著者
小池 卓二
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.122-125, 2007 (Released:2007-12-10)
参考文献数
16

空気の疎密波である音は,鼓膜で機械的振動に変換され,耳小骨を経て,蝸牛内リンパ液へと伝達される。蝸牛内ではリンパ液を介して感覚細胞が刺激され,そこで機械振動は電気信号へと変換され,聴神経を介して脳に伝達される。この様な振動の伝達・変換プロセスを経てヒトは音を認識している。これまで,聴覚機能の解明のために,鼓膜や耳小骨,蝸牛内基底板等の振動挙動の直接観察が試みられてきた。しかし,聴覚器は側頭骨と呼ばれる硬い骨に覆われた観測し難い位置に存在し,振幅も微細であるため,その振動挙動を生理的状態で計測することが極めて困難であり,測定可能部位も限定されるため,未だに不明な点が多い。そこで本稿では,中耳および蝸牛の三次元有限要素モデルを作成し,空気中を伝播してきた音波が体内の振動に変換される過程を解析した。その結果,中耳は振動モード変化を伴いながら1kHzを中心とした穏やかなバンドパスフィルタ特性を示し,蝸牛はその内部構造により,周波数解析を行っている事が確認された。
著者
和田 仁 湯浅 有 小池 卓二 川瀬 哲明 高坂 知節
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.237-242, 1999-08-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

これまで, 耳小骨筋反射がCMや中耳インピーダンスに及ぼす影響は報告されているが, 耳小骨振動に及ぼす影響については明らかにされていない。 そこで, 我々は, 耳小骨各部位の振動速度を直接計測することが可能なレーザドップラ振動計を用いて, モルモットおよびウサギの対側刺激による耳小骨筋収縮前後での, 耳小骨の振動挙動変化を計測した。 そして, 刺激音圧の増大に伴い, 耳小骨振動振幅が減少し, また, 耳小骨振動の周波数が低いほど, 振幅の減少量が大きいことを明らかにした。 さらに, 反射前後で, 耳小骨の振動様式に生じる変化を推察した。
著者
小池 卓二
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.122-125, 2007-08-20
参考文献数
16

空気の疎密波である音は,鼓膜で機械的振動に変換され,耳小骨を経て,蝸牛内リンパ液へと伝達される。蝸牛内ではリンパ液を介して感覚細胞が刺激され,そこで機械振動は電気信号へと変換され,聴神経を介して脳に伝達される。この様な振動の伝達・変換プロセスを経てヒトは音を認識している。これまで,聴覚機能の解明のために,鼓膜や耳小骨,蝸牛内基底板等の振動挙動の直接観察が試みられてきた。しかし,聴覚器は側頭骨と呼ばれる硬い骨に覆われた観測し難い位置に存在し,振幅も微細であるため,その振動挙動を生理的状態で計測することが極めて困難であり,測定可能部位も限定されるため,未だに不明な点が多い。そこで本稿では,中耳および蝸牛の三次元有限要素モデルを作成し,空気中を伝播してきた音波が体内の振動に変換される過程を解析した。その結果,中耳は振動モード変化を伴いながら1kHzを中心とした穏やかなバンドパスフィルタ特性を示し,蝸牛はその内部構造により,周波数解析を行っている事が確認された。
著者
小池 卓二 李 信英
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.525-530, 2018-12-28 (Released:2019-01-17)
参考文献数
8

要旨: 蝸牛機能の解明には基底板振動と有毛細胞の働きを十分理解することが重要であるが, 生理的環境下における蝸牛振動の直接計測は簡単ではなく, 特にヒトを対象とした計測は困難である。そこで我々は, 蝸牛の数値解析モデルを構築し, 基底板の振動様式の可視化や蝸牛疾患による基底板振動変化について解析を行っている。本稿では, 基底板上で外有毛細胞 (OHC) の能動性を部分的に欠如させたモデルを用いて, 基底板上の各部およびアブミ骨に誘発される歪成分を計算し, 歪成分耳音響放射 (DPOAE) と OHC の能動性との関係を検討した。その結果, 刺激音周波数 f2 を特徴周波数に持つ基底板の位置よりも基部側に存在する OHC の能動性が, DPOAE 生成に重要な役割を果たしていることが示唆された。