体重比105%, 後肢において92.8%となった. 前後分力は常歩時とほぼ同様のパターンを示したが, 前肢の前方分力と後肢の後方分力が常歩時より増加した. 左右分力は個体間の変動が大きく, 常歩と速歩による変化は見られなかった.力の作用点の軌跡 (ax, ay) は, 前後肢によってそれぞれほぼ一定したパターンを示し, そのパターンは関節の作用, 体重心の位置と関連があるように見られた. また, ねじりの力は個体差及び各個体の各肢ごとに相違があり, 肢勢, 歩様と関連性が強いと推察された. 力線図については, 着地時の衝撃波の影響が強く現われたが, 個々の馬の歩様を反映しているように思われた.測定結果から前肢は支持的な機能を, 後肢は推進力としての機能を持っていることが表わされている. また, 各波形は馬の歩様を忠実に示しており, 跛行診断などへの有用性が示唆された.
著者
今川 浩 安藤 泰正 秋山 綽
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.16, pp.23-29, 1979

1976年から1978年にかけて採集された北海道の生産地, 東京, 中山両競馬場ならびに栗東トレーニングセンター所属の軽種馬の血清計1873例について, ウシロタウイルスのCF抗体保有状況を調べた. その結果, 以下の成績を得た.<br>1. 全検査例 (1873例) の60.9%にウシロタウイルスに対するCF抗体が検出された.<br>2. 北海道の生産地において, 当歳馬の15.1% (8/53), 2歳馬の56.3% (99/176) ならびに4歳以上の馬の43.3% (91/210) がそれぞれウシロタウイルスに対するCF抗体を保持していた.<br>3. 東京, 中山両競馬場および栗東トレーニングセンターの3歳馬から採集されたそれぞれの200例についてのウシロタウイルスに対するCF抗体の保有率は, 東京競馬場では43.0%, 中山競馬場では57.0%および栗東トレーニングセンターでは36.5%であった.<br>4. 中山競馬場の2歳馬の46.3% (31/67), 3歳馬の75.2% (324/431), 4歳馬の84.6% (176/208) ならびに5歳馬から7歳馬の92.2% (118/128) にウシロタウイルスに対するCF抗体が検出された.<br>以上の結果, ロタウイルスは日本の軽種馬において, 広範囲にわたって高率に感染していることが明らかになった.
著者
朝井 洋 畠山 弘 永田 雄三
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.24, pp.6-13, 1987-12-18 (Released:2010-08-10)
参考文献数
19

わが国の主要な軽種馬生産地である日高地方の採草地土壌および1番刈牧草 (チモシー) の成分について調査した. 調査牧場数は, 日高地方の9地区から抽出した151牧場である.土壌pHは, 土質による違いは認められなかったが, 土壌中のカルシウム, カリウム, マグネシウムの各含量は土質の違いによって差が認められた. また, 牧草成分についても, 粗蛋白質, カルシウム, リン, カリウム, 銅の各含量は土質によって差が認められた. 土壌成分と牧草成分間の関係は, 土質によって異なり一定の傾向が認められなかった. 草地管理方法と牧草成分の関係については, 更新後経過年数, 客土の有無, 化学肥料の施用量, 堆肥の投入量, 刈り取り時期の違いによって牧草成分に差が認められた.今後, 栄養価の高い牧草を生産するために, 各土質に適した草地管理方法の確立が必要と考えられた.
著者
藤本 胖 門田 耕一 森口 良三 桐生 啓治 松川 清 千早 豊
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.19, pp.69-88, 1982-12-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
39

過去30年間 (1949-1979) に集められた馬白血病群 (EL) 14頭が病理形態学的に観察され, 腫瘍細胞の特徴により次の型に分類された。A. リンパ肉腫12例: リンパ球性リンパ肉腫 (2例), リンパ球性及び前リンパ球性リンパ肉腫 (3例), リンパ芽球性リンパ肉腫 (1例), 未分化組織球性リンパ肉腫 (1例), 組織球性リンパ肉腫 (2例) 及び組織芽球性リンパ肉腫 (1例)。B. 幹細胞性白血病1例。C. 骨髄性白血病1例。14例は2乃至3歳馬5例, 8乃至17歳馬6例, 年齢不詳馬3例よりなっていた。リンパ肉腫罹患馬12例は多中心型9例, 消化器型1例, 孤立リンパ腫2例よりなっていた。2例が皮下組織腫瘍を伴っていた。ELに最も頻繁に冒される臓器はリンパ節で, 次で脾臓, 腎臓, 腸及び肝臓であった。心臓, 肺, 胸腺, 躯幹筋及び皮膚はより低い頻度で冒されていた。組織球性リンパ肉腫の超微形態において, 特に粗面小胞体の分布及び構造に幅広い変化が見られた。腫瘍細胞の細胞質において, 大型空胞が屡々見られた。高度な多形性の核と著しく大きい核小体, 拡大したゴルジー野, 豊富なブリーリボゾームは高度な代謝活性を示すものである。電顕的検索では何処にもウイルス粒子を見ることは出来なかった。